「男性の意識は変わらない。女性は男性の既得権奪え」カルビー松本会長らが語る日本のダイバーシティーの現実

国際女性ビジネス会議

「男性の意識。どう変える?」がテーマのセッションにはカルビーの会長兼CEOの松本晃氏(右)、阪急阪神百貨店社長の荒木直也氏(中央)、メットライフ生命の日本社長サシン・N・シャー氏(左)の3人が参加した。

7月23日、今年も東京・台場で「第22回目国際女性ビジネス会議」が開かれた。今年のテーマは「Act Positve」。盛りだくさんなプログラムが用意されたなか、会場がひときわ盛り上がりを見せたトークショーが「男性の意識。どう変える?」だった。カルビーの会長兼CEOの松本晃氏、阪急阪神百貨店社長の荒木直也氏、メットライフ生命日本社長のサシン・N・シャー氏の3人が参加。

「男性の意識を変えるなんて、そんなろくでもないことを考えないほうがいいですよ」

ダイバーシティ先進企業として知られるカルビーの松本会長の発言に会場はどよめいた。

「男性の意識は変わりません。ダイバーシティというのは、所詮は既得権を奪うことなんですね。既得権とは何か。大きく分けると1つはお金です。偉くなったらたくさんもらえる。2つ目は権限。3つ目は地位、身分。こんな楽しいものを持ったやつが手放すわけがない。従ってそんなものは、意識の問題ではない。奪われたら損をすることに関して、徹底的に抵抗するのは当たり前なんです」(松本さん)

同時に進める働き方改革

国際女性ビジネス会議・松本カルビー会長

松本・カルビー会長。

管理職女性はもちろん、男性を上司に持つ会社員女性なら、思い当たることがある発言ではないだろうか。でも、だからこそ、女性たちは悩んでいる。既得権益を手放そうとしない男性に対して、女性たちはどうすればいいのか。

松本さんはずばり、 「仕方がないから奪うわけです。(都知事になった)小池百合子さんは奪ったんですね。だから成功された。意識を変えようと辛気くさいことをやっていると、恐らくまだ300年くらいかかるんじゃないですか」

男性の意識を変えるのではなく奪えばいい —— 。

なんて刺激的な言葉だろう。松本さんは実際、カルビーで「一つひとつ既得権を奪う」ことを実践してきた。会長兼CEOになってまずしたことが、一人を除く取締役全員に辞めてもらうことだったと言う。

「みな退場です。会社の中には会長室もありません。社長室もありません。個人の机もない。こういうものは奪っていかないとダメなんです。奪う中でどうしても必要だったことがダイバーシティ。それと同時並行的に進めているのが働き方改革です。同時に進めない限りはダイバーシティは進まない。本当に会社を良くしたい、成果を出したいという心ある経営者がおられたら、これはもう力づくでダイバーシティをやるしかない。力づくで抵抗勢力なんて蹴飛ばしてしまえと」

ファシリテーターを務めたNHKワールドのキャスター高尾美紀さんの「抵抗勢力はどう思っているんですか」という突っ込みに松本さんは、「マネジメントは嫌われるのが仕事」と断言する。

「マネジメントはやっているときは嫌われるんです。辞めてから好かれるんです。そういう人じゃないと(経営はできない)。ところが、逆ですよね。やっているときに好かれる。辞めてしまってから嫌われる。これでは結局、会社は良くならない。会社の経営者である限り、何が何でもこの会社を良くしなければなりません。カルビーは国内のスナック菓子では強いですが、外へ出て行ったらダメです。何かが起こったときはこの会社はあっという間に死んでしまいます。したがって、(ダイバーシティを)やらざるを得ない。好きとか嫌いとかいう問題ではなしに(そういう時代が)やって来ているわけです」

実際、カルビーは2009年に松本さんが会長に就任して以降、「売り上げが1.84倍、利益は10倍くらいに増えたから、ダイバーシティをやっていることは『まぁ、まぁ良かったんじゃないですか』と思っています」

経営者が腹落ちしないと続かない

百貨店も転換を迫られている業種の1つだ。阪急阪神百貨店の荒木社長によると、百貨店業界は実は男性社会。これまでは、「男性のパワーゲームのほうがよっぽど効率的でうまくいくという時代が長かった」と話す。

阪急阪神百貨店・荒木社長

阪急阪神百貨店・荒木社長

「いよいよ答えのない本当に変革が必要な時代になってきている。百貨店ビジネスは恐らく、これからスモールビジネスの集合体に形を変えていかないといけない。85%の顧客が女性ですから、女性のことを知り尽くした女性、従業員4500人のうち3000人は女性です。こういう人たちをいち早く生かして、新しいスモールビジネスの集合体にしていく、あるいは活用していかないと会社は持たないと思う」

しかし、荒木さん自身「女性を活用しないと会社が持たない」と意識したのは2年くらい前だと言う。意識を変える前に、男性のパワーゲームだけではやっていけない「現実」がやってきたのだ。

「(経営者がダイバーシティが必要だと)腹落ちすると意思を持って継続的にアクションを起こしていける。(男性の意識が変わるのは)本当に腹落ちしているかどうかじゃないですか」

この日の参加者は約1000人。男性参加者は毎年少しずつ増えているといいい、、今年は約15%だった。「大会社のトップ、(今日の会議に)ほとんどいないと思います。あの方達は(ダイバーシティ)が嫌いなんです。今日ゴルフしていたほうがいいんです」と現実を話す松本さん。

高尾さんは3人の経営者に対して、「今の日本が変わっていく姿が想像できますか」と質問。残念ながら松本さんの答えは「想像できません」ときっぱり。

「こんな立派な会が毎年行われている割には、スピードが遅すぎるんです。他の国はもっと早いですよ。こんなスピードでやっていて、本当にいいんですか」(松本さん)

メットライフ生命のサシン・N・シャーさん

メットライフ生命のサシン・N・シャー社長

メットライフ生命のサシン・N・シャーさんも、「会社が生き残るためには、速いペースで改革を進めることが死活的に重要」と言う。結果を出していかなければならない状況の中で、(女性が)マイノリティーという考え方ではいられない。「多様性のある考え方こそ必要」なのだ。劇的に変化する金融業界だからこそ、思考の転換も求められている。シャー氏は「『なぜこれをやるのか?』から『なぜこれをやってはいけないのか?』という考え方へシフトしなければならない」と繰り返した。

思考や意識、働きなど全てにおいて、ダイバーシティになっていかないと日本は変わらない。そう改めて考えさせられたトークショーだった。

(撮影:野澤朋代)


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