[更新終了]ホリエモンロケット「MOMO」打ち上げ失敗 —— 離床するもエンジン緊急停止、国内初の民間の軌道実証は道遠く

打ち上げの射場

観覧地点から打ち上げの射場をのぞむ。

【2017年7月30日 18:30更新】

ホリエモンロケット「MOMO」の打ち上げは、土曜日の打ち上げ枠から数回の延期ののち、最終枠となる16時32分に打ち上げを実施した。ロケットの飛行状態を示すテレメトリデータが地上に届かなくなったため、離床から80秒後、地上からの指令によりエンジンを緊急停止した。MOMOは目的の高度には到達せず、機体は海上に落下したと思われる。

現地では19時より会見が予定されている。エンジンの緊急停止を行なった詳しい状況などについては追ってお伝えする。

【2017年7月30日 12:55更新】

12時20分の打ち上げは、12時30分に延期の後、さらに延期になった。ただし、今回の発射の可能性はまだ残されている。

延期の原因はロケット側のトラブルではなく、「落下が予想される警戒水域に船が航行していることが確認された」ため。船舶に対する事前の協力要請は出されているものの、海域に入ってしまった以上は船舶の安全が優先される。打ち上げ予定だった12:30までに当該の船舶が警戒水域を出ることは難しいと予想されるため、再度の延期(一時中止)となった。

この後、当初予定ではキャンセルとなっていた15:45からの打ち上げ時間枠での発射をめざし、ISTは協力してくれる監視船との交渉を進めている。

【2017年7月30日 10:40更新】

予定していた30日早朝、午前5時の打ち上げ時間枠(ウインドウ)は液体酸素の内部リークによるバルブまわりのトラブルで打ち上げ2分前に一時中止となった。その後、トラブルの解消にあたり、燃料となるエタノールの注入を再開した。

目標だった10時半までのエタノール再注入を完了できたため、原稿執筆時点の午前10時36分現在、液体酸素の注入に移った。このまま午前12時20分の打ち上げを目指す流れになっている。ギリギリまで打ち上げを諦めずベストを尽くす、という体制だ。

【2017年7月29日 20:40更新】

2017年7月29日午前11時、堀江貴文氏が創業した民間ロケット会社インターステラテクノロジズは、観測ロケット「MOMO」の試験機打ち上げを濃霧のため翌30日に延期した。今回の打ち上げのチャンスは残り2回、30日午前5時または午前10時20分のいずれかとなる。

29日(土)の打ち上げ6時間前の午前9時台の判断では、29日15時45分の打ち上げを目指していたものの、午前10時ごろから霧が発生。打ち上げ見学場のSKYHILLSからは射点付近がまったく見渡せず、ISTの稲川社長によれば「100m先も見通せない、霧雨になりかかっているような濃霧」となってしまった。打ち上げ判断条件のひとつ「視程600m以上であること」の条件を満たさなくなり、また機体の電子部品などの安全性も考慮して打ち上げ中止を決めたという。

稲川貴大社長

インターステラテクノロジズの稲川貴大社長より打ち上げ延期の理由について説明。明日に備え、これまで根を詰めて作業してきたスタッフもいったん休養が必要だ。

29日午後に行われた記者会見でインターステラテクノロジズの稲川貴大社長は「機体の完成度は上がってきている。技術的完成度は高く、明日の天気予報は曇りで風が弱いので条件は悪くない」と自信を見せた。また、7月27日のリハーサル以後に判明した「技術的課題」とは、打ち上げ準備手順の見直しなどのマイナートラブルで大きな機器の故障などではないとしている。「今までになく大きなものを作っていて、大変だがこれまでの経験もある。強いチームができているので突破できるという感触がある」とのことだ。

堀江貴文氏

稲川社長とスタッフらをねぎらう堀江貴文氏は、関係者と共に前夜祭を開催したといい、各方面の期待感を実感していると語る。

射点へ「MOMO」の機体を移動する直前に延期決定となったことを知らせる稲川社長のツイート。

ISTで可愛がられている子猫の「ヒドラジン」。

大樹町の「MOMO」打ち上げに対する期待は高く、パブリックビューイング会場には午前10時過ぎですでに300台、470人が集まり、打ち上げを待っていた。これまでJAXAや民間を含め宇宙開発を応援してきた町役場や後援会などの支援団体関係者も集まり、ロケット打ち上げという「お祭り」に備えていたが、こちらも明日に延期となった。

