「太りやすい体質になる食べ合わせ」研究が暗示する衝撃の事実 —— 砂糖入り飲料は要注意だ

砂糖を含んだ飲み物

健康志向な人なら、しっかりタンパク質をとり、筋肉を維持して太りにくい体作りをしようと毎日の食事メニューを工夫している人も多いかもしれない。けれども、せっかくの高タンパク食も、食事の組み合わせによっては「かえって太りやすい身体を作ってしまう」という報告が米国農務省の研究所から発表された。

研究者が調べたのは、脂肪をエネルギーとして消費するときに起きる「脂質酸化」の量だ。実験では、健康な男女27人に「メタボリック・チェンバー(人間のエネルギー代謝を正確に図ることができる施設。24時間代謝測定室)」の中で500kcalの食事を食べてもらった。食事は、総エネルギーの15%がタンパク質の平均的な食事に近いものと、30%がタンパク質となる高タンパク食の2種類が用意された。これに飲み物として360mlの水またはダークチェリーフレーバードリンク+31gの砂糖(砂糖の分のカロリーは120kcal)、フレーバードリンク+人工甘味料4gを飲んでもらう。

食事のメニューは、角切りポテトとハムを焼いてチェダーチーズの細切りをかけたもの、白パンとバターといった組み合わせだ。ハムの量を増減してタンパク質の量を調整する以外は、実験だからといって特殊な食品を食べているわけではない。

病院の待合室のイメージ

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こうした条件を整えて食事後のエネルギー代謝を測定したところ、砂糖入りドリンクを飲んだ場合では、脂肪をエネルギーとして代謝し始める際の脂質酸化の量が減少したという結果が得られた。具体的には、タンパク質のエネルギーが15%の食事では減少した脂質酸化の量は平均で7.2g、高タンパク食の場合は平均で12.6gも減少している。

これだけでなく、人間が食事をとると、食べたものを消化吸収するためにもエネルギーを消費する。DIT(食事誘発性熱産生)といい、消費エネルギーはタンパク質を食べたときに最も多く、また食事を多く食べればそれだけ消費エネルギーも増える。本来なら、追加のカロリーを取れば、その分だけDITで消費するエネルギーも増えるはずだ。それが、砂糖入りドリンクを飲んだ場合、DITはあまり増えず、砂糖の追加カロリーは余ってしまったのだ。

実験は2日にわたって同じ内容の食事をとって行われた。つまり、砂糖入りドリンクがエネルギー消費に与える影響は、かなり短い期間で現れたことになる。また、500kcalの食事+120kcalの砂糖入りドリンクという組み合わせはエネルギーの量からいえば食べ過ぎというほどではなく、健康な成人男性ならば1日の摂取エネルギーの4分の1くらい。ダイエット中の女性でもこのくらいは食べておきたいという程度だ。決して太りやすくするために高カロリー食を食べさせたわけではない。

せっかくの高タンパク食も、甘いドリンクで台無しに

さて、実験で食べていたハムとポテトとパンとチーズという組み合わせならば、日本でも日常的に食べている人はいそうだ。さらにこれをダイエットで人気のサラダチキンに置き換えて考えてみよう。サラダチキンに含まれるタンパク質の量は、100gあたり21~22g、タンパク質のエネルギーは1gあたり4kcalだ。食事500kcalのうち、タンパク質のエネルギーが15%ならばチキンは90g弱、30%ならば170g程度だ。そして120kcalの砂糖入りドリンクは、コーラならば約270ml、缶コーヒーならば約380ml、甘いカフェオレならば約350mlにあたる。

ダイエット

食事に気を付けていても……。

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これが油で揚げたフライドチキンなどの見るからに高カロリーなメニューであれば、警戒して甘い飲み物は控えよう、と思うかもしれない。けれども、カロリーはそれほどではなく、タンパク質がしっかりとれているはずの食事で、甘いドリンクの1本くらい……という油断が生まれることもあるのではないだろうか。

この研究は、アメリカ人の主な砂糖の摂取源である甘い飲み物がエネルギー消費や肥満にどのような影響を与えているのか調査する目的で行われた。実験は健康な成人のみを対象としているため、過体重の人の場合はこれとは異なる結果が得られることも考えられるという。日本とアメリカでは、食事に占める3大栄養素の割合や平均的な筋肉の量なども異なるため、研究結果がそのまま日本人に当てはまるものではないかもしれない。それでも、なんとなく飲んでしまいがちな甘いドリンクが、せっかくの高タンパク食のダイエット効果を損なってしまうかもしれない、という可能性は意識しておきたいところだ。


<参考文献>

BMC Nutrition『Postprandial energy metabolism and substrate oxidation in response to the inclusion of a sugar- or non-nutritive sweetened beverage with meals differing in protein content』


<同文献のプレスリリース>

『Why sugary drinks and protein-rich meals don’t go well together』


秋山文野:IT実用書から宇宙開発までカバーする編集者/ライター。各国宇宙機関のレポートを読み込むことが日課。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、書籍『図解ビジネス情報源 入門から業界動向までひと目でわかる 宇宙ビジネス』(共著)など。

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