The Boring Companyの掘削機
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起業家のイーロン・マスク氏は7月20日(現地時間)、同氏が立ち上げた最新のベンチャー企業The Boring Company(以下、TBC)が、ニューヨークとワシントンDCを結ぶ高速次世代輸送システム「ハイパーループ(Hyperloop)」の建設について、「口頭による政府承認」を得たと述べた。
マスク氏は、具体的に誰から口頭による承認を得たのか、また承認はそれぞれの州関係者から得たのかどうかは明らかにしなかったが、2つの主要都市を結ぶ地下トンネルを建設する予定だと述べた。
ハイパーループはニューヨークとワシントンDCを29分で結び、フィラデルフィアとメリーランド州ボルチモアに、途中停車するとマスク氏は言う。
たった今、TBCはニューヨークーフィラデルフィアーボルチモアーワシントンDCを地下でつなぐハイパーループの建設について、口頭による政府承認を得た。ニューヨークとワシントンDCは29分で結ばれる。
各都市の中心部をつなぎ、それぞれの都市には12基以上の出入り口用エレベーターを設置する。
ところが、ニューヨークとフィラデルフィアの市関係者によると、「マスク氏はハイパーループ・プロジェクトについて、市職員といかなるやり取りもしていない」と言う。
アメリカ運輸省から紹介されたホワイトハウスの広報担当は、「我々はこれまでも発展的な議論を行い、変革的なインフラ計画に尽力している。最良の解決策は多くの場合、民間企業の創意工夫と挑戦によってもたらされると信じている」との声明を、Business Insiderに出した。
トランプ大統領の経済諮問委員会と製造業雇用イニシアチブに参加していたマスク氏は今年、3度にわたってホワイトハウスを訪れた。同氏は6月、アメリカが地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱した後、いずれの委員会からも去った。
ハイパーループ構想について、マスク氏がさまざまな都市の関係者と協議していることは周知の事実だが、東海岸のプロジェクトについて言及したのは初めてのことだ。
マスク氏は6月下旬、ロサンゼルス国際空港と、ロサンゼルスの市街地と郊外をつなぐ重要拠点、ユニオン・ステーションを結ぶトンネル建設について、同市長のエリック・ガルセッティ(Eric Garcetti)氏と「建設的な議論」を交わしたと語り、ガルセッティ氏も、高速鉄道網の接続を支援するため、マスク氏のトンネルの活用を検討していると述べていた。
マスク氏は7月20日、TBCはロサンゼルスと東海岸のトンネル建設事業を並行して進めていくだろうと述べた。
(ツイートに応えて)もちろんだ。トンネルの最初の目的は、ロサンゼルスの都市混雑の緩和だ。ニューヨークーワシントンDC間も並行して進めるだろう。その後は恐らく、ロサンゼルスーサンフランシスコ間と、テキサス・ループ(環状線)だ。
CNBCの報道によると、同氏はさらに、シカゴのダウンタウンとオヘア国際空港を結ぶトンネル掘削について、シカゴ市長のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)氏と「予備」協議に入っている。
TBCとは
2016年12月、ロサンゼルスの渋滞で「頭がおかしくなりそう」なため、トンネル堀削会社を設立したいとツイートしたマスク氏。
その数カ月後、テスラとSpaceXのCEOを務める同氏は、TBCを立ち上げた。このベンチャー企業は、SpaceXのエンジニア、スティーブ・デービス(Steve Davis)氏が率いている。
マスク氏は以前から、トンネル内での人や車の輸送は電動式の「ソリ」を使って行われるだろうと語ってきた。ロサンゼルスのトンネルが高速鉄道を支援する一方で、マスク氏の7月20日の発表は、TBC初となるハイパーループを支えるトンネルの掘削に言及したものだ。
マスク氏が初めてハイパーループ構想の概要を「白書」に記したのは2013年だが、これまで高速輸送システムに本腰を入れてはいなかった。
トンネル掘削は、費用のかかるプロセスとして悪名高い。しかし、マスク氏は今年4月に登壇したTED Talkで、掘削と壁の補強を同時にできる機械を開発することで、コスト削減を目指すと語った。従来のトンネル掘削機は掘り進んだ後、来た道を戻って、同じ時間をかけて補強するため、より長い時間と高い費用がかかっていた。
TBCはすでに、ロサンゼルスのSpaceXの所有地で、最初の区画の掘削を完了した。マスク氏の計画の全てを実現するには、市や州の許可を得る必要がある。
(翻訳:本田直子)