デスクトップPCをスマートグラスに置き換えた企業 —— 仕事はできるのか、見てきた

テック業界で「ドッグフーディング(犬の餌やり)」はよく使われる言葉だ。その意味は、企業が自社製品をまず従業員に使わせること。市場に出す前にバグや改良すべき点を見つけだそうというわけだ。

最近、シリコンバレーの有力企業は、ARに大きな関心を寄せている。実際、AR推進派は以下のように語る。

「ARが十分に発達すれば、スマートフォンからコンピューターまで、一般的に使われているスクリーンは全て、たった1つのスマートグラスに置き換えられるだろう」

しかしそこに至るまでに、技術者はたくさんの「ドッグフード」を食べなくてはならない。つまり、彼らが大好きなパソコンやスマートフォンをARヘッドセットに置き換えなければならない。

あるシリコンバレーの企業が今、まさにそれを行っている。Metaは、ARヘッドセットを開発しているスタートアップ企業。従業員はデスクトップPCの代わりに、「Meta2」ヘッドセットを使って日常業務を行っている。

当初、エンジニアは抵抗したが、マーケティング、販売、管理部門からは、多くの有益なフィードバックが寄せられる結果となったと、ブルームバーグが報じた

「もう3週間、iPhoneとMeta2しか使っていない」と、Metaのバイスプレジデントで、同社のエバンジェリスト、ライアン・パンプリン(Ryan Pamplin)氏はBusiness Insiderに語った。

「目の前に浮かんでいるバーチャルウィンドウに、Macのデスクトップを映している。iMovieやフォトショップ、その他、好きなアプリをどれでも使うことができる。とてもいい」

フライト中は、Meta2で映画を見るのがお気に入りだと同氏は続けた。

Metaは7300万ドル(約81億円)超の資金を、Horizon Ventures、レノボ、テンセント、Banyan Capitalなどの企業から調達した。企業価値は3億ドル以上と言われている。

ワークスペース

Meta

MetaがデスクトップPCを放棄できるのは、同社が「ワークスペース(Workspace)」というソフトウエアを開発したからだ。

ワークスペースでは、ユーザーはVRヘッドセットの中に、複数のブラウザのウィンドウを立ち上げることができる。例えば、あるウィンドウではユーチューブを再生し、別のウィンドウでは文書を作成するといった具合だ。バーチャルの付せんを貼ったり、家族写真を飾ったり、さらには机の周りにバーチャルの観葉植物を置くこともできる。つまり、理想のオフィスをバーチャルで作り出せる。

「いい思いをしたいのなら、ドッグフードを食べなくてはならない」とパンプリン氏。

「でも、もしあなたがドッグフードを食べたくなっても、なぜMetaだけなのか? これは我々にしか実現できないことだからだ」

ワークスペースのデモを試してみた。その様子を見てみよう。

Meta2ヘッドセット。今なら949ドルで開発キットが予約できる。ただし、少し時間がかかる。Metaは「夏の終わり頃」を目指している。

Meta2ヘッドセット

Meta


ヘッドセットを装着した様子。ヘッドセットはゲーミングPCに接続した。Meta2の特長は、視野角が90度と広いことで、マイクロソフトのHoloLensなどの競合製品と比較すると、バーチャルな画面をより広々と投影することができる。カラーのフロントカメラや、2個のモノクロセンサー、6軸ジャイロスコープを内蔵している。

Meta2ヘッドセット

Ryan Pamplin


目の前に現れたMetaのワークスペース。バーチャルの棚の中には、様々なアプリや機能が。どれも使うことができる。

ワークスペース

Meta


アプリを起動させるには、棚に手を伸ばせばいい。丸いアイコンつかみ、好きな場所に置く。

ワークスペース

Meta


棚をつかめば、棚ごと動かせる。

ワークスペース

Meta


非公式だが、Metaは「アイアンマン機能」と呼んでいる。

アイアンマン機能

Marvel


最もよく使うアプリはブラウザだろう。好きなだけブラウザのウィンドウを開くことができる。モニターを2台使いたいなら、ARの中でも同じようにできる。マックもウィンドウズもどちらも使える。

ワークスペース

Meta


ウィンドウの角をつかんでサイズを変えたり回転させることができる。

ワークスペース

Meta


ワークスペースの用途は仕事だけに限らない。棚には、触ると音が出る楽器のようなおもちゃも並んでいる。

ワークスペース

Meta


ひとつ気になったのは、距離感がつかみにくいこと。パンプリン氏によると、これはよくある問題だが、ほとんどの人はすぐ慣れるらしい。時々、システムが手の動きに追いつかないことも気になった。

ワークスペース

Meta


将来的には、複数の人での共同作業も可能になるだろう。

ワークスペース

Meta


ヘッドセットを装着すれば、いつも、同じ環境を立ち上げることができる。

ワークスペース

Meta

パンプリン氏のワークプレイスでは、ユーチューブからケイティ・ペリーが流れ、ガールフレンドの写真が飾られ、机の下ではバーチャルの炎が燃えている。

動画はこちら:

[原文:People are already replacing their desktop computers with smartglasses

(翻訳:仲田文子)

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