日本のメーカーにも打診、インドが潜水艦を増強する背景とは

スコルペヌ型潜水艦カルヴァリ

ムンバイのマザゴン・ドックに到着したインド海軍のスコルペヌ型潜水艦カルヴァリ(INS Kalvari)。2015年10月29日。

Reuters/Shailesh Andrade

インドは、海外の造船メーカー6社に、次期通常動力型潜水艦6隻の製造について、正式な情報照会を行った。

ディフェンス・ニュース(Defense News)によると、この情報照会は、インド海軍が120億ドル(約1兆3100億円)以上を費やす潜水艦導入プログラム「プロジェクト75I(P75I)」のためのものだ。

照会先は、日本をはじめ、ロシア、フランス、ドイツなどの造船メーカー。内容は、「非大気依存推進(AIP)」システムを備えた潜水艦6隻に関するもの。AIPシステムは通常のディーゼル機関を置き換え、あるいは補完するシステムで、原子力を使用しない通常動力型潜水艦でも大気中の酸素を取り込まずに航行できる。

さらに「実績があり、効果的で最先端の大型電気魚雷、陸上攻撃ミサイル、さらにはおそらく、敵のヘリコプターや機雷に対抗する対空ミサイルを求めている」と元インド海軍准将で防衛アナリストのアニル・ジャイ・シン(Anil Jai Singh)氏はディフェンス・ニュースに述べた

受注に前向きな造船メーカーからの返事を待ち、インドは正式な見積りを依頼し、最終候補を3〜4社に絞り込む見込み。

インド海軍初のスコルペヌ型潜水艦の進水式

インド海軍初のスコルペヌ型潜水艦の進水式。ムンバイのマザゴン・ドックにて、2015年4月6日。

REUTERS/Shailesh Andrade/File

このプロセスには数年かかる。その理由の1つに、インド政府が進める戦略パートナーシップ政策がある。海外の造船メーカーがインド国内の造船メーカーとペアとなって受注を目指すという政策だ。

あるメーカーは、ディフェンス・ニュースに対して、戦略パートナーの選定は、2019年までに終了するだろうと述べた。別のアナリストとインド海軍の退役軍人は、P75Iプログラムで建造された最初の潜水艦が海に出るのは「契約が結ばれてから、早くて7〜8年後だろう」と述べた。

インドならびに中国が保有する潜水艦。

インドならびに中国が保有する潜水艦。2014年12月現在。

RNGS REUTERS

インドの潜水艦への関心は、中国の進出が原因だ。中国は、インド洋およびインド洋と東アジアを結ぶマラッカ海峡において、水上艦艇や潜水艦の行動を活発化させている。

インドは2013年から、インド洋に進出してくる中国の潜水艦を監視している。また、2015年のアメリカ国防総省の報告書は、中国の攻撃型ミサイル潜水艦が、同海域で行動していると述べた。

中国は、インド洋とアフリカ沿岸における行動について、非軍事的なもので、人道的援助や緊急派遣、海賊の監視パトロールなどが目的だとしている。

実際に、約900キロにおよぶマラッカ海峡は、海賊が出没する場所だ。インドネシアとマレーシアのジャングルが密集した海岸線に挟まれており、通過する年間5万隻の船舶を狙って海賊が出没している

しかし中国の行動に、インドをはじめとする各国は警戒している。中国は、アフリカでの経済活動を活発化させるとともに、バングラデシュやミャンマー、スリランカなどと協力関係を結び、南アジア沿岸に多数の施設を構築しているためだ。

「インド洋北西のアデン湾での海賊対策は、ただの口実だ」とインドの国防関係者は5月、ザ・タイムズ・オブ・インディア紙に述べた

「海賊や彼らの帆船に対して、潜水艦で何をしようというのだ」

インドはすでにマラッカ海峡付近に軍艦を配備し、活動を監視している。また、アメリカ製の対潜哨戒機P-8I ポセイドンを、マラッカ海峡の北西に位置するアンダマン・ニコバル諸島に配備している。インドは同諸島に治安部隊を駐留させる予定だ

インド洋の地図

Christopher Woody/Google Maps

アメリカはインドに対して、ポセイドンとともに運用が可能な偵察用無人機を販売することに合意している。この偵察無人機は潜水艦も含めた、同海域における中国の行動を追跡することができる。インドはまた、インド洋の島々でのレーダー基地の建設や、インド南部とインドネシア北部の間の海中にセンサーを配置する「水中の壁」の建設に取り組んでいる。

中国は輸入燃料に大きく依存しており、輸入石油の約80%と輸入天然ガスの11%はマラッカ海峡を通過する船で運ばれてくる。インドの日刊紙ザ・トリビューンは6月、「インド海軍には2020年までにインド洋の覇権を確立するという目標が与えられており」、マラッカ海峡周辺におけるインドの動きはその一環だと伝えた

潜水艦上に整列する中国兵士

潜水艦上に整列する中国兵士。中国とロシアが黄海で実施した合同海軍軍事演習にて。2012年4月26日。

REUTERS/China Daily

インドが潜水艦と潜水艦作戦により重点を置いていることは、軍事演習「マラバール」で明らかになった。マラバールは、2017年7月半ばに日本、アメリカ、インドの3カ国が合同で実施。対潜水艦作戦は、演習項目の1つだった。

インドはこれまで、百年以上前から北部国境とその周辺における安全保障上の脅威に神経をとがらせてきた(インドと中国は現在、ネパール付近の国境問題で対立している)。しかし、最近は南側にも注目し、より広いインド洋への関心を拡大させている。

インド政策研究センターで戦略研究を行うブラーマ・チェラニー(Brahma Chellaney)教授はニューヨーク・タイムズに対し、「これは、インドの安全保障における構造上の変革だ。我々は南部を防衛しなければならない」と述べた

中国は、2017年7月はじめに、東アフリカのジブチに建設した初の海外拠点に駐留部隊を派遣。さらに7月半ばには、バルト海でのロシアとの合同軍事演習を行い、また、7月後半には、アメリカ・オーストラリアの合同軍事演習に監視船を送り込むなど、この海域での動きに反応を示している。

中国国営のチャイナ・デイリー紙は7月10日の社説で、貿易ならびに石油輸入におけるインド洋の重要性を考えると、「安全保障上の問題」と受け止めるべきは我々、中国だと伝えた

[原文:India is shopping for submarines as China extends its reach into the Indian Ocean

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)

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