海外旅行のスマホ料金を安く済ませる!国際ローミング最新事情[ドコモ/au/SB/格安SIM対応]

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今年の夏は、海外旅行者も増加する見込み。写真は1月に訪れた米・ラスベガス。

昨年から始まった8月11日の「山の日」、これとお盆休みを合わせた長期休暇は今年、最大で10連休になる。JTBは夏休みの海外旅行者数を、前年対比、9万人増の273万人と予想している。海外旅行や海外出張先では、スマートフォンが普段以上に活躍する。翻訳アプリに、通貨換算アプリに、ホテル予約アプリにと、海外旅行に役立つアプリも多い。

海外の渡航先で日本と同じように自分のスマホを使う場合、いくつか方法がある。

ドコモ、KDDI、ソフトバンクという大手キャリアの場合は、「国際ローミング」機能を使う(格安SIMでは国際ローミングは使えないケースがほとんど)

日本の空港で現地のネットワークを利用できる「Wi-Fiルーター」をレンタルする

・現地の通信事業者が販売している「プリペイドのSIMカード」を買って、SIMフリー端末に挿し代える(キャリア端末の場合は、出国前にSIMフリー化の手続きをしておく必要がある)

こういった方法が一般的だ。簡単にまとめると、手間は国際ローミング>レンタルWi-Fi>現地SIMの順に少なくなり、一方でかかるコストはおおむねその逆になっている。

数日の出張におすすめ、「国際ローミングの使い方」

データ通信の国際ローミングを有効にするには、iPhoneなら設定の「モバイルデータ通信」にある、「通信のオプション」から「ローミング」に入り、「データローミング」をオンにするだけ。

Androidは機種ごとにメニューの構成が若干異なるが、たとえば設定から「接続」を選び、「モバイルネットワーク」の中にある「データローミング」をオンにする、といったように設定する。

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iPhone、Androidともに、通信の設定を開き、「データローミング」をオンにするだけでOK

手軽な半面、コストが割高な国際ローミングだが、実は昨年あたりから徐々に手ごろな料金体系に変わり始めている。一部のキャリアや国・地域では、以前よりずっと割安に済ませられるようになり、実用的になっているのだ。

海外に強いau:980円で使える「世界データ定額」が便利

なかでもインパクトが大きかったのは、auが始めた「世界データ定額」。これまで1日最大2980円かかっていた国際ローミングのデータ通信サービスを、「24時間980円」に値下げしたところに特徴がある。

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auは、昨年、24時間980円の世界データ定額を導入。

カバー範囲の広さで定評のあるau。世界データ定額は、単位が「24時間」だ。これは、文字通りユーザーが利用開始を指定したときから、丸々24時間通信できるという意味。従来のドコモ、au、ソフトバンクが導入している2段階制の海外データローミングの場合は、日本時間が起点になって日付が変わると課金されてしまう仕組みだった。この課金単位を変え、使い勝手を上げたというわけだ。

24時間方式であれば、利用開始のタイミングは自分で決められる。世界データ定額開始前にブラウザでネットにアクセスすると自動で専用ページに遷移するので、そこでボタンを押すだけだ。アプリからも、同様の設定ができる。

価格は、従来の約3分の1の980円という安さだ。しかも、auの場合は「au STAR」という無料のロイヤリティプログラムに加入していると、1日分が無料になる。最大10連休という人もいる今年の夏期休暇シーズンをすべて海外で過ごした場合、世界データ定額の通常料金は9800円になるが、ここから980円が引かれて、8820円で済む。

一方で、これまでの海外データローミングは、文字通りの使い放題だったが、「世界データ定額」では契約しているデータプランから容量が引かれる。小容量のデータプランを使っている場合、使い過ぎには注意した方がいいだろう。

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au STARに加入していると、月1回ぶんの世界データ定額が無料になる。

どの国・地域に行くかにもよるが、現地のSIMカードを買うコストや手間を考えると、10日間で9000円を切る金額でデータ通信が使えるなら、利用する価値は高い。

例えば、筆者が今年1月に米・ラスベガスで買ったAT&TのプリペイドSIMカードは、SIMカード代として10ドル(約1114円、7月27日現在)がかかり、1日利用するごとに、電話が2ドル、100MBのデータ通信代が1ドル必要にだった。100MBを超えると、もう1ドル(約111円)払って、追加の100MBを購入できる仕組みだ。スマホだけで大体200〜300MB使っていたため、筆者の場合、10ドルに加えて、1日あたり4〜5ドル(約445〜557円)払った計算だ。

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米国では、AT&TでSIMカードを購入した

仮に10日分とすると、最大で60ドル(約6682円)程度かかる。先に挙げたauの世界データ定額と、金額差は2000円強。

そもそも現地のSIMカードを利用するには、まずSIMロックがかかっていない端末が必要になる。希望の現地キャリアのネットワークが利用できるか、端末と現地キャリアの周波数状況もあらかじめ確認しておく必要がある。買いに行く時間だけでない、これらの手間を考えると、これを2000円程度の差額で解消できるのは大きなメリットだ。

より長く滞在するときは、現地でSIMカードを買った方が割安になるケースが増えてくる。上で挙げた例はアメリカでの話だが、台湾のように、空港で割安かつデータ容量の制限のない使えるSIMカードを販売している国や地域もあるため、国際ローミングが必ずしも最良なわけではない。

また、意外と知られていないが、従来どおりの最大2980円の国際データローミングより、世界データ定額の方が、対象となる国や地域が少ない。10月10日までは、キャンペーンで131の国・地域が増えているが、通常は32の国・地域となるため、使いたい旅先で、世界データ定額が使えるのかどうかも確認しておきたい。

