空母ニミッツの甲板上で写真を取る見学者
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
アメリカ、インド、そして日本は2017年7月10日〜17日、インド洋ベンガル湾で共同演習「マラバール2017」を実施した。
マラバール2017は、インド洋およびアジア太平洋における脅威に対する認識を共有し、参加国間の相互運用性を構築することを目的に継続的に行われてる共同演習だ。
過去最大規模ではないものの、インド海軍の空母「ヴィクラマーディティヤ(Vikramaditya)」、アメリカ海軍の空母「ニミッツ(Nimitz)」、そして海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」が参加する初めての演習となった。
マラバール2017では、陸・海の両方で演習が展開された。陸ではインドのチェンナイを拠点として情報交換に焦点が置かれた。一方、海では14日〜17日にかけて、主に対潜水艦作戦が繰り広げられた。
中国は参加していないが、演習に大きな影響を与えている。ここ数年、中国とインドは、インド洋で睨み合いを続けている。さらに、両国の国境事情はここ数十年で最も緊迫している。
インド洋の「新たな冷戦」を巻き起こしているとも言えるマラバール2017を見てみよう。
マラバールは、長年、アメリカとインドの2カ国で行われてきた。2015年に日本が加わってからは、インドにとっては初となる3カ国での継続的な演習となった。過去にも他の国が参加したことがあるが、その際は中国から強い抗議があった。今年初めにはインドとオーストラリアが共同演習を実施。オーストラリアとアメリカの演習はすでに行われている。
2017年7月17日、ベンガル湾を航海するインド海軍、アメリカ海軍、そして海上自衛隊。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
マラバール2017では様々な訓練が行われたが、これまで同様、特に対潜水艦作戦に力が注がれている。中国がパキスタンの協力体制を強め、当海域での潜水艦の活動を活発化していることに、インドは警戒心を強めている。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
インド海軍は中国海軍よりも規模が小さいが、マラッカ海峡よりも、アンダマン・ニコバル諸島を勢力下に置いていることは、インドにとって有利だ。2017年6月、マラッカ海峡の西側海域での動きを24時間体制で監視するために、インドは軍艦を配備した。
Christopher Woody/Google Maps
インドの空軍と海軍はすでにアンダマン・ニコバル諸島に配備され、インドは当地の強化を進める構えだ。アメリカもインドに監視用無人機を売却することに同意しており、同海域に配備される模様。
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ハワード(Howard)」に乗艦したインド海軍士官を案内するクリストファー・グラウンド(Christopher Ground)大尉。
(US Navy Photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Tyler Preston/Released)
アメリカが売却に合意した22機の無人機に加えて、インドはさらにアフリカ最東北端からマラッカ海峡までをカバーできるP8哨戒機を購入する計画だ。また、インドと日本は南インドと北インドネシアの海中にセンサーを配置する「海中の城壁(undersea wall)」や、インド洋の島々でのレーダー基地の計画に取り組んでいる。
アメリカ海軍第11空母打撃群を指揮するビル・バーン(Bill Byrne)少将。空母ニミッツからインド海軍、海上自衛隊、そしてアメリカ海軍の艦船を見つめる。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Holly L. Herline)
出典: Lowy Institute、Quartz
マラッカ海峡が貿易や石油輸入の大動脈となっている中国は動揺を隠し切れなかった。国営の英字新聞チャイナデイリー(China Daily)は、政府はこれを「安全保障上の問題」として受け止めるべきだと伝えた。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Holly L. Herline)
その意味で中国は、パキスタンのグワーダル港を含め、すでにこの地域全体に進出している。また東アフリカのジブチ共和国にある中国初の海外基地では、中国の兵士が活発に活動している。
空母ニミッツの上空を飛ぶ、第8ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-8)、通称「エイト・ボーラーズ(Eightballers)」のMH-60S シーホーク。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
中国は、この海域での活動の活発化は、海賊対策と緊急時や人道上の対応と同じく、安全保障上の問題としている。インド洋における独自の計画を有するインドは、懐疑的な見方を強めている。
空母ニミッツから第147戦闘攻撃飛行隊、「アルゴノーツ」のF/A-18E スーパーホーネットが発艦。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr/Released)
インドは、インド洋に進出する中国の潜水艦を2013年から監視している。2015年のアメリカ国防総省の報告書でも、インド洋における中国の攻撃型ミサイル潜水艦の活動が報告されている。
空母ニミッツで艦載機を誘導。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Ian Kinkead/Released)
出典: Business Insider
「アデン湾での海賊対策は、ただの口実だ」と2017年5月、インドの国防関係者は語った。「海賊や彼らの帆船に対して、潜水艦で何をしようというのだ」
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Ian Kinkead/Released)
インドの安全保障は、長らく北部国境に焦点が置かれていた。過去には国境をめぐる紛争が起こり、時には本格的な戦争に発展した。近年、インド洋の状況の活発化に伴い、同国の指導者層の関心は急激に南部の海岸線に移ってきている。同地域には安全保障やエネルギー関連の重要な施設が置かれている。
空母ニミッツの甲板上で、演習の様子を撮影する見学者。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
インドと中国は現在、国境を巡って対立している。中国は、インド軍がブータンから中国に侵入したと主張、一方、インドは、軍はまだブータンに留まっていると主張している。
「これは、インドの安全保障における構造上の変革だ。我々は南部を防衛しなければならない」と、インド政策研究センターのブラーマ・チェラニー(Brahma Chellaney)教授はニューヨーク・タイムズに語った。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Leon Wong)
2007年のマラバールは、過去最大規模で、アメリカ、インド、日本、さらにオーストラリアとシンガポールも参加した。5カ国による演習は、これを封じ込め政策と捉えた中国の反感を引き起こした。数カ月後、オーストラリアは、主に国内での政策変更という理由から不参加を決めた。
日本のヘリコプター護衛艦。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Cole Schroeder)
インドは今年、マラバールへのオーストラリアの参加を認めなかったが、オーストラリアはオブザーバーとして参加している。中国の反発があるものの、マラバールは近い将来、アメリカ、日本、インド、そしてオーストラリアの4カ国での共同演習となる見込み。
艦隊を見つめる、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ピックニーのタイラー・ゲイズリー(Taylor Gazeley)大尉。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Craig Z. Rodarte/Released)
「日本の参加によりマラバールは3カ国の共同演習となった。おそらく来年にはオーストラリアも参加し、4カ国での演習となる可能性が高い」とあるインドの関係者は2017年7月、匿名を条件にインドの英字新聞ビジネススタンダード(Business Standard)に語った。
インド海軍のコーラ級コルベット、コーラ。空母ニミッツとミサイル巡洋艦プリンストンの後ろを行く。
(US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Craig Z. Rodarte/Released)
[原文:15 photos of Malabar 2017: US, India, and Japan's war games held amid China's growing influence]
(翻訳:Conyac)