企業価値の高いテック系スタートアップの上場が、ここ3年で最も速いペースで起きている。
今年4月から6月にかけ、評価額10億ドル(約1100億円)以上の非上場のベンチャー企業 —— いわゆる「ユニコーン企業」4社が、新規株式公開(IPO)を実施した。この数字は1~3月期の2倍にあたり、2015年および2016年の年間件数に等しいことが、ゴールドマン・サックスのデータから分かった。
今年4月から6月にかけ、4社のユニコーン企業がIPOを実施した。1月~3月期の2倍だ。これは2015年、2016年それぞれの年間件数に等しい。
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ただ、こうしたIPOの全てが成功しているわけではない。4~6月期にIPOを行ったユニコーン4社を、ゴールドマン・サックスの企業価値データで見てみよう。
- オクタ(Okta):4月のIPO実施時点で、企業価値は18億ドル。上場前最後の調達ラウンドにおける評価額12億ドルを上回った。現在の株価は公開価格から42%の大幅上昇。
- Cloudera:4月のIPO実施時点で、企業価値は19億ドル。上場前の41億ドルを大きく下回った。株価は公開価格から19%上昇。
- Delivery Hero:6月のIPO実施時点で、企業価値は44億ユーロ(約5670億円)。上場前の31億ユーロを上回った。株価は公開価格から6.6%上昇。
- ブルーエプロン(Blue Apron):6月のIPO実施時点で、企業価値は19億ドル。上場前の20億ドルを若干下回った。株価は公開価格から46%の大幅下落。
ここで注目したいのは、ブルーエプロンだ。IPOを実施した6月時点の企業価値は、上場前最後の調達ラウンドの評価額に比べて、さほど低いようには見えない。ただ、同社の上場のタイミングは非常に悪かった。
ブルーエプロンの公開価格が決まる数週間前、小売世界最大手のアマゾンが高級オーガニックスーパーのホールフーズを137億ドルで買収すると発表。これを受け、投資家らはフードデリバリー業界の競争が激化すると考えた。その結果、ブルーエプロンは売り出しの価格幅を、1株あたり「15~17ドル」から「10~11ドル」に引き下げ、最終的な公開価格は同社が想定していた上限価格を40%下回る1株あたり10ドルとなったのだ。
こうした試練は、IPOを検討する他のユニコーン企業に教訓を与えてくれる。あらゆるタイプの業界が、外からのプレッシャーに左右されること、そして上場するにはそのタイミングに注意することがいかに重要かがよく分かる。
では、次に来るユニコーンとは、どのような企業だろうか?
今年4~6月にかけ、新たに登場したユニコーン企業は13社だ。上場した4社と相殺しても余りある。これで、巷に存在するユニコーン企業は168社となった。
同じ期間に行われたソフトウエア・インターネット関連企業の資金調達ラウンドで、一度に調達した額が最も大きかったのは、リノベーション計画中の住宅オーナーが利用する写真サイトHouzzによるシリーズEの4億ドルだ。ゴールドマン・サックスによると、この他、終盤ステージで相当額を調達したのは、自転車を使った屋内フィットネスを提供するPeloton(3億2500万ドル)や自動支払いサービスを提供するAvidXchange(3億ドル)などだ。
ユニコーン企業の数は、2014年初めから四半期ごとに増加もしくは横ばいが続いている。その推移を表したのが、下のグラフだ。
ユニコーン企業の数は、2014年初めから四半期ごとに増加もしくは横ばいが続いている。青色は、新たに登場したユニコーン企業の数。水色は上場したユニコーン企業の数。グレーの折れ線は、ユニコーン企業の総数。
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source: Goldman Sachs
[原文:Tech 'unicorn' IPOs are booming]
(翻訳:原口 昇平)