KKR、ベイン、ペルミラ —— 日本企業再生する主役はPE、過去10年で買収額は最高ペース

スシロー、大江戸温泉、すかいらーく、「ベビースター」のおやつカンパニー、パナソニックヘルスケア、大手自動車部品のカルソニックカンセイ......欧米のプライベート・エクイティ(PE:Private Equity)投資会社が日本企業を買収・投資し、再生を促すケースが増えている。

背景に、主軸の事業に集中してグローバル展開を急ピッチで進めながら、ノンコア事業の売却を進める日本企業と、世界各都市の金融・ビジネス界とのパイプが太く、巨大な資産を運用するPEとの相性の良さがある。

2016年、PEを中心とする海外の投資会社による国内企業の買収・投資額は7800億円を超え、過去9年間で最高額となった。M&A助言のレコフによると、今年7月までの金額はすでに5300億円に達しており、昨年の年間総額を上回るペースで増加している。

大江戸温泉

ベインキャピタルは2015年に大江戸温泉ホールディングスを約500億円で買収。

撮影:今村拓馬

M&A(合併・買収)が急増している日本市場に登場するPEの常連は、アメリカのKKR (コールバーグ・クラビス・ロバーツ)、カーライル、ベインキャピタル、そしてヨーロッパのペルミラの4社。過去、東芝や日立、パナソニックなどの大手企業が大型の事業売却を行う度に、PEの名は有力な買収候補として挙がった。

そもそもプライベート・エクイティとは未上場企業の株式という意味で、PE投資会社は一般に未上場企業の株式を取得する。

上場企業を買収する場合は、TOB(Takeover Bid:株式公開買付け:買付期間、株数、価格を告知し、不特定多数の株主から市場外で取得する方法)を用いて株式を取得するケースがある。TOBで買収した企業を非上場化することで、未上場株式を保有する。

2017年のM&A金額上位はSB、武田

2017年、日本企業のM&A金額ランキングを見ると、上位に位置するのは、ソフトバンクや武田薬品工業、セブン&アイ・ホールディングスなどのアメリカや中国、欧州での買収・投資だ。国内需要の鈍い伸びを背景に、日本の大手企業は海外需要の囲い込みに躍起だ。一方、日本国内では、KKRによる日立グループ企業・2社の買収が目立った。いずれも1000億円を超える大型ディールだ。

2017年、日本企業のM&A金額ランキングを見ると、上位に位置するのは、ソフトバンクや武田薬品工業、セブン&アイ・ホールディングスなどのアメリカや中国、欧州での買収・投資だ。

Shutterstock

日立製作所は4月、半導体製造装置などを手がける日立国際電気をKKRと国内の投資会社の日本産業パートナーズ(JIP)に売却すると発表。KKRが日立国際の株式公開買付(TOB)を実質的に行い、会社分割をして、株式を非公開化する。3月には、KKR傘下のHKホールディングスが日立工機に対するTOBを成立させている。日立工機は今後、海外での事業拡大を加速させる。


2017年1−7月・M&A金額トップ10

  1. 武田薬品工業:米・アリアド・ファーマシューティカルズ(買収)約6278億円
  2. ソフトバンクグループ:中国・滴滴出行(Xiaoju Kuaizhi Inc.)(出資拡大)約5500億円
  3. ソフトバンクグループなど:米・フォートレス・インベストメント(買収)約3752億円
  4. セブン&アイ・ホールディングス:米・スノコLP(コンビニ)(事業譲渡)約3660億円
  5. ソフトバンクグループなど:シンガポール・グラブ(Grab)(出資拡大)約2235億円
  6. KKR、日本産業パートナーズ:日立国際電気(買収)約2150億円
  7. キー・セイフティ・システムズ(KSS):タカタ(事業譲渡)約1750億円
  8. KKR:日立工機(買収)約1474億円
  9. 豊田自動織機:オランダ・ファンダランデ(買収)約1400億円
  10. 日立製作所:ルクセンブルク・サルエアUSバーチェイサー(買収)約1357億円

(出所:M&A助言のレコフ)


コメダ珈琲店

MBKパートナーズは2013年、コメダ珈琲店を展開するコメダを買収。2016年、コメダは東京証券取引所に上場した。

撮影:今村拓馬

「過去10年、PEが投資してきた日本企業は多くある。この間、上場した企業もあり、成功例が増えてきた。PEに対する信用・信頼が上がってきていると思う」と語るのは、ペルミラ・ジャパン社長、藤井良太郎氏。

「アメリカのGEやドイツのシーメンスが本業に注力しているのに対し、ノンコア事業を多く持つ日本企業は依然、多く存在する。日本企業は現在、本業に注力するための海外買収を強める一方、ノンコア事業の売却を進めている」

スシローもパナソニックヘルスケアも

ペルミラが買収した回転ずしのスシローグローバルホールディングスは、今年3月に東京証券取引所に上場した。スシローGHDの前身の会社は2003年に東証2部に上場したが、日本のPEであるユニゾン・キャピタルと経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)によって2009年に上場廃止となった。2012年にペルミラが株式を買収した。