大樹町のパブリックビューイング

朝のパブリックビューイング会場。早朝5時から見学に訪れていた人もいた。


打ち上げ観覧に訪れた人たち

「大樹スペース研究会」など宇宙活動を応援してきた団体もパブリックビューイング会場の盛り上げに駆けつけた。

打ち上げ観覧に訪れた人たち



(以下、初出時の記事)

MOMO02

打ち上げ地点のある大樹町の標識には、ロケットと航空公園の絵が描かれている。

IST010

インターステラテクノロジズが初打ち上げに臨む「MOMO」のイメージ。

IST

2017年7月29日に打ち上げが予定されていた、通称「ホリエモンロケット」こと、インターステラテクノロジズ社(IST)の「MOMO」ロケット。その打ち上げを見るために、北海道広尾郡大樹町の「大樹町多目的航空公園」にやってきた。

ISTによる国内初の民間ロケット軌道上実証となる今回の打ち上げの取材のため、大樹町に現地入りしている報道陣の数は、当日の29日朝時点で50社を数える。

原稿執筆時点の打ち上げの最新状況は、「7月27日に行われたMOMO打ち上げ最終リハーサルにおいて、これまで表面化していなかった技術的課題が発見されました」という理由から、29日15時45分からの回(ウインドウ)に変更されたことが分かっている。

「ウインドウ」とは、ロケット打ち上げなど何らかの宇宙ミッションが可能な時間帯のことを差す専門用語だ。MOMOの打ち上げウインドウは7月29日(土)10:20~、15:45~、7月30日(日)5:00~、10:20~、15:45~の5回設けられており、その中でどの時間帯になったとしても「予定通り」だ。打ち上げのGO/NO GOの判断は、打ち上げの6時間前、1.5時間前、直前のタイミングで、行われることになっている。

とはいえ、発表のあった「技術的課題の解消」には、どの程度の所用時間が見込まれるのか、気になる。堀江貴文氏は「今回の打ち上げウインドウを逃すと漁期の関係で次は11月になります。」とコメントしており、今回の初打ち上げの成功への期待が高まる。

MOMO06

左の「実験予定」に注目。「ISTロケットMOMO打ち上げ」とあり、時間は15:45〜17:00となっている。

MOMO04

施設内に展示されているロケット「ゆきあかり」。ISTの前身であるSNS社の3機目のロケット(実験機)の実物。

大樹町航空公園格納庫

近隣の格納庫。「大樹町多目的航空公園」の文字を見ると、はるばる航空公園までやってきた気分が盛り上がる。

航空公園滑走路の中継スクリーン。

仮設設置された中継スクリーン。打ち上げの様子はここから見ることができる。

7月29日は自動車収容台数2000台のパブリックビューイングが開催される予定だ。

これまで大樹町では、「宇宙のまち大樹町」としてISTを始めJAXAの宇宙科学研究や同じく民間ロケット開発企業、植松電機と北海道大学とのコラボによる「CAMUI型ロケット」の開発などを支援してきた。今回も町を挙げてホリエモンロケット「MOMO」の打ち上げを支援している。ISTの後援会やファンクラブなどが結成され、打ち上げ場所にほど近い「多目的航空公園」ではパブリックビューイングも行われる予定だ。

ISTが準備しているSKY HILLSと名付けられた見学場は丘の上にあり、打ち上げ準備を眺められるなど条件がよい。一方、多目的航空公園は打ち上げサイトに近い地の利を生かして、射点(打ち上げ地点)からわずか600m地点に設置されたカメラからの映像を大スクリーンで見ることができる。

もうひとつ気になる天候だが、7月29日午前8時発表の大樹町の天気予報は9時〜15時が晴れ、以降も曇りとなっている。ISTの観測ロケットは打ち上げ条件が「風速5m以下」とやや厳しいが、12時〜15時に風速5mも予測されているものの、夕方にかけて徐々に風が弱くなるという。

民間ロケット会社の打ち上げとして注目を集めるISTの「MOMO」。打ち上げが無事成功することを願いたい。

MOMO01

(撮影:秋山文野)


秋山文野:IT実用書から宇宙開発までカバーする編集者/ライター。各国宇宙機関のレポートを読み込むことが日課。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、書籍『図解ビジネス情報源 入門から業界動向までひと目でわかる 宇宙ビジネス』(共著)など。

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