Sponsored

グッチやティファニー、アスプレイがコラボする“すごい”日本の伝統企業 —— 山梨・印傳屋でその秘密を見た

アスプレイの「167」ハンドバッグ ブラック・オン・ブラック クロスハッチ

最新のコラボ製品は英国王室御用達ブランド、アスプレイの「167」ハンドバッグ ブラック・オン・ブラック クロスハッチ。美しい模様と高品質な革は印傳屋の職人たちの手仕事によって生み出された。

16世紀以来の歴史を持つ、鹿革に漆で模様をつける伝統工芸「印伝」(いんでん)。その伝統の技術と製法を「甲州印伝」として今も守り続けるのが、1582年創業の伝統企業「印傳屋 上原勇七」(以下印傳屋)だ。

印傳屋は、海外の高級ブランドとの特異なコラボ実績を持つ日本企業として、業界では知る人ぞ知る存在だ。これまで共同制作に取り組んだ海外ブランドは、ティファニー、グッチ。そして10月には日本企業で初めて、英国王室御用達の老舗ブランド、アスプレイのクリエーション・コラボレーション・パートナーに選定された。

なぜ山梨の伝統企業が、文化も言葉も、そして企業規模も違う海外ブランドとのコラボを成功させられるのか? 世界屈指の「目利き」たちを納得させたモノづくりとは? その秘密をさぐるため、山梨県甲府市にある印傳屋本社の工房を訪れた。

印傳屋本社

山梨県甲府市にある印傳屋本社。1Fにはショールームも設けられている。

30年前から続くティファニーとのコラボ

印傳屋と海外ブランドとのコラボは、約30年前に始まった。世界的に有名なティファニーの担当者を知人を介して紹介されたことがきっかけだった。印傳屋でコラボ事業を担当する創業家出身の上原伊三男・専務取締役は語る。

「ティファニーの担当者が着目したのは、鹿革と漆(うるし)という印伝の素材でした。漆は英語で“japan”と呼ばれる、日本伝統の素材。特に“黒”の漆は、時が経つほどに深みのある艶に変わります。また鹿革は柔らかさや軽さ、しなやかさという魅力がある。それが、彼らの心を捉えたのだと思います」

ティファニーと共同で開始した初のコラボ製品作りは、予想通り平坦な道ではなかった。多くの試作とフィードバックを繰り返して、完成まで漕ぎ着けた。

「彼らの素材とエコに対する徹底したこだわりには共感しましたし、学ぶところが大きかった。海外ブランドが求める高い要求への挑戦が、職人たちの魂を鼓舞していることも肌身に感じました」

ティファニーとのコラボを成功させたことで、印傳屋の名前は伝統企業の枠を越えて、業界で知れ渡るようになった。2000年前後からは国内企業とのコラボも始めた。そして2014年、今度はイタリアの高級ブランド「グッチ」から声がかかった。厳しい技術的要求をクリアするために試行錯誤を繰り返してできたコラボ製品は発売後1週間ほどで完売した。

海外企業からリスペクトを得るための努力

印傳屋の上原伊三男・専務取締役

印傳屋の上原伊三男・専務取締役。

日本企業は、社外とのコラボレーションが苦手だとよく言われる。印傳屋は、どうやって世界ブランドとの信頼関係を構築してきたのか?

「グッチ社からコラボの提案が届いたときは、率直なところ驚きました。どう向き合っていくべきか、内部で話し合い悩みました。しかし、対等な立場で共同作業を進めると決めました。コラボにあたってはこれが大事なことです。

我々が決めたのは、『相手がどんなに大きな世界ブランドだとしても、伝統企業のプライドを貫く』ということです。ですから、最初に先方には『印傳屋を素材提供するだけの下請けだとお考えならば、このお話はお受けできません』と申し上げました。後に先方から聞いたことですが、このときの伝統企業としての印傳屋の姿勢に共感した、と言っていただけました。両社の最初の向き合い方が、互いにリスペクトするうえで非常に重要なことだったと実感しています」

印傳屋ショールーム

印傳屋本社1Fのショールーム。

互いの技術とこだわりを尊重しながら共同作業で製品を作り上げる、という現場の空気を感じられるこんな逸話がある。

「一例ですが、ある企業からは、我々が代々伝承してきた"手彫りの伊勢型紙"を極限まで突き詰めたいと要望をいただきました。誰もが知っている、彼らの伝統の図柄(パターン)を手彫りで表現するわけです。手仕事ですから、何度型紙を作り直しても手彫り特有の個々の微妙な違いはどうしても発生します。工業製品のようにはいきません。非常に厳しいやりとりを繰り返し、最終的には、これが手彫りの個性であり味わいである、と先方にご理解いただき、世に出て行きました」

伊勢型紙の図柄

印伝の伝統的な図柄「紗綾形」。規則正しく並ぶ細かな点はすべて長年取引している伊勢型紙の職人の手仕事でつくられている。

こうした対外的なコミュニケーションは上原が担当し、基本的にすべて英語だ。上原は、印傳屋が対話に値する相手だと認めてもらうため、コミュニケーションを大切にしている。打ち合わせ以外の場でも、海の向こうからメールが届けば昼夜を問わず必ず自身の手で返信した。表現したいニュアンスがきちんと伝わっているか、時には専門家のチェックを通すなど念には念を入れた。

「相手先企業とは、企業の規模も考え方も、いろいろな意味で会社の“レベル”が違います。そのなかで、印傳屋が技術だけではなく、向き合うに値する実力をもった企業だと認めてもらうことはとても大切なことです。両社が協力して良い製品を作るためには、円滑なコミュニケーションが欠かせません。そのためには、双方の窓口となる者同士が通じ合っていなければ。熱意も実力も、心が通い合っているから力を持つのです」

