今秋登場の新iPhone、ドコモは「攻めの姿勢」で挑む —— 新料金で格安SIM流出も歯止め、盤石の体制へ

現時点のドコモwith対応の2機種

5月の新製品発表でデビューした、割賦の端末補助をなくすかわりに月額1500円をずっと割引し続ける「ドコモwith」。対応端末2機種限定の料金プランだが、秋冬商戦での対応端末の拡充にも言及した。(2017年5月撮影)

NTTドコモ(以下ドコモ)は7月27日、2017年度第1四半期決算説明会を開催。増収減益となったものの、当初の計画通りであり「年間業績予想に対しては順調な進捗」(同社、吉澤和弘社長)。ドコモが堅調な姿を見せるなか、いま夏商戦に突入したスマホ業界は、まさに「猛暑」と言うべき熾烈な競争が続いている。

まず、ソフトバンクとKDDIによる無料クーポンのバラマキ合戦だ。

ソフトバンクの「スーパーフライデー」に続き、KDDIが「三太郎の日」を始めた。曜日や日付を限定して、ファストフードやコンビニの商品がもらえるキャンペーンで、学生を中心に人気を博している。

その対抗策を聞かれた吉澤社長は「三太郎の日は、3のつく日が対象なのに、なぜ30日と31日が非対応なのか、という疑問はさておき、私どもはああいったこと(無料クーポン施策)は考えていない」と言う。

ドコモでは、店舗での買い物において、dポイントを付与することに注力しているため、クーポンよりもポイントで、ユーザーへの還元を考えているようだ。

ドコモの"格安SIM潰し"が効果を出し始めた

yoshizawa社長

NTTドコモ・吉澤和弘社長。

2017年の夏商戦において、特に「熱い」のは、ドコモとKDDIが相次いで投入した「格安スマホ潰し」の新料金プランだ。

ドコモが、月額980円の音声通話プラン「シンプルプラン」に加えて、サムスン電子(Galaxy Feel)と富士通(arrows Be)のどちらかを購入すれば、毎月1500円を割り引くという「docomo with」を投入してきた。

シンプルプランの最新状況に関しては「契約件数は40万件弱。予想よりも少し少ない」(吉澤社長)という。ただ、ドコモとしてはこれまで格安スマホ、特にワイモバイルに大量のユーザーが流出してきたことに頭を悩ませているようだが、シンプルプランの導入により、「ドコモに残ってくれる効果が出始めている」(吉澤社長)と、新料金プランの効果を説明する。

実際、格安SIM業者(MVNO)関係者や他キャリア関係者に話を聞くと「docomo withやシンプルプランで、ドコモから格安スマホへの移行が止まった感がある。流動性が落ちてきたのは間違いない」と渋い顔を見せる。

docomo withに関して、吉澤社長は「比較的、好調で30万件ほど。秋冬商戦には1~2機種増やしたい」としており、さらなる端末拡充で、ユーザーの囲い込みにつなげたい構えだ。

4月決算で発表した「シンプルプラン」

契約件数40万件は「予想より少ない」数字だが、一方で新料金プランの効果として格安SIM(MVNO)への流出抑制効果は現れているという。

20428369_10210200986121062_778587036_n

ドコモユーザーへの還元をしっかり実施していく「beyond宣言」。どのようなニーズへの還元なのかを、スライドで説明したもの。

一方のKDDIの状況は?

料金競争に関しては、KDDIが「auピタットプラン」として、ユーザーが利用した分だけのデータ通信料金が請求されるという新料金プランを投入してきた。

KDDIでは「新料金プランの受付を開始した最初の週末には、Androidスマホが新規、機種変更とも前の週に比べて5割増で売れた。受付から2週間が経過したが、新規契約の伸張率が依然高い。また既存のユーザーのプラン変更も旺盛だ」(同社関係者)という。

新料金プランは現状、(公式には)「Androidスマホのみ対応」ということで、Androidがよく売れた、というわけだ。KDDIとしても、格安スマホ、特にワイモバイルへの流出が多かったため、既存のユーザーをいかに囲い込むかという点に苦労し、今回のピタットプランをスタートさせている。既に新規契約だけでなく、既存ユーザーのプラン変更が増えているということは、新料金戦略に一定の効果が見込めたということだろう。

auピタットプランの影響に対して、吉澤社長は「店頭などを見ても、ドコモのお客さんがauに流れているというのはあまり考えられない。すぐに追随することはない」と語る。ドコモでは、ユーザーの利用実態に即したプランを用意しているとして、KDDIの動きに対しては静観の構えだ。

今秋に控える新iPhone、ドコモは攻めの姿勢

他社の動向に対して、「様子見」のドコモだが、毎年、秋に発売されている、iPhoneに関しては一転、攻めの姿勢で挑むようだ。

吉澤社長は「(iPhoneに関して)何の情報も持っていないが」と断りを入れた上で「(ドコモがiPhoneを取り扱っていなかった頃)iPhone欲しさにドコモから他社に行ってしまった人を取り返したい。ドコモに戻ってきたいと思えるアピールをしていきたい」と語った。ドコモとしては、長らくiPhoneがなかったことで、相当数のユーザーが他社に流れてしまった黒歴史が存在する。

ドコモとしては次のiPhoneでなんとかそうしたユーザーを獲り返す秘策を展開する気なのだろう。吉澤社長の目先はすでに秋のiPhoneに向いている。

これまでは、料金プランは3社横並びで、ネットワーク品質にも大きな違いが見られないこともあり「iPhoneなら、どのキャリアを選んでも一緒」という状況にあった。しかし、ここ最近は、料金プランや端末の買い方において、キャリアごとの違いがあらわれ、クーポンなどのキャンペーンも3社で異なる状況になってきた。

さらに新iPhoneをめぐっては、これまでどおり「SIMフリーiPhoneを購入し、格安スマホのSIMカードで運用する」という使い方もあり、ユーザーにとっては選択肢と柔軟性が非常に増えた状態といえる。

まさに今秋のiPhone発売時は、大手3キャリアだけでなく、格安スマホを巻き込んだ熾烈な顧客獲得合戦が展開されそうだ。


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み