2017年、注目すべきアドテク企業トップ10

スプリンクラーのCEOラジー・トーマス氏

アドテクは終わったのか?

Flickr/Web Summit

  • アドテク企業への投資は下火で、IPOの動きもない。
  • だが一方で、新たな取り組みを始めている企業も多い。注目すべきは、マーケティングデータ、ブランドセーフティ、テレビ広告の新しい形に取り組むスタートアップだ。

アドテク業界は、すべてが変わってしまった。

ベンチャーキャピタルからの投資は下火になった。グーグルとFacebookの成長がマーケットを変えた。一時は評価額20億ドル(約2180億円)を誇ったロケット・フューエル(Rocket Fuel)が、1億2550万ドルで売却されたことをアドテクの1つの時代の幕切れと見る人も多い。

そこで、我々は今年の「今、最も注目すべきIPO前のアドテク企業ランキング」を見直した。アドテク企業の定義を広げ、プログラマティック・アドに特化した企業に加えて、大手企業が蓄積した膨大なデータの分析をサポートするスタートアップも含めた。この分野は今後、ますます重要になる分野で、数多くのビジネスチャンスがある。

また、動画広告やテレビ広告の未来を狙っている企業も含めた。この分野では、ソフトウエアやアルゴリズムの活用はまだ始まったばかりだ。

デジタル広告の未来は混沌としていて、不確実。だが、破壊的なアイデアを持つ起業家には狙い目だ。

「スタートアップ企業の多くは、エコシステムの合理化と統合による影響を受けるだろう。だが一方で、規模と差別化ポイントを持つ企業にとっては、成長と大きなエグジットの可能性がある」と、戦略アドバイスを専門とするルマ・パートナーズ(Luma Partners)の創業者兼CEOテレンス・カワジャ(Terence Kawaja)氏は述べている。

注目のアドテク企業、ベスト10を見ていこう。


10位 メディアマス(MediaMath):アドテクの確立に貢献

メディアマスのCEOジョー・ザワツキー氏

メディアマスのCEOジョー・ザワツキー氏

MediaMath

CEO:ジョー・ザワツキー(Joe Zawadzki)氏

従業員数:700人

推定売り上げ:2億6500万ドル

現在までの調達総額:最近、1億7500万ドルの融資を得た。2014年には1億7500万ドルを調達した。

コメント:メディアマスは創業されてから時間が経つが、まだエグジットできていない。最近、負債を理由に資金を集めたことに眉をひそめる人もいるだろう。しかし、同社は依然、アドテク業界最大級の売り上げを生み出す企業だ。大手企業との取り引きがあり、高い技術力を誇っている。


9位 アップボーイ(Appboy):マーケティングクラウドをモバイルに持ち込もうと奔走中

アップボーイの共同創業者兼CEOビル・マグナソン氏

アップボーイの共同創業者兼CEOビル・マグナソン氏

AppBoy

CEO:ビル・マグナソン(Bill Magnuson)氏

従業員数:175人

推定売り上げ:事情通によると、年間売り上げは3000万〜5000万ドル

現在までの調達総額:9360万ドル

コメント:アップボーイはアドビやセールスフォースなどが提供するようなマーケティングクラウドをモバイル向けに提供することを目指している。同社は複数のチャンネルをまたいで掲載される広告の管理をサポートしており、顧客は自動車レースNASCAR(ナスカー)やドミノ・ピザなど。

このところアドテク分野への投資が下火になっているにもかかわらず、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)によると、同社は昨年、2000万ドルを調達した。また、今月、シリーズDの投資ラウンドでさらに5000万ドルを調達した。モバイルマーケティングはまだ上昇傾向にある分野だ。昨年、アップラビン(Applovin)が昨年、アップラビン(Applovin)が14億ドルで買収されたことも記憶に新しい。現在、アップボーイの評価額は、4億ドル以上。

8位 アドロール(AdRoll):リターゲティング広告分野の注目企業

アドロールのCEOアーロン・ベル氏

アドロールのCEOアーロン・ベル氏

AdRoll

CEO:アーロン・ベル(Aaron Bell)氏

従業員数:500人

推定売り上げ:今年の見込みは、3億ドル

現在までの調達総額:8900万ドル

コメント:アドロールは、リターゲティング広告で知られるクリテオ(Criteo)の次世代版と認識されている。同社は一度、特定の商品に興味を示したユーザーに対して、広告主がリターゲティング広告を配信できるプラットフォームを提供している。アドロールによると、全世界で3万5000を超える広告主が利用している。また、先月報じたように、スナップチャットがアドロールの買収を検討している

7位 ロク(Roku):独自のOTT広告スタックを構築

ロク(Roku)

Roku

ロクはもちろん、アドテク企業ではない。しかし、同社のデバイスは「アップルTV」やグーグルの「クロームキャスト」よりも多くの家庭で利用されている。そして同社は、同社のアプリ内で配信、ターゲティング、効果測定まで可能な一連のアドテクを開発している。

ロクに関して、以下の4点を考えてみてほしい。

  • 同社は1400万人のユーザーを持ち、昨年、90億時間にのぼるコンテンツを配信した。
  • 2016年の売り上げは4億ドル。そのうち、広告を含むメディアおよびライセンス部門の売り上げは1億ドル。
  • 最も視聴されている250のチャンネルのうち、約半分は広告売り上げに支えられている。そして、広告売り上げは、同社において最も急速に成長している分野だ。
  • オーバー・ザ・トップ(OTT:従来のインフラに頼らない、インターネットによる番組配信)のインプレッションの3分の1は、ロクによるものだと同社は述べている。

