個別指導のトレーニングジムやアパレルのリアル店舗などを展開するRIZAPグループが、個別指導の料理教室「RIZAP COOK」の本格展開を始めた。ホテルや有名レストランの料理長などを務めた経験豊富なトレーナーから一対一で手ほどきを受け、2〜3カ月で急激な上達を目指す内容だ。8月21日、オープンした直後の池袋店で内覧会が開かれ、筆者も料理の指導を受けた。
かつお節の一番だしをとる、トレーナーの樋詰尚哉さん。経験豊富な料理人だ。
「料理がつくれないという悩みを抱えている人がものすごく多い。料理コンプレックスを克服する手助けをしたい」
RIZAPグループで新規事業の開発などを手がけるRIZAPイノベーションズの木村臣宏・新規事業ユニット長は、RIZAP COOKのコンセプトをこう説明する。
RIZAPは昨年11月、東京・自由が丘に小規模の料理教室を開き、試験的に新業態の店舗運営を進めてきた。RIZAPのトレーニングジムで減量や体型の改善に取り組む人には、低糖質の食事をすすめているが、「料理ができない」という声が多かったことが新規事業に取り組むきっかけになったという。
自由が丘店の主な顧客層は40歳未満の独身女性。男性も3割程度いたという。
「好きな人ができたので、料理上手になって胃袋をつかみたい」「結婚が決まったので料理を覚えたい」と入会する人がいる一方で、レストランの開業を控えて技術の向上を目指す、「本気」の人もいる。「開業目的の人が入会してくるとは、想像していなかった」(木村ユニット長)という。
内覧会の事業内容を説明するRIZAPイノベーションの木村臣宏・ユニット長。
こうした、多様な顧客の目標達成に「コミットする」という点は、RIZAPグループの主力事業であるトレーニングジムと共通する。
21日の池袋店の内覧会では、各社の記者・ライターが、トレーナーから料理の個別指導を受けた。
筆者を指導してくれたのは、トレーナーの樋詰尚哉(ひづめ・なおや)さんだ。北海道出身で、高校を卒業後、フレンチレストランでの修行ののち、日本料理の道へ。ホテルの副料理長も務めている。今年8月に入社したばかりで、トレーナーとしても、筆者の指導が事実上の「デビュー戦」だという。
一対一で指導を受けるRIZAP COOKの作業台。
池袋店には、個別指導のための教室が8部屋ある。IH調理器、食器を洗うシンク、作業台がある。この日の献立は、「鯛のしんじょ蒸し」と「季節野菜の和え物〜練り白味噌がけ」の二品だ。
樋詰さんから最初に質問されたのは、やはり「普段、料理されますか」だった。筆者は「たまに、料理をすることがあります」という程度だ。
昆布とかつお節でとった一番だし。
体験レッスンは、かつお節と昆布で一番だしをとる作業からはじまった。
かつお節は、火を止めてから入れる。味見をしながら樋詰さんが言う。
「市販の粉末のだしに慣れていると、ちょっと弱いかなと思うかもしれないですが、これが本来のだし。食材のうまさを一番引き出してくれるんです」
しんじょは、白身の魚とやまといもなどをすり鉢ですりつぶす。根気よくすりつぶしていると、だんだん粘り気が出てくる。一番だしに使った昆布の上に鯛の切り身としんじょをのせて蒸し器で蒸す。ちょっと手間はかかるが、思ったより簡単だ。
筆者が盛りつけをした「季節野菜の和え物」。
野菜の和え物ができあがると、「盛り付けをしてみてください」と、樋詰さんの指示。上の写真が、超不器用な筆者が盛り付けた和え物。下の写真は、樋詰さんが手直ししてくれた盛り付けだ。両者の違いは明らかだろう。
樋詰さんが説明してくれた盛り付けのコツは二つ。
トレーナーの樋詰さんが手直しした盛り付け
一つ目は、日本画をイメージすることだ。日本画では例えば後方に大きな富士山があって、前方に人がいるなど、前に小さいものを配置して、後方に大きく高さのあるものを配置することが多い。野菜の和え物では、後方に高さのあるたけのこ、前方にいんげん豆とエビを配置した。
二つ目は、慣れない人は広い皿を広く使いがちだが、広い皿の中央を使って、高さを出すと、「かっこいい」盛り付けに仕上げやすいという。エビのむき身も、皿の上に寝かせるのではなく尾側と頭側の身を少し切って、アーチ状にエビを立たせることで高さを出している。
標準的なコースは、一回80分のレッスン10回に加えて、自宅でつくった料理をオンラインで指導してくれる。「3カ月でメニューを100種類覚えたい」「開業に備えて技術を高めたい」といった個々の目標の達成をトレーナーとともに目指す。最も安い10回のコースで入会金5万円と29万8000円(いずれも税別)。値段もRIZAP流だ。
RIZAPグループは今期中に、10店舗程度のRIZAP COOKの展開を計画しているという。
(撮影:小島寛明)