「成功は最高のリベンジ」と語る"ゼロから起業"経験者にまつわる6つのストーリー

デル女性起業家ネットワークのステージ

Dell Women’s Entrepreneur Network(デル女性起業家ネットワーク)のステージの模様。参加者6人に声をかけて、話をきいた。

男性と比べると寿命も長く、ライフイベントが生き方に与える影響が多いのが女性だ。キャリアを断念するか、継続するか、フリーランスになるか、あるいは起業か——。7月、デルが米サンフランシスコで開催した女性起業家イベント「Dell Women’s Entrepreneur Network(デル女性起業家ネットワーク)」に集まった約100人の起業家たちは、起業に至るそれぞれのストーリーを持っていた。デル・テクノロジーによると、女性の起業は年10%で増えているという。現地から、6人の起業ストーリーをお届けする。

成功は最高のリベンジ

「産休後はキャリアアップは望めない」

地元オーストラリアの金融系企業でマーケティングの経験を積んだレベッカ・ウィルソンさんは13年前、第一子を妊娠した時に、上司からそう告げられた。

秘書になるぐらいなら辞めよう

ウィルソンさんはそれまでのキャリアを生かして、個人で戦略マーケティング・コンサルタントを開始した。

レベッカさん笑顔

レベッカ・ウィルソンさん。3人の子供の母でもある。当初は「そのコンピュータを閉じてくれ」と言っていた夫も、今ではCOOとして参加して参加している。

事務所はそれなりに大きくなる中で、ウィルソンさんは60歳を迎えた両親を見ながら、オンラインメディアにはシニア層が読みたい記事がないことに気がつく。

そこで60歳以上を対象としたメディア「Starts at 60」を立ち上げた。健康、ライフスタイル、お金などの分野で記事を揃えたところ、読者が飛びついた。口コミでどんどん読者は拡大し、いまや推定250万人いるとされるオーストラリアの60歳以上のFacebookユーザーのうち、100万人がStart at 60の読者だ。今では月間670万ページビュー、毎日2万5000件以上のコメントがあると言う。

現在の課題は、国際展開だ。米国のベンチャーキャピタルとの話を進めており、女性が出資を得るのは簡単ではないと日々感じるが、「状況を変えることはできない。最高のリベンジは成功」と静かに言う。

10年目にして経営人生はこれから

「いいお医者さんネット」を運営するキュアグレーズを創業して10年の武臣ゆみさんは「10年目にして初めて、経営者になると決意した。経営人生はこれからです」という。起業はどちらかと言うと偶然だった。

武富さん

武臣ゆみ氏。10年続いたのは「意地があったから」と語る。

大学卒業後に勤務した2社目の企業で、女性の昇進を阻むガラスの天井を感じ、MBAを取るために退社。MBA取得のテーマに選んだ医療の研究を進めるうちに、「患者が出会うべき先生に出会えない。情報が氾濫している医師を支援できないか」。医療系の会社員時代から感じていた問題意識が強まった。

たまたま投資家にも恵まれ、医薬品メーカーがスポンサーというビジネスモデルを走りながら考えた。Eラーニングや、ライブデモの動画サービスを次々に投入。「10年経てば楽になっている」と期待していたが、今年は武臣さんにとって試練の年だ。動画製作はコストがかかり、人の活用も簡単ではない。ビジネスの手腕が問われていることをひしひしと感じている。

夫に内緒で始めた事業が10年目に

遅延型アレルギー検査キットを販売するアンブロシアの志賀惠子さんは、大手外資系企業を経て2社目の米系企業に15年間勤務したが、そこで同僚2人が若くして突然死したのをきっかけに、健康の大切さを実感した。自身も40代を迎えていた。「残りの人生で人の健康に貢献したい」。

そんな頃、アメリカで行われている「遅延型アレルギー検査」を知る。すぐに症状が出る即時型とは異なり、弱い反応がゆっくり出るのでなかなか気がつかないタイプのアレルギーの検査だ。「日本で全く知られていないこの検査を広めよう」、そう決意した。