スシロー

ペルミラが買収した回転ずしのスシローグローバルホールディングスは、今年3月に東京証券取引所に上場した。

撮影:今村拓馬

ペルミラは2016年、東芝が進めていた東芝メディカルシステムズの売却入札に、コニカミノルタと連合を組んで参加。当時、6000億円を超える大型案件として注目されたが、買収劇はキヤノンが同社を6655億円で収めることで幕を閉じた。

米国の原子力事業における巨額損失で経営が揺らぐ東芝は現在、半導体メモリ事業の売却を進めているが、買い手候補としてベインキャピタルの名が挙がっている。買収金額は2兆円を超えると言われており、売却されれば今年最大の買収案件になるだろう。

藤井氏は、2015年にペルミラに移籍する前の9年間、KKRで勤務した。その間、関与した投資にはパナソニックヘルスケアの買収がある。2014年、KKRはパナソニックヘルスケアを買収。糖尿病患者向けの血糖値測定器を中心に医療機器の開発、製造を行うパナソニックヘルスケアは、2016年1月に糖尿病ケア事業・世界大手のBayer AGから同事業を約10億ユーロ(約1300億円)で買収している。昨年11月には、三井物産がパナソニックヘルスケアの株式22%を541億円で取得した。KKR、Bayer、三井物産とともに、パナソニックヘルスケアはグローバル企業を目指す。

大江戸温泉はベインが買収

外国人旅行客で沸く「お台場大江戸温泉物語」もPEが保有している。出店を増やし、企業価値を高めていこうと、ベインキャピタルは2015年に全国20カ所以上で温泉旅館や温浴施設を運営する大江戸温泉ホールディングスを買収した。将来の株式上場にも期待がかかる。

プライベート・エクイティ投資は成長期や成熟期の企業に対して、大規模な資金を投下することが多い。過半数の株式と経営権を取得することが多く、バイアウト投資と呼ばれることがある。買収の後、中長期的に経営を支援しながら企業価値を上げ、新規株式公開(IPO)や第三者への譲渡(トレードセール)を行うケースが多い。

欧米では、PEが企業を買収、事業再生し、株式を上場をさせるケースは珍しくない。

モンクレール

ヨーロッパのモンクレール(Moncler)の株式を2008年に取得したカーライルは、アジアを中心に海外展開を進め、2013年にイタリア・ミラノ証券取引所に上場させた。

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カーライルは、最高級グースダウンを使用したダウンジャケットで有名なヨーロッパのモンクレール(Moncler)の株式を2008年に取得した後、アジアを中心とする海外展開を進めて2013年にイタリア・ミラノ証券取引所に上場させた。

同じく、カナダの高級ダウンウェアブランドのカナダグースが今年3月にニューヨークとトロント証取に株式上場を果たしたが、同社株の過半数を保有していたのはベインキャピタルだ。

「PEは5年、10年先を考え、ビジネス提案をします。短期的なリターンを追うような投資会社ではない。日本市場で、少しずつPEの役割が認知されてきたと思います」

と藤井氏は言う。

「先進諸国の金融緩和策で、市場には大量の資金がある。人口減少や高齢化で国内需要のさらなる先細りが懸念される中、日本企業の経営者がPEに求めるものの一つは、我々のグローバルネットワークを生かした長期的なビジネス提案だと思っています」

ペルミラは今後、日本市場で数千億円規模の投資・買収を検討している。


KKR (Kohlberg Kravis Roberts & Co.) 1976年にニューヨークで創業。ヘンリー・クラビスとジョージ・ロバーツが「Joe and Rose」レストランでの夕食時にKKRの創業を決めた。ニューヨーク証券取引所に上場している。 運用資産:約1311億ドル

<主な投資先>

  • 日立国際電気
  • 日立工機
  • パナソニックヘルスケア

Bain Capital(ベインキャピタル) 1984年、ボストンに設立。 世界に14拠点 運用資産:750億ドル

<主な投資先

  • 大江戸温泉ホールディングス
  • 雪国まいたけ
  • マクロミル
  • すかいらーく
  • ドミノ・ピザジャパン

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Business Insider Japan

The Carlyle Group(カーライル)1987年、ワシントンD.C.で創業。 世界に36拠点 運用資産:1780億ドル

<主な投資先>

  • おやつカンパニー
  • GGCグループ(もやし製造・販売)
  • チムニー(消費財・小売)

Permira(ペルミラ)1985年欧州で設立。 世界に14拠点。 運用資産:320億ユーロ(約4兆2000億円)

<主な投資先>

  • スシローグローバルホールディングス
  • ジョンマスターオーガニック(ナチュラルビューティ・ブランド)
  • アリスタライフサイエンス(農薬事業)

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「PEは5年、10年先を考え、ビジネス提案をします。短期的なリターンを追うような投資会社ではない。日本市場で、少しずつPEの役割が認知されてきたと思います」とペルミラ・ジャパン社長の藤井氏。

Business Insider Japan

MBK Partners(MBK)2005年に設立。中国、日本、韓国を中心に投資・買収を行っている。運用資産:146億ドル

<主な投資先>

  • コメダ(コメダ珈琲店を展開)
  • TASAKI(宝石加工)
  • アコーディアゴルフ


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