中国のテック業界は、アメリカとは別世界。
Bobby Yip/Reuters
中国ではグーグル、Facebook、Netflixなどの主要なウェブサイトは利用できないか、存在感がない。検閲と監視を怠らない中国政府によってブロックされているからだ。
そしてインターネット企業以外の欧米のテック企業も、中国市場での成長に苦労している。中国では自国のサービスが好まれる傾向があり、また消費者の性向がアメリカとはしばしば異なるためだ。
ウーバーは撤退、アップルは失速。 Netflixはサービスを開始できず、アマゾンは揺れ動いている。グーグルとYouTubeは中国に存在さえしていない。結果、これら大手と同様のサービスを中国で提供し、巨大市場を利用して成長する中国テック企業が台頭した。
だがその規模にかかわらず、これら「巨人」の多くは中国の外ではそれほど知られていない。以下に、注目すべき中国のテック企業11社を、アメリカの類似企業になぞらえつつ紹介する。
バイドゥ(百度)は、中国版グーグル。
Damir Sagolj/Reuters
バイドゥの検索エンジンは、中国で最も人気のあるサイト。同社はマップやクラウドストレージなどいくつかの付随サービスも運営している。グーグル発のWaymoと同様に自動運転車にも取り組んでおり、さらにAI(人工知能)事業も強化中。
アップルの類似企業はない。中国のスマートフォンユーザーは、アメリカのユーザーほどブランドロイヤリティーが高くない。だが同国最大のメーカーとしては、ファーウェイ(華為技術)を挙げられるかもしれない。
「HUAWEI Mate 9」は実は優れたスマートフォン。だがアメリカでは、ファーウェイが主要携帯キャリアと契約していないため、シェアはわずか。
Business Insider/Jeff Dunn
同社の「HUAWEI P10」「HUAWEI Mate 9」は上位機種だが、デバイスの価格帯が広範囲にわたる点で、サムスンなどの企業により近い。
シャオミ(小米)についても同じことが言える。同社はさまざまな高品質スマホを生産し、ユーザーを獲得してきた。
シャオミ創業者兼CEO、レイ・ジュン(雷軍)氏。
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シャオミのデバイスの多くはアップル製品に似ている。ほぼベゼルフリーの「Mi Mix」などは、革新的なデバイスも展開している。それでも、シャオミブランドの機器はフィットネストラッカーから炊飯器まで広範囲にわたることから、アップルよりもサムスンに近い。
テンセント(騰訊)は中国のFacebook。中国のインターネット全体に影響力を誇る企業だ。
中国におけるテンセントのアプリ「WeChat」の重要性は言うまでもない。
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テンセントは、メッセージングアプリとソーシャルメディアプラットフォームが最も有名だ。中国最大のソーシャルサービスWeChat(微信)の月間利用者数は10億人近い。WeChatに相当するものは、欧米にはない。いわばFacebook(アプリ)、iMessage、Google News、個人間送金サービスVenmo、チャットツールSlackを一つにしたようなモンスターアプリだ。
アマゾンに似た中国企業は2社ある。まずは、アリババ。
アリババ創業者ジャック・マー(馬雲)氏は、中国テック界で最も有名な経営者の一人だ。
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アリババのサービスは、電子商取引(EC)をはるかに超えて拡大している。例えばオンライン決済サービスのアリペイ(支付宝)は巨大な規模を持つ。それでも同社の主要基盤は、オンラインショッピングサイトだ。
それらには中国最大の消費者向け小売サイトTmall.com(天猫)、中国版eBayのTaobao(淘宝)などが含まれる。そして、アメリカでアマゾンが大きなシェアを持つもう一つの分野、大規模クラウドビジネスでもアリババは有名だ。
JD.com(京東)も注目に値する。アマゾンと興味深い共通点を持つ企業だ。
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アリババほど強大ではないが、JD.comもEC業界の主要企業だ。アリババは売り手が買い手に直接販売できるマーケットプレイスの運営に注力しているが、JD.comはプラットフォームをより厳格に管理しており、有名ブランドグッズを消費者に直接販売・配送している。アマゾンと同様、ドローン宅配にも投資している。
ディディチューシン(滴滴出行)は、中国版ウーバー(Uber)。ほぼ同じ規模を誇る。
北京の本社にあるディディチューシンのマスコット。
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昨年、激しい価格競争の末にウーバーを打ち負かしたディディチューシンは、最終的にウーバー中国部門を買収。2016年5月、アップルから10億ドル(約1100億円)の出資を受けたことはよく知られている。
Twitterに一番近い中国のサービスは、シナ・ウェイボー(新浪微博)。
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メディア大手シナ(新浪)とアリババが運営している同サービスは、FacebookとTwitterを足して2で割ったようなもの。ユーザーは簡素な「マイクロブログ」を作成し、さまざまな著名人をフォローできる。 Twitterとは異なり、急成長中。
1つの会社がSpotify、Pandora、Apple Musicを運営していたとしたら。テンセントによる中国音楽ストリーミングサービスはそんな存在だ。
中国の音楽ストリーミングサービス、QQ Musicのホームページ。
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テンセントは、2016年に自社の音楽ストリーミングサービスQQ Musicを競合サービスの クーゴウ (酷狗)、クーオー(酷我)と合併し、現在中国の音楽ストリーミング市場の70%以上を握っていると言われる。もちろんこれらのサービスを活用し、ユーザーを同社の他のプラットフォームに誘導している。
タンタン(探探)は中国版Tinder。同国最大のデートアプリだ。
Tantan/iTunes
創業3年。タンタンはTinderでお馴染みのインターフェースを踏襲している。デート相手を見つけるために、ランダムに表示される顔写真を左右にスワイプするのだ。同社によると、ユーザーの男女比は6:4。おそらくこの種のものはだいたい同じ比率になるようだ。
誤解のないように言うと、これらのサイトや企業は使いやすく役に立つサービスを提供しているから、人気を集めている。だが中国当局によるインターネット検閲に従っていることも、大きい。「グレート・ファイアウォール」は多くの現地企業の急成長を支えてきたが、開かれたウェブを待望する中国の消費者は、いまだに置いてけぼりのままだ。
中国の国家主席、習近平氏。
Reuters/Jason Lee
source: Tantan/iTunes
[原文:China’s Silicon Valley: Meet the Chinese counterparts to 11 of the most popular US tech companies]
(翻訳:本田直子)