アマゾンではなかった…… アメリカの小売業を低迷させた2つの元凶

荒廃したモールの写真

アメリカでは、多くのショッピングモールが倒産の危機に瀕している。

Nicholas Eckhart

アメリカの小売業界は今、混乱の最中だ。その驚異の閉店率と破産率の元凶は、アマゾンやオンラインショッピングの台頭だとされている。

しかし業界コンサルタントのダグ・ステファンズ(Doug Stephens)氏によると、eコマースはアメリカの小売業を崖っぷちに追いやっている要因のごく一部に過ぎない。

「数学的に考えて、アマゾンのせいではあり得ない」とステファンズ氏は言う。

オンラインショッピングの売り上げは急速に伸びていて、直近の四半期で15%増となった。小売業全体では、4%増にとどまっている。

しかし、eコマースの売上高は、金額にして小売業全体の8.5%に過ぎない。残りの91.5%は、未だ実店舗での買い物だとアメリカ国勢調査局のデータが示している。

だとすれば、モールや店舗の客はどこに流出しているのだろうか?

小売業全体の売り上げにおける、実店舗の割合を表したチャート

小売業全体の売り上げにおける、実店舗の割合。低下しているとはいえ、2017年第1四半期は91.5%だ。

Fung Global Retail

アメリカの小売業低迷の背景には様々な要因があり、原因を1つに絞ることはできない。もちろん、オンラインでの売り上げの成長も無視することはできない。

しかし、それ以上に、間違いなく影響を及ぼしている要因が2つある。小売業者の過剰出店とアメリカ人の消費習慣の変化だ。

小売業者は需要がいずれ追いつくと期待して、1990年代に何百ものショッピングセンターやモールを全米で急速に展開した。

統計:オンラインショッピングと実店舗、どちらで買い物をしたいか

まだまだ実店舗での買い物を好む消費者は多い。グラフは、オンラインと実店舗、どちらでの買い物を好むかを、商品のカテゴリー別に調査した結果。

Business Insider, Mike Nudelman

しかし、需要が追いつく前にアメリカは不況に突入、消費者が自由に使える支出は急激に減少した。こう話すのは、コネチカット大学不動産センター(Center for Real Estate)のジョン・クラップ(John Clapp)教授だ。

同教授によると「現在、アメリカの1人あたりの小売面積は、必要量の2倍もしくは3倍にのぼる」

投資調査会社モーニングスターによると、1人あたりの小売面積は、アメリカで23.5平方フィート(約2.2平方メートル)と最も大きく、カナダの16.4平方フィート(約1.5平方メートル)、オーストラリアの11.1平方フィート(約1.0平方メートル)と続く。

アメリカにおける小売面積の余剰は、1平方フィートあたりの売上高の低下を招いた。不動産調査会社グリーンストリート・アドバイザーズによると、シアーズのような小売業者が2006年の水準を取り戻すには、店舗の半数近くを閉鎖しなければならない。

2006年の1平方フィートあたりの売り上げ水準を取り戻すために、閉鎖しなければならない店舗の割合を表したグラフ

1平方フィートあたりの売上高は低下し続けている。グラフは、2006年の水準を取り戻すために、各社が閉鎖しなければならない店舗の割合。

Fung Global Retail, Green Street Advisors

小売業者の多くは、不況が去れば売り上げも回復するだろうと期待していた。ところが、モールに出店する大半の小売店で、売上高が回復することはなかった。消費者の買い物習慣が変化したからだ。

ステファンズ氏は言う。「何を買い、どこでお金を落とし、どのように消費するのか。消費者は、以前よりも厳しい目で判断している」

特筆すべきは、消費者が「モノ」よりも「体験」を購入している点だ。

この傾向は特にアパレル小売業者に打撃を与えており、その背景にはソーシャルメディアの台頭があると同氏は指摘する。

「『モノ』よりも『体験』の方が、ソーシャルメディア上で話題になりやすい」

2017年に閉鎖した店舗数を表すグラフ

今年だけで5000店舗以上が閉店する。グラフは、2017年に閉鎖した店舗数。

Fung Global Retail

加えて、ヘルスケア、テクノロジー、教育などその他の分野で消費者の支出が増えていることを考えれば、ここ10年間でショッピングモールから客足が遠のいてしまったことにも納得がいく。

また、いざ「モノ」を買うとなっても、消費者の大半は正規の価格を支払うことはない。不況時に学び、それ以来身に付いた消費習慣だ。シアーズやメイシーズといった正規の価格で販売する百貨店が苦しみもがく一方、TJマックス(TJ Maxx)やマーシャルズ(Marshals)、ロス・ストアーズ(Ross Stores)などのディスカウントストアは盛況だ。

急成長を遂げるeコマースは、いずれ小売業全体に対し、更なる影響力を持つだろう。しかし、現時点でeコマースを小売業低迷の最大の元凶として責めるのは、お門違いだ。

[原文:There's one major thing everyone gets wrong about Amazon and the retail apocalypse

(翻訳:Yuta Machida)

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