「隅田川沿い」が東京のブルックリンになる —— クラフトの聖地に集うミレニアル世代

今年8月12日から15日は、江戸3大祭りの1つであり、今年が3年に1度の本祭りでもある富岡八幡宮(東京都江東区)の「深川八幡祭り」だ。13日(日)には、総勢53基のお神輿が隅田川にかかる清洲橋と永代橋を渡って街を練り歩く「神輿連合渡御(とぎょ)」が行われた。

ところで、隅田川といえば江戸の時代から東京を代表する一級河川だが、いま、「隅田川沿い」が東京随一のおしゃれスポットとなっているのを知っているだろうか?

清澄1丁目にあるリバーサイドホテル「LYURO 東京清澄」。後ろに見えるのは清洲橋。

清澄1丁目にあるリバーサイドホテル「LYURO 東京清澄」。後ろに見えるのは清洲橋。

東京都は、2020年までに東京の水辺活用に力を入れる。東京オリンピックまでに世界的な「水の都」になることが目的だ。

その中の一つに、舟運を身近な観光・交通手段とするため昨年から実施されている東京舟旅(東京舟運社会実験クルーズ2017)」と呼ばれる社会実験がある。隅田川はこれから、どのように変わっていくのか。

東京を水の都へ

東京舟旅社会実験航路

出典:東京都

「東京舟旅(東京舟運社会実験クルーズ2017)」は 現在、パノラマ周遊クルーズなど5つのルートを運行 。値段も500円からと手頃。

昨年、 都の公募プロジェクトに応じた民間企業12社の コンソーシアム「水都創造パートナーズ」が運営を担う。

水都創造パートナーズの代表理事、夏目守康さんによると、将来的には舟を通勤の足にしたり、シェアバイクと連携させ、隅田川を中心とした観光開発も視野に入れている。

東京都が取り組んでいる満員電車解消のひとつの手段としても「舟での通勤」は期待できる。

東京駅にもすぐに出られるし、都営浅草線を使えば成田空港へも羽田空港へも一本で行ける。交通の便が良く、江戸の歴史や文化も体験できるとあって、外国人観光客もここ数年でぐっと増えた。それに伴い、おしゃれなカフェやホステルも次々にできてきている。

そんな変わりゆく隅田川沿岸地域を、スカイツリーのふもとからクルーズしてみよう。

墨田区のランドマークである東京スカイツリー。隣にはアサヒビールタワーと金のオブジェが特徴的なスーパードライホールが並ぶ。

墨田区のランドマークである東京スカイツリー。隣にはアサヒビールタワーと金のオブジェが特徴的なスーパードライホールが並ぶ。



スカイツリーのふもとには2017年5月にオープンした「アシックスコネクショントウキョウ(ASICS CONNECTION TOKYO)」がある。カフェやロッカー、シャワールームが併設。ランナーのステーションとなっている。

スカイツリーのふもとには2017年5月にオープンした「アシックスコネクショントウキョウ(ASICS CONNECTION TOKYO)」がある。カフェやロッカー、シャワールームが併設。ランナーのステーションとなっている。


川沿いのランニングルートも整備され、クルーズ船を横目に隅田川ランを楽しめる。

隅田川沿いのランニングルート


両国と天王洲をつなぐ「隅田川縦断クルーズ」は大人500円〜、小人250円〜。

隅田川縦断クルーズ

※隅田川クルーズのイメージ、写真の船は東京都公園協会が運行する東京水辺ラインの「こすもす」。



「東京舟旅」以外のクルーズ船も盛んだ。「TOKYO CRUISE(東京都観光汽船)」が運営する水上バスの1つ「ホタルナ」は「銀河鉄道999」の作者、松本零士氏がデザインした。

水上バスの1つ「ホタルナ」


リバーサイドカフェ、ルーフトップバー、コワーキングオフィスなどが集まった、蔵前にある複合商業施設「MIRROR」。隅田川を一望でき、周辺のクラフトショップへのアクセスもいい。

蔵前にある複合商業施設「MIRROR」


2017年4月にオープンしたリバーサイドホテル「LYURO 東京清澄」。クラフトビールやグリル料理が楽しめる「かわてらす」は京都の川床をモデルに、都と事業者が協力して設置した。

2017年4月にオープンしたリバーサイドホテル「LYURO 東京清澄」


タワーマンションが立ち並ぶ勝どきの船着場。ここから有明、お台場を巡る「東京パノラマ周遊クルーズ」が出ている。8月中の週末(金・土・日)は毎週運行。

勝どきの船着場


夜になると、こんな景色も楽しめる。写真は浅草橋にある古民家カフェ・ギャラリー「ルーサイト・ギャラリー」。

古民家カフェ・ギャラリー「ルーサイト・ギャラリー」

写真:西山里緒


上:m+(エムピウ) 下:店主の村上雄一郎さん。

上:m+(エムピウ) 下:店主の村上雄一郎さん。2004年に設立した、デザイナーやクリエイターを支援する施設「台東デザイナーズビレッジ」の一期生。

写真:西山里緒

東京五輪に向け、都市開発が進む隅田川沿岸。

一方では、地元の職人には冷静な一面もある

蔵前駅ほど近くにある革製品店、m+(エムピウ)の店主、村上雄一郎さんは10年ほど前から蔵前に店を構える。

御徒町-蔵前-浅草橋にかけての地域、通称「徒蔵(カチクラ)」エリアはもともと、ものづくりの職人が集まる問屋街として知られていた。日曜にはドトールも閉まっているような街だった蔵前の変化が始まったのは、5、6年前から。自分で作ったものを売ることができるネットショッピングアプリが普及し、革製品やビーズ製品、焼き物などを自分で作ってみたいという人が急増。カチクラは一躍「クラフトショップの聖地」となった。

東京オリンピック? むしろ反対派の方が多いかもしれないね。一時ブームとなって忘れられるよりも、長くひいきにしてくれるお客さんを大切にしたいねえ」(村上さん)

クラフト中心のスモールビジネスの聖地と言えば、ニューヨークのブルックリンが有名だ。世界的なグローバルカンパニーとはあえて違う戦略、「手作り感」「ご近所感」を大切にすることでむしろ活況を呈している。


一般社団法人水都創造パートナーズ代表理事、夏目守康さん

一般社団法人水都創造パートナーズ代表理事、夏目守康さん。

写真:西山里緒

東京は、電車やバス以外に、川を使った水上交通も使える都市だ。たとえば、お台場や日本橋、さらには皇居の側を通って飯田橋の方まで舟で移動することもできる。

いまは日本橋などの経路の頭上を覆う首都高速も、東京五輪後には地下に移転させる計画がある。実現するのは30〜40年後だろうが、これが実現すれば、水路の移動ももっと快適になることだろう。

「オリンピックの先まで見据えて、江戸の歴史や文化というエリアの魅力を最大限生かしたプロジェクトにしたいですね」(夏目さん)

単なるハコモノ開発ではなく、下町の文化を再発見できるような、暮らしに合わせた開発へ。そうなれば、隅田川から東は東京のブルックリンになれるのかもしれない。

(写真:今村拓馬)

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