世界の加入者数が1億人を超え、増収増益で勢いに乗るNetflix(ネットフリックス)は、アニメ作品を中心としたコンテンツを拡大していく。日本国内のアニメファンを取り込むだけでなく、世界各国で増加が期待されるアニメ視聴の需要を捉えていく。
アニメ最大の市場である日本に加えて、「南アメリカやイタリア、フランス、フィリピン、台湾でアニメは人気だ」と話すピーターズCPO。
Netflixは現在、世界の50人以上のプロデューサーと共同でアニメ作品の制作を進めている。最高プロダクト責任者(Chief Product Officer)で元・Netflix Japanの代表取締役社長のグレッグ・ピーターズ(Greg Peters)氏が8月2日、都内で開かれたイベント「Netflix Anime Slate 2017」で明らかにした。Netflixの加入者の中で、アニメの視聴者の90%以上は日本国外。一方、日本のNetflixユーザーの50%以上がアニメを見ていると、ピーターズ氏は語った。
Netflixの加入者は4月〜6月期で、アメリカ国内が5192万人、海外(アメリカ国外)が5203万人で、全世界で合計1億395万人となった。同社が発表した直近の決算報告書によると、第2四半期の売上高は27億8500万ドル(約3080億円)で、前年同期から30%以上増加。今年の第1四半期に、同社の海外の加入者数がアメリカを上回り、今後収益の拡大を図る上で、海外市場における動画の嗜好動向に合わせたローカル・コンテンツの拡充が大きな鍵になる。
グレッグ・ピーターズ氏は、2015年にNetflix Japanの代表取締役に抜擢され、日本におけるサービスの開始を牽引。今年7月に、最高プロダクト責任者に昇進した。
ピーターズ氏は「アニメ最大の市場である日本に加えて、南アメリカやイタリア、フランス、フィリピン、台湾でアニメは人気だ」とした上で、動画エンターテインメントにおけるアニメの重要度は増していると強調した。同氏は、2015年にNetflix Japanの代表取締役に抜擢され、日本におけるサービスの開始を牽引。今年7月に、最高プロダクト責任者に昇進した。
時間のコントロール、個別化、作品の質がカギ
順風満帆に見えるNetflixだが、世界の動画エンターテインメントの市場競争は激しさを増す。Netflixによると、全世界で1日にYouTubeが見られている時間は合計10億時間以上。それに対して、Netflixの加入者の視聴時間の合計は、1週間で約10億時間だという。Netflixが7月に発表した決算報告書によると、同社は過去10年でアメリカにおける加入者をゼロから5000万人まで拡大したが、衛星・ケーブルテレビ放送局のHBOも引き続き視聴者を増加させているとしている。
2017年8月2日に東京国際フォーラムで開かれたイベント「Netflix Anime Slate 2017」
Netflixが展開する有料課金動画(SVOD:Subscription Video on Demand)や、イギリスのBBCや日本のNHKなどの既存のテレビネットワークに加えて、アマゾンなどの大手テック企業はオリジナル・コンテンツの制作に投資を拡大していると、同社は報告書で述べ、現在のグローバル市場におけるし烈な競争を強調した。
「エンターテインメントにおいて、我々は大きな変化の真っ只中にあると思います。例えば、消費者の多くは、Binge Watching(シリーズもののテレビ番組などを一気に観ること)をする傾向にあります。消費者自らがエンターテインメントの時間をコントロールできること、コンテンツを各自がパーソナライズ(個別化)できること、そして品質の高いエンターテインメントを経験できること。これら全てが、今の消費者が求めているものです」とピーターズ氏は加えた。
時価総額は約790億ドル(約8兆7000億円)、世界最大のオンラインストリーミング・サービスを提供するNetflixは1997年の創業以来、多くのオリジナルコンテンツを制作してきた。ドラマシリーズの「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は、オンラインストリーミング・サービスでは初のプライム・エミー賞を受賞した。日本初のオリジナルコンテンツでは、「テラスハウス アロハステート」や「火花」などが知られている。
(撮影:今村拓馬)