志賀さん

「改善した患者さんや担当ドクターからの嬉しい声が原動力」という志賀惠子さん。

資金は自分の退職金。「細々とやればいいと思っていた」ので、夫に内緒で自宅の一室に電話を敷いてスタートした。はじめは理解されなかった検査も、地道な営業で徐々に認知され「遅延型アレルギー検査を日本に広めたのはあなたですね」と言われるまでに。

最初の3年、自身は無給。体制も整え、「4年目ぐらいから、ようやく会社らしくなった」と志賀氏は苦笑いする。10年目を迎えた現在の社員は14人、子育てや介護中の女性もいる。取り扱う検査は約10種類に増え、全国の医療機関に採用されている。

起業家になるのは必然

circle

グアン・ディアン氏。パットスナップはグーグルの親会社アルファベットのようなモデルを目指しているという。まだまだ目標まで道半ばだ。

特許の検索や知的所有権の分析ができるサービスPatSnap(パットスナップ)の創業メンバー、グアン・ディアンさんは、シンガポール国立大学在学中に起業プログラムを利用してスタンフォード大で1年間学んだ。起業家になるという選択肢は必然だったという。

創業者の共同経営者として中国の営業マーケティングチームを一から立ち上げ、200人の組織に成長させた。顧客には、チャイナモバイル、京セラが中国にもつR&Dセンターなどがいる。

30歳を過ぎこれからは、社会的な問題に目を向けたいと考えている。

「中国、インドなどでは、今でも教育に平等にアクセスできない。教育を受けることができれば、世界に道が開ける」

日本の女性は葛藤している

Waris(ワリス)を共同で立ち上げた田中美和さんは、前職の日経BP社で、「日経ウーマン」の記者として様々な働く女性に接した。そこで感じたのは、「復職が難しい、短時間勤務では評価が得られないなど、日本の女性たちは葛藤やジレンマを抱えて働いている」ということだ。

田中さん笑顔

田中美和さん。東日本震災は大きなきっかけになった。「人生は一度きり、せっかくなら自分がやりたいことをやって生きたいと思った」。

今度は具体的な問題解決を仕事にしようと退社。「恵まれた環境だったから、やめることは大きな決断だった」と振り返る。

フリーランスという働き方を求める女性と、活用する企業のマッチングをしようと意気投合した共同代表の2人とともに、ワリスを立ち上げた。社名のワリスとは”砂漠に咲く花”というソマリアの言葉。「厳しい環境にあっても女性たちが自分の花を咲かせる社会を作りたい」と田中氏。創業4年目に入り、登録者数は約4000人、企業の数は1300社になった。地理的拡大も進めており、福岡、中部などに力を入れている。

女性はリーダー向き

CIRCLEのサダフィ・アビッドさん

CIRCLE(サークル)をパキスタンで起業したサダフィ・アビッドさん。

世界的に女性の経済活動への支援を行うCIRCLE(サークル)をパキスタンでち上げたのは、サダフィ・アビッドさんだ。低所得者向けの金融サービスであるマイクロファイナンスのKashf Foundation(カシフ・ファンデーション)でCEOを務めた経験をもつ。

サークルではハーバードのリーダーシップ論や、コーチングなどの手法を用いて、女性のリーダーシップ啓蒙や起業を支援する活動を展開する。

「女性はリーダーに不向き? そんなことはない。女性はコミュニケーションが上手で、変化をすぐに与えることができる」

女性の潜在能力を信じている。

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ダイバーシティ、女性の社会進出といった言葉がもてはやされる一方で、女性はときにつらい現実を突きつけられる。けれども、それもまた、彼女たちの原動力に他ならない。

(撮影:末岡洋子)


末岡洋子(すえおか・ようこ):IT系ライター。アットマーク・アイティで記者を務めたのちにフリーランスに。欧州のICT事情に明るく、デジタルと教育、社会などについても関心を持っている。

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