Bjorkは戦い続ける 女性に立ちはだかる音楽産業の偏見「Sonar Festival 2017」レポ

FUZEより転載(2017年7月25日公開の記事)

実を言うとね、DJをするときは・・・(口元に手を当て打ち明け話をするような仕草で)Garagebandを使っているの

Sonar Music Festival 2017(以下、Sonar)でBjörk(ビョーク)がそう語ると、会場は笑いに包まれた。長年にわたって音楽とテクノロジーを結びつけてきた彼女だ。Garageband(ガレージバンド)を使おうが、いまさら誰もビョークのアーティストとしての資質を疑わないが、Sonarにはさまざまな企業、研究者、アーティストなど、音楽だけでなくテクノロジーにも関心の高い層が集まる。普段はProtools(プロツールス)を使っているけれど、DJのときは周波数などに気を遣いたくないから、という理由からGaragebandを使っているそうだが、ビョークらしい大胆不敵な発言だ。

6月中旬からバルセロナ現代文化センターでは彼女のVR作品を主に展示する『Björk Digital』が9月まで行なわれる。そのエキシビション初日に合わせSonarに登場したビョークは、世界各国から集まったアーティスト、研究者、起業家、企業関係者などを前に、自らのアートプロジェクトとDJについての特別トーク、そして4時間にわたるDJセットを行なった。これまでのキャリアでパンクやオルタナティブロック、エレクトロニック・ミュージックなどのシーンを駆けぬけてきたビョークは、男性優位の音楽産業で常に戦っている。アートとテクノロジーが交差するSonarという場で、彼女らしく思いがけない方向からセクシズムの問題を告発する様子をレポートしたい。


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Image: toshinao.ruike

オープニングの夜に来場者に振舞われていたパエリアを食べ、ビョークのDJセットの会場に入る。ステージの方向を凝視して、思わず「え?」と声が出た。


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Image: Sonar Official

ビョークだと言われてもとても識別できないが、密林のような大量の植物に囲まれてDJをしている(おそらく)ビョーク。さきほどのトークのときも顔をひらひらした扇子状の布で覆っていたが、DJセットでは着替えて全身を隠してしまっている。

近年のビョークは顔を隠すヘッドピースを身につけることが多いので、顔を隠す演出自体にはそれほど驚かないが、とうとう全身がミイラのようにすっぽりと白いすだれのような素材で覆われ、目と口の部分だけ穴を開けている。もはや中に入っているであろうビョークを想像で感じるしかない。「これは写真にしたら、最高にかっこいいわ!」と近くにいた女性の観客は感嘆の声をあげながらスマホで撮影していたが、そんな話で終わらせていいのか。


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Image: Sonar Official

おそらくはトリビュート的な意味合いで、2014年に早世した長年の音楽的盟友だったLFOのMark Bell(マーク・ベル)の初期の曲をかけたり、今回Sonarのクロージング・パーティーでNico Muhly(ニコ・マーリー、彼女のアルバムで何度かコラボレートしている)が演奏するDavid Lang(デイビッド・ラング)の声楽曲などをかけたりしていたが、インド歌謡をかけたと思ったら、突然乱暴に低音を叩きこんだり、ビョークのDJは一言で言って荒々しかった。トークの際に事前に編集したトラックがうまく保存されていなくて、今日のセットは仕込みに時間がかけられなかったとも語っていたが、以前SoundCloudで公開されたDJセットと比べても、選曲はまとまりに欠けていた。残念ながら観客も今一つピンとこない様子で、4時間が長く感じられた。

Garagebandに珍衣装、そしてやりたい放題のDJセット、これらはビョークファンにとっては「写真に撮ったら最高な」まだ楽しめるアクシデントかもしれないが、なぜ彼女はSonarという大舞台でこのようなことをしたいと思ったのだろうか。Deadmau5(デッドマウス)のようにマスクで顔を隠してプレイするDJはよくいるし、Garagebandどころかろくにミックスもせず、用意した楽曲プリセットをただ再生するだけというボタンプッシャー的なひどいDJの存在はもう何年も前から問題視されている。だがそもそもアーティストがステージで全身をすっぽり隠してしまったら、「プロモーションにならない」と怒る業界関係者やプロモーターも未だに多いだろう。ビョークはこれまで自らのライブで、ミュージックビデオで、雑誌のカバーで、そして映画で、幾多の媒体で素晴らしいイメージを残してきた。そしてそれらはミュージシャンとしてのビョークのクリエイティビティの高さをつねに際立たせる形で、彼女が作りあげた音楽やアートへの理解を助けてきた。

しかし今回のビョークのDJセットはこれまで築いた女性シンガーとしての要素を一切排してパフォーマンスしていたと言っていい。今年のSonar初日は演奏はビョークのDJセットしかないので、皆彼女を観に来ている。それなのに、本人は森の中で白い衣装に身を隠してDJとしてプレイしている。「有名女性シンガーのビョークが有名音楽フェスティバルでDJをした」という話題として単に消費されることへの拒絶を表明しているかのようだ。


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Image: Sonar Official

ビョークと共演者から見えた、音楽に立ちはだかるセクシズムの壁

ビョークはこの10年ほど、音楽産業における性差別の傾向を主張してきた。特に自ら作曲・編曲・プロデュースを行なってきたにも関わらず、自身ではなく男性の共演者やレコーディング・エンジニアらの名前が各種媒体に記載され続ける問題について憤りを感じている。

女性はテクノロジーをうまく扱えないといった差別的な見方が実際にどのような形で音楽界に存在しているのだろうか。

(...続きは『FUZE』の記事「Björkは戦い続ける 女性に立ちはだかる音楽産業の偏見「Sonar Festival 2017」レポート」で!)

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