世界の“目利き”たちの心を奪った印伝の匠の技

海外ブランドの目利きたちを夢中にさせた印傳屋の手仕事を工房で見せてもらった。印傳屋では「漆付け」「更紗(さらさ)」「燻べ(ふすべ)」という甲州印伝が伝承する3つの技法で生地をつくっている。実は、コラボ企業が使う素材生産も含めて、すべての生地が山梨県の本社敷地内にある工房で加工されたものだ。

漆付け:

漆付け

型紙で漆をのせていく「漆付け」の作業。鹿革の表面には微妙な凹凸があるため、機械的に均質な力で漆を付けると、模様の「盛り」にバラつきが出てしまう。習得までに数年かかる熟練の技術を要する作業だ。

inden-ya04

漆付けした鹿革。盛り上がった漆が描く模様が独特の風合いを作り出す。

更紗:

更紗

インド起源の染織工芸品「更紗」の模様に似ていることから、この名前が付いた。1色ごとに型紙を変えて、最大で6色まで色を重ねていく。更紗技法は、漆付けをする前の下地模様を描くのに使われることがほとんどだ。

燻べ(ふすべ):

燻べ

「燻べ(ふすべ)」は、印伝のルーツとされる技法だ。未染色の鹿革を「タイコ」と呼ばれる筒に貼りつけ、その下で藁を燃やし、「煙」で色を付けていく。手間のかかる技法ゆえに、受注生産が基本。希少性から、燻べを使った製品は3〜5倍の価格になるのが一般的だ。

燻べ

燻べで着色したところ。このあと模様の部分を削り落とすと元の素材の色で模様が浮かび上がる。

美しいエイジング変化を楽しむ

上原が5年ほど毎日持ち歩いているという「合切袋」を見せてもらった。新品と比較すると、その違いは素人目にも明らかで、鹿革の黒が深く濃い色合いになり、漆の光沢も渋く変化している。

印傳屋の合切袋

左が5年使用のもの、右が新品。鹿革の黒の質感が深く沈んだものになっているほか、黒の漆の光沢といった風合いのエイジングが見てとれる。

「経年による味わいの変化は印伝の大きな魅力です。特に難しい手入れは必要ないので、あまり神経質にならなくていいのも良いところです。革の財布などを使うときと同じように配慮していただければ、使い込むことで味わいが出てきます」(上原)


アメリカ・ニューヨーク進出を経て、ヨーロッパ市場へ

印傳屋は近年、自社単独での海外進出にも取り組んでいる。

「2012年から新ブランド『INDEN NEW YORK』を立ち上げ、まずは米国ニューヨークに進出しました。アメリカ市場向けの改良を繰り返しながら徐々に西海岸にも手を広げ、2016年秋には念願のパリの展示会に出展しました。ヨーロッパ進出を機に、ブランド名を『INDEN EST.1582』と改めました。歴史を重んじる風潮の強いヨーロッパでは、老舗企業であることを評価していただいている実感があります」(上原)

これらの海外モデルは、直営店などを通じて日本国内でも入手できる。伝統柄とはまったく印象の違う幾何学的な模様が目を引くが、これらもすべて伝統的な手仕事から生み出されている。

■印傳屋の海外向けブランド「INDEN EST.1582」の公式サイトはこちら

印傳屋の海外向け商品

印傳屋の海外市場向けの製品の一例。幾何学的な模様や、ジッパーの色などを海外向けにリサーチして作った。右のチェック柄は「更紗」で、ほかの2つは「漆付け」で模様がつくられている。

印傳屋の海外向け商品

海外向け製品(長財布)の内部。中央にINDEN、右端にJAPANという型押しが見える。


英国・アスプレイ社と創り上げた新たなコラボ製品

ファッションブランドとのコラボ製品制作は、今後も続く。11月には200年以上続く英国のラグジュアリーブランド、アスプレイ(Asprey)とのコラボ製品が日本でも発売される。アスプレイは1781年創業、英国王室御用達として名声を確立してきたブランド。アスプレイの求めるクオリティに見合う素材を世界中から探していたところ、鹿革に漆付けする伝統技法を今も守り続ける印傳屋の素材に白羽の矢が立った。

表面を覆う模様は、アスプレイを象徴するクロスハッチ。印傳屋の職人が試行錯誤を重ねながら、漆の光沢で立体感を表現することに成功した職人技の賜物だ。

印傳屋×アスプレイ コレクション

aspray

「167」ハンドバッグ ブラック・オン・ブラック クロスハッチの大小モデル。167はアスプレイの旗艦店があるロンドン、ニューボンド・ストリートでの住所にちなむ。クロスハッチとは、イギリス産業革命時のデザインであるエンジンターニング(回転するエンジンという意味)をモチーフとした模様のこと。


1781

「1781」ポシェット ブラック・オン・ブルーベリー クロスハッチ。1781は、アスプレイの創業年にちなんでいる。

「印傳屋×アスプレイ コレクション」は、2017年11月にアスプレイの店舗(東京・銀座、大阪・梅田)にて発売される。「アスプレイのファン、そして甲州印伝を愛用いただいているファンの方々に今回のコラボがどう受け入れられるのか。楽しみであるとともに、身が引き締まる思いも感じています」(上原)

山梨の伝統企業の挑戦は、創業500年を目指してこれからも続く。

■「印傳屋×アスプレイ コレクション」の詳細情報はこちら(公式サイト)

■印傳屋 公式サイト


■印傳屋 公式Facebook

■印傳屋 公式Instagram

(本文敬称略)

(本文写真撮影:岡田清孝)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい