意外に質素、大富豪8人の毎日

マーク・ザッカーバーグ

ザッカーバーグ氏。愛車はフォルクスワーゲンのハッチバック。

Justin Sullivan/Getty

倹約は主観的な単語だ。一般的なアメリカ人にとっては、外食をしなかったり、安い航空券をネットで探したりすることが倹約だろう。

しかし、大富豪にとっての倹約とは、Tシャツとジーンズで出勤したり、トヨタやフォルクスワーゲンを自家用車にすることだ。あるいは、プライベートジェットや豪華な別荘を買わないことも。

世界で最も裕福な人たちの中には、信じられないくらいの倹約家がいる。それぞれが、その人なりの節約術を実践している。

自社のカフェテリアで社員と一緒にランチを食べる人もいれば、豪邸を買えるだけのお金があるのに、質素としか表現のしようがない家に住む人もいる。以下に紹介する、自らの力で富を築いた8人の大金持ちの多くは、寛大な慈善活動家でもある。そして、自身の膨大な資産を維持する秘訣を知っている。

ウォーレン・バフェット氏は、1958年に3万1500ドルで購入した家に現在も住んでいる。

ウォーレン・バフェット

Rick Wilking/Reuters

資産:740億ドル

「オマハの賢人」と呼ばれるバフェット氏は、最も賢く、最も倹約家である大富豪の1人だ。世界有数のお金持ちと称される身でありながら、1958年に3万1500ドルで購入した質素な家に今でも住んでいる。携帯電話は持っておらず、デスクにはコンピューターもない。2009年に出版された伝記『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』によれば、かつて自分の車のナンバープレートに「THRIFTY(倹約)」という文字を入れたこともある。25年来の友人ビル・ゲイツ氏がオマハを訪ねてくる時には、バフェット氏自身が空港に車で迎えに行く

バフェット氏はまた、庶民的な食べ物が好きで、ファストフードのバーガーキングや、ソフトクリームショップのデイリークイーン、コカ・コーラなどに出資しているだけでなく、自ら好んで口にしていることでも知られている。1日にコーラを5本飲み、チートスやポテトチップスを食べるのがバフェット流の食生活だ。

バフェット氏は2014年のバークシャー・ハサウェイ株主総会で、資産がいくらあろうとも、自分の生活は変わらないと語っている

「私はこのうえなく幸せだ。家を6軒や8軒も所有していたら、むしろ状況は悪くなっていただろう。私は必要なものをすべて持っている。これ以上はいらない。一定のレベルに達したら、それ以上は違いはない」


マーク・ザッカーバーグ氏は、フォルクスワーゲン・ハッチバックのマニュアル車を運転している。

マーク・ザッカーバーグ

Scott Olson / Getty Images

資産額:700億ドル

ザッカーバーグ氏は、世界で最も裕福なテック界の大物でありながら、妻のプリシラ・チャン氏や幼い娘とともに質素な暮らしを送っている。シンプルなTシャツとパーカー、ジーンズを制服のように常に身につけていることを一切恥ずかしがらない。

「私はすっきりとした生活を心から望んでいる。そうすれば、決断事項を極力減らして、フェイスブックに最大限貢献するにはどうすればよいかということだけに集中できる」と語っている。

彼は富を手にしても一切感化されず、2015年12月には、夫妻が保有するフェイスブックの株式の99%を存命中に慈善事業に寄付すると発表した

ザッカーバーグ氏は、2012年に自宅の裏庭で結婚式を挙げた後、ハネムーン先のイタリアでマクドナルドをほおばる姿が目撃された。カリフォルニア州パロアルトにある自宅の価格は700万ドルで、同地区の住宅市場の高額さを考えれば控えめな額だ。700億ドル超の資産を持つ同氏から見れば、おこづかい程度に過ぎない。

2014年には、3万ドルするホンダの高級車アキュラTSXから、フォルクスワーゲンのマニュアル車に乗り換えた

メキシコ企業グループ、グルポ・カルソ(Grupo Carso)創業者のカルロス・スリム・ヘル(Carlos Slim Helu)氏は、40年以上も、豪邸とは言えないベッドルーム6室の家に住み続けている。

カルロス・スリム氏

REUTERS/ Edgard Garrido

資産額: 653億ドル

カルロス・スリム氏は、増えたり減ったりする資産を使ってしまうのではなく、膨大なお金を節約しつつ、経営する無数の企業に注ぎ込んでいる。同氏はかつてロイターに対し、富は果樹園のようなものだという考えを述べた。

「富を手にしたら、それを増やすか、もっと大きくするために再投資するか、ほかの分野にも手を広げるかしなければならないから」

メキシコでダントツ1位の大富豪である同氏は、プライベートジェットやヨットなどには手を出さない。今でも古いベンツに乗っていると伝えられる。経営においても倹約家で、「会社が繁盛している好調な時期でも節約を心がけるべきだ」と従業員向けの手引きに書いている

同氏は40年以上前からずっと、メキシコにあるベッドルーム6室の自宅に住んでおり、子どもたちや孫たちと一緒に家庭料理を楽しむ日々を送っている趣味がいくつかあることが知られており、美術収集もその1つだ。亡き妻の名前を冠した美術館にコレクションを展示し、無料公開している。また、キューバ産の葉巻をたしなむほか、マンハッタンに8000万ドルのマンションを所有しており、売りに出したことがある。

衛星放送大手ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)会長のチャーリー・アーゲン(Charlie Ergen)氏は、今でも毎日ランチを持参する。

チャーリー・アーゲン氏

Getty Images / Karl Gehring

資産額:199億ドル

チャーリー・アーゲン氏は、倹約好きなビジネスリーダーとして有名だが、その姿勢は私生活にも当てはまる。64歳のアーゲン氏は、自分が節約を心がけるのは、母親の幼少期の話を聞いたからだとしている。

「私の母は世界大恐慌の時代に生まれ育った」とアーゲン氏はフィナンシャル・タイムズで述べた。「私はマホガニー製の高級デスクなど持っていない」。

アーゲン氏は、毎日サンドイッチを作って、スポーツドリンクと一緒に会社に持参する。最近までは、出張時には同僚と相部屋で宿泊していた。

ZARA(ザラ)の創業者アマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)氏は、今でも本社のカフェテリアで社員と一緒にランチを食べている。

アマンシオ・オルテガ氏

Getty Images / Xurxo Lobato

資産額:823億

ザラの創業者オルテガ氏は現在、世界3位の大富豪。しかし、その事実も同氏のお金の使い方に影響を与えないようだ。

オルテガ氏は長年にわたり、プライベートを一切明かしていない。スペイン北西部の都市ア・コルーニャの閑静なアパートメントで静かに過ごすことが多く、妻と一緒になじみのコーヒーショップに通ったりしている。ザラ本社のカフェテリアで従業員とランチをともにすることもある。

アパレル業界の大物だが、オルテガ氏もザッカーバーグ氏と同様、毎日同じシンプルな服を制服のように身につけている。彼の仕事着は、青のブレザー、白いシャツ、グレーのパンツだ。4500万ドルもするボンバルディアのプライベートジェットを所有する同氏を倹約家だと呼ぶべきではないとの声もあるが、仕事が忙しすぎて旅行をすることはほとんどない。

イケア(IKEA)創業者イングヴァル・カンプラード(Ingvar Kamprad)氏は、エコノミークラスで旅し、頻繁にバスを利用する。

イングヴァル・カンプラード氏

Forbes

資産額:438億ドル

イケアの創業者カンプラード氏は、ヨーロッパ有数の大富豪だが、エコノミークラスに乗り、イケアのカフェテリアで昼食をとる姿からはそんなふうには思えないだろう。1960年代には、ポルシェを乗り回したり、オーダーメイドのスーツを着こなして散財したこともあったが、その時期を除けば、同氏の暮らしはきわめて質素だ。10年以上も同じボルボを運転し、よくバスで移動する同氏のことを「ケチ」だという人もいるかもしれない。

同氏は約440億ドルの資産を持つが、スウェーデンの高い税金を嫌ってスイスで40年以上暮らしたのち、2013年にふたたびスウェーデンに居を構えることにした時は、喜んで質素な平屋の自宅に戻った。

インドのIT大手ウィプロ(Wipro)会長のアジム・プレムジ(Azim Premji)氏は、中古車に乗り、会社では無駄な照明を消すよう社内を注意して回る。

アジム・プレムジ氏

Reuters

資産額:156億

インドで最も裕福なテック業界の大物であるプレムジ氏は、「しまり屋のビリオネア」とも呼ばれている。同氏に比べれば、「クリスマス・キャロルに登場する守銭奴スクルージでもサンタクロースのように思える」と言われているほどだ。

プレムジ氏は150億ドルを超える資産を持つ。それでも空港から自宅に帰るのに、インド庶民の足である原動機付き三輪車を利用したり、会社のトイレットペーパーの数を管理することをやめようとしない。また、飛行機はエコノミークラスを利用し、自家用車は中古車。無駄な照明は消すよう、社内を注意して回っている

エピック・システムズ(Epic Systems)の創業者ジュディ・フォークナー(Judy Faulkner)氏は、「贅沢な暮らし」には一切興味がないと述べた。

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Courtesy of Epic Systems

資産額:48億2000万ドル

電子カルテを手がけるエピック・システムズを築き上げたのが、マスコミ嫌いで知られるプログラマーのフォークナー氏。同社は非公開の医療関連企業で、1979年に資本金約7万ドルでスタートした。

フォークナー氏は、派手に散財するタイプではない。報道によれば、フォークナー氏は過去15年間で自動車はわずか2台しか所有せず、ウィスコンシン州マジソンにある同じ家に、30年近く、夫と住み続けている。

2015年5月には、ビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が始めた寄付啓蒙活動「ギビング・プレッジ(Giving Pledge)」に参加し、自身の資産の半分を慈善事業に寄付すると宣言した。

「私は、贅沢な暮らしをするお金持ちになりたいと願ったことは一度もない」。その代わり、多くの人たちが「食べ物や暖房、住宅、医療、教育」を手に入れられるよう手助けすることにお金を使うことにしたと語った。

[原文:The surprisingly frugal habits of 8 billionaires

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)

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