- ソフトバンクは2016年10月、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」設立を発表した 。
- これまでにエヌビディア(NVIDIA)、AR/VR開発のImprobable、半導体設計大手ARMなどに出資、あるいは買収。
- ここ数カ月間で、さまざまな規模の企業に数十億ドルを出資している。
- 「常識はずれ」とベンチャーキャピタリストの多くは考えている。
ヨーロッパ中のベンチャーキャピタリストが、ソフトバンクのテック分野への投資の規模と頻度に「困惑」し「混乱」している。
ソフトバンクは2016年10月、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の設立を発表し、世界中のベンチャーキャピタリストに衝撃を与えた。テクノロジー投資ファンドとして過去最大のファンドだ。
「ほとんどの投資家が、常識はずれと考えている」とMangrove Capital PartnersのCEO、マーク・トゥシュチ(Mark Tluszcz)氏はBusiness Insiderに語った。同氏はスカイプの初期に200万ドル出資し、2億ドルの利益をあげた人物だ。
同ファンドの目標については、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏が発足時に次のように述べている。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立により、世界中のテクノロジー企業への出資をさらに推し進めることができる。本ファンドは、今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレイヤーとなるだろう。我々は、出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させていく」
ソフトバンクはこのところ、テック分野における大規模な投資や買収を連日のように発表している。
2016年7月、イギリスの半導体設計大手ARMを240億ポンドで買収。2017年5月、ロンドンを拠点とするインプロバブル(Improbable)に5億200万ドルを出資、インプロバブルは非常に高度な仮想空間を作り出すVRスタートアップだ。さらに同月、半導体大手エヌビディアに40億ドルを出資したと報じられた。7月には屋内農業のスタートアップ、Plentyへの2億ドルの出資を主導した。
有望なスタートアップには、もう投資できない
写真左から、インプロバブルのCOOペーター・リプカ氏、CEOハーマン・ナルラ氏、CTOロブ・ホワイトヘッド氏。
Improbable
ルクセンブルクを拠点とし、自身もアーリーステージへの投資家として同ファンドを歓迎している前述のトゥシュチ氏によると、世界有数の、複数の投資ファンドが、スタートアップの投資ラウンドに手が出せなくなることを懸念している。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドほどの資金を持たないため、スタートアップに継続的に出資できないからだ。つまり、有望なスタートアップには、同ファンドしか出資できないことになる。
「もはや、一部の投資ファンドは市場で、従来のようなポジションを保つことはできない。出資額は高騰しており、彼らはぐちばかり述べている」とトゥシュチ氏は語った。
2人のベンチャーキャピタリストが匿名で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドのせいで「困惑」し「混乱」していると語った。うち1人は「テック分野のファンドとは思えない」と述べた。
急成長するスタートアップに対して、ソフトバンクは従来よりもはるかに早く成長できる方法を提供している。スタートアップは今や、シリーズAラウンドから、一気にシリーズDやEラウンドに進んで、効率的に資金を調達できる。そうトゥシュチ氏は語った。
次のターゲットはDeliverooやSlackか
ソフトバンクによる巨額の出資は、ほかにも進行中だ。報道によると、フードデリバリサービスのデリバルー(Deliveroo)や企業向けメッセージングプラットフォームのスラック(Slack)が次の出資先として検討されている。
GVのゼネラルパートナー、トム・ハルム氏。
Flickr/PICNIC Network
「評価すべき点は、非常に大規模な出資を行っていること、また公開企業にも出資していること。とても興味深い」とGV(旧Google Ventures)のゼネラルパートナー、トム・ハルム(Tom Hulme)氏は述べた。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンドのアプローチは、従来のやり方とは全く異なる。先行きを見守るのが楽しみだ。私は楽観的に受け止めていて、今後の展開にわくわくしている。最終的には全体にとって良いことになると思う」
Entrepreneur FirstのCEOマット・クリフォード(Matt Clifford)氏も、ソフトバンクの取り組みを歓迎した。「最先端テクノロジー分野に強い信念と、大きな資金を持つ投資家がいることは良いことだし、胸が躍る」と同氏。
「起業にはお金がかかる。だが、規模拡大にも同じくらいお金がかかる。だから野心的なスタートアップが、誰かに買収されずに独立した大企業になるには、多額の資本が必要だ。その意味で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの存在は、起業家がどこまでも野心的であることを可能にしてくれると期待している」
ソフトバンクはコメントを拒否した。
sources: Improbable 、 Flickr/PICNIC Network
(翻訳:Conyac)