6位 スプリンクラー(Sprinklr):大手企業向けのソーシャルメディア管理プラットフォーム

スプリンクラーのCEOラジー・トーマス氏

スプリンクラーのCEOラジー・トーマス氏

Sprinklr

CEO:ラジー・トーマス(Ragy Thomas)氏

従業員数:1500人

推定売り上げ:事情通によると、同社の年間売り上げは2億ドル以上

現在までの調達総額:2億2850万ドル

コメント:同社はさまざまなソーシャルメディアの運用を管理できるプラットフォームを提供している。顧客はマイクロソフトやマクドナルドなど。評価額は現在18億ドル。

5位 アップネクサス(AppNexus):グーグルとアマゾンによる独占に挑む

アップネクサスのCEOブライアン・オケリー氏

アップネクサスのCEOブライアン・オケリー氏

Twitter

CEO:ブライアン・オケリー(Brian O'Kelley)氏

従業員数:1000人

推定売り上げ:昨年の売り上げは、約2億5000万ドルと我々は見ている

現在までの調達総額:2億8100万ドル

コメント:ウォール・ストリート・ジャーナルによると、評価額は20億ドルにのぼる。同社はアドテク業界の最大手の1つであり、現実的にグーグルなどの巨大企業にチャレンジできる企業だ。同社は広告業界大手WPPから出資を受けている。IPOのうわさは長くささやかれているが、まだ未定。

4位 イノビッド(Innovid):次世代のテレビ広告に特化

イノビッドのCEOツヴィカ・ネッター氏

イノビッドのCEOツヴィカ・ネッター氏

Innovid

CEO:ツヴィカ・ネッター(Zvika Netter)氏

従業員数:200人以上

推定売り上げ:6000万ドル

現在までの調達総額:6500万ドル

コメント:テレビアプリ向け動画広告を手がける同社は、この分野では最先端を走っている。同広告は同社が扱う広告全体の22%を占め、昨年から300%増加している。顧客は、動画広告を適切で安全な場所に掲載したいと考える広告主。同社によると、毎月、全世界で9000万時間にのぼる動画広告を配信している。

3位 エムパーティクル(mParticle):ばらばらに存在するデータの取りまとめをサポート

エムパーティクルのCEOマイケル・キャッツ氏

エムパーティクルのCEOマイケル・キャッツ氏

mParticle

CEO:マイケル・キャッツ(Michael Katz)氏

従業員数:87人

推定売り上げ:約2000万ドル

現在までの調達総額:3700万ドル

コメント:創業4年の同社は、さまざまなウェブサービス上に散らばってしまっているユーザーデータを、マーケターが活用できる形に取りまとめる。同社の顧客はホテルチェーン大手のスターウッド(Starwood)、メディア大手NBCユニバーサル(NBC Universal)、スポティファイ(Spotify)など。ルマ・パートナーズのCEOテレンス・カワジャ氏は、最ニュースメディアDigidayのポッドキャストで同社を高く評価した。

2位 インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science):ブランドセーフティ分野のリーダー企業

インテグラル・アド・サイエンスのCEOスコット・ノール氏

インテグラル・アド・サイエンスのCEOスコット・ノール氏

IAS

CEO:スコット・ノール(Scott Knoll)氏

従業員数:609人

推定売り上げ:1億2200万ドル(2017年6月までの12カ月分の売り上げ合計)

現在までの調達総額:5400万ドル

コメント:広告がどこに表示されているのか? そもそも見られているのか? こうしたこと対する広告主の関心が高まるにつれ、インテグラルの重要性は大きくなる。競合企業のモート(Moat)がオラクルに8億5000万ドルで買収されたのが良い例だ。広告主や媒体は、インテグラルの技術と経営陣を高く評価している。

1位 アマゾン(Amazon):着々とアドテクに進出中

アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏

アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏

David Ryder / Stringer / Getty Images

ちょっと待って。このランキングは注目のアドテク企業のランキングではないのか? アマゾンはIPOしてから数十年が経つ、5000億ドル規模の企業ではないのか?

その通り。だが、アマゾンは知られざるアドテク・スタートアップだ。アマゾンがひっそりと作りあげたソフトウエアやツールは、広告主の広告購入や媒体社が広告収益を得ることを支援する。同社は「ヘッダー入札(header bidding)」におけるトップ企業の1つ。ヘッダー入札は、デジタル広告の購入、販売をより民主的なものにした革命的な技術。そして、同社が持つ膨大なユーザーデータも見逃すことはできない。

いずれ、広告主と媒体社がいつでも、数十億にのぼる広告に入札できるようになるだろう。そこでは、サーバーの能力が勝負の決め手となる。つまり、アマゾンの独擅場だ。実際、同社は最新の収支報告で同社の広告部門の急成長ぶりを発表している

アマゾンをアドテクの新興企業に含めるべきか否かには、議論の余地がある。しかし、同社がデジタル広告におよぼす影響については、議論の余地はない。

重要な補足:AIやブロックチェーンなど注目分野のリーダー企業

AIやブロックチェーンのイメージ

AIの影響は広告分野にもおよぶ。

Thomson Reuters

  • Amino(前身はCurren-C):ブロックチェーン技術をデジタル広告の請求や効果測定に活用。
  • msg.ai:チャットボットやメッセージアプリ、AIをマーケターが活用できるように支援。
  • Omnivrt: VR広告の自動化を目指す。
  • Adswizz:デジタルオーディオ分野での広告に注力。
  • Catch and Release:広告会社のクリエーターがよりビジュアルな広告を大量に作成することを支援。
  • VidMob:マーケターと製作者をつなぎ、ソーシャルメディア向け動画広告の迅速な製作を支援。
  • IFTTT(If This Then That): アマゾンのアレクサやGoogle Homeのような家庭用デジタル端末を連携させる。

[原文:The 19 most interesting ad-tech upstarts of 2017, ranked

(翻訳:Yuta Machida)

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