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台湾では、3日で300元(約1106円)と、旅行者向けのプリペイドSIMが格安。しかもデータ通信が無制限。

ドコモ:980円で対象地域ならデータ容量無制限「海外1dayパケ」

海外1dayパケ

24時間980円という料金で話題を集めたauの世界データ定額だが、実は、同じ単位、金額でサービスを始めたのは、ドコモの方が先だった。ドコモは、2013年に「海外1dayパケ」と呼ばれる海外データローミングを導入。最大2980円かかる「海外パケ・ホーダイ」と併存しており、どちらか一方を選択することができる。

ドコモの「海外1dayパケ」は、現在9月30日までのキャンペーンとして、対象となる一部の国・地域において、容量の制限が完全に取り払われている。24時間980円で、完全に使い放題になのだ。しかもこれは、単なる一時的なキャンペーンではなさそうだ。

ドコモの吉澤和弘社長は、筆者の取材に答える形で、海外データローミングの仕組みを見直すことを検討していると語っている。キャンペーンは、それまでの"中継ぎ"だ。システムの改修が間に合えば、10月からはau同様、契約しているデータ容量から引かれる形になるだろう。いずれにしても、30MBという制限が撤廃される可能性は極めて高い。

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ドコモにも、24時間980円の「海外1dayパケ」がある。いまのところ使い放題、つまり海外でもPCなどを繋いでローミングでデータ通信を大量に使うようなビジネストリップ用途には非常に向いている。

ただし、キャンペーンの提供対象外の国では、24時間で使えるデータ容量に制限がある。これがウィークポイントで、30MBと非常に少なく、使い勝手に難がある。筆者がサービス開始直後に試してみた際は、海外の空港に着陸した飛行機内でデータローミングをオンにしたところ、手荷物を受け取る前に30MBを使い切ってしまったことがある(アプリの更新をしてしまったのが原因)。旅先がキャンペーンの提供対象地域かどうかはしっかりと確認しておきたい。

海外1dayパケは、利用開始をあらかじめ設定する必要がある。Androidの場合は、自動でインストールされる「海外1day開始」というアプリで「利用開始ボタン」を押すだけ。

iPhoneの場合はやや複雑で、標準の「電話」アプリを開き、「*135*1#」というコードをテンキーから入力する。どちらも同じように電話を使ったコードを送っているだけだが、Androidはそれをアプリで自動化しているというわけだ。

ソフトバンク:iPhoneをアメリカで使うなら安心な「アメリカ放題」

アメリカ放題

他社に比べて海外ローミングサービスが見劣りするソフトバンクだが、アメリカだけはSprintのおかげで、国内と同等の料金を実現。

大手3キャリアの中で、ソフトバンクだけは唯一、24時間980円の海外データローミングを提供していない。最大2980円の「海外パケットし放題」を使わざるを得ず、他社に大きく水をあけられている。また、「海外パケットし放題」は、現地で接続できるキャリアが限られており、非対応のキャリアにつなぐと、データ通信代が青天井になるので注意したい。

ただし(ソフトバンクユーザーの多数を占めるだろう)iPhone、iPadをアメリカで使う場合だけは例外だ。グループ会社に名を連ねるアメリカの通信キャリアのSprintとの協力で、「アメリカ放題」というサービスが便利だ。

これはiPhone 6、6 Plus以降のiPhoneや、iPadなら対応する。アメリカ放題は厳密に言うと国際ローミングとは異なり、簡単に言えば、国内でソフトバンクを使うように、Sprintの回線網を使えるサービスだ。技術的には、ソフトバンクのSIMカードを、Sprintと見なして使えるようにしたもの。日本とアメリカへの音声通話が無料になり、データ通信も契約しているデータプランの範囲内で利用できる。

アメリカ放題は本来、オプションサービスとして月に980円かかり、申し込みも必要だが、キャンペーンで現在は無料かつ申し込み不要で利用できる。キャンペーンは終了期間が定められていないため、すぐに有料化することはないだろう。旅先がアメリカだった場合限定だが、競合2社と比べても、現地SIMを買うケースと比べても、お得と言える。ソフトバンクユーザーなら、これを使わない手はない。

格安SIMを使っている場合:何らかの通信回線手配が必要

IIJmioの海外トラベルSIM

IIJmioの海外トラベルSIM。ローミングとはまったく違う別のSIMを手配する形だが、日本から、日本語で準備していけるのが強み。500MBで3850円。

格安SIM(MVNO)の通信回線を利用している人は、国際ローミングでは注意が必要だ。MVNOは、そのほとんどが、海外データローミングに非対応だからだ。

IIJの法人向けサービスのように、ドコモの国際データローミングをそのまま借り、ユーザーに提供しているケースもあるが、これは例外。基本的には、海外に持って行くと、音声通話しかできなくなってしまう。MVNOのユーザーは、現地SIMカードを買ったり、事前に空港でWi-Fiルーターを借りておいたりと、何らかの対策が必要になる。

また、IIJmioや楽天モバイル、mineoなど、一部のMVNOは、海外のローミングキャリアからも回線を借り、海外用SIMカードを提供していたりもする。ローミングを専門とするキャリアの回線を使っているため、現地で買うSIMカードに比べると料金は割高になるが、日本で用意しておけるのはメリット。現地でSIMカードを買うのが面倒だと思ったり、語学力に不安があったりする人は、これに頼ってもいいだろう。


石野純也:ケータイジャーナリスト。出版社の雑誌編集部勤務を経て独立後、フリーランスジャーナリストとして執筆活動を行う。国内外のスマートフォン事情に精通している。

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