「いわば子育てガイドのプライベートジェットまたはボトルサービスだ」と語るCognition Buildersの創設者。
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- 行動に問題のある子どもを持つ両親の自宅へ「家庭建築士」を派遣するサービスを提供している会社をNew York Magazineが取材、その内容が明らかとなる。
- コグニション・ビルダーズ(Cognition Builders)と呼ばれるその会社はセキュリティカメラ「Nest Cam」を家中に設置し、24時間体制で家の中を監視する。
- プログラムの費用は1家族につき8万ドル(約870万円)。
子供に惜しみなくお金をかける親のことを英語で「ヘリコプター・ペアレンツ」と呼ぶが、この「家庭建築士」を派遣するサービスを提供する会社は、ヘリコプター・ペアレンツの意味をまた別の次元まで拡大しそうだ。
New York Magazineの調査レポートによると、コグニション・ビルダーズ(Cognition Builders)と呼ばれる会社に依頼し、家庭を立て直そうとする行動に問題のある子供を持つ親が増加しているという。
「建築士」はセキュリティーカメラNest Camを使って、家族のやり取りを24時間体制で観察。これにより家庭内の親子のやり取りの全てを見聞きすることが可能となる。何か改善する必要がある場合、または問題が起きた場合は、両親へテキストを送信、またはカメラから直接話しかけることにより介入する。映像は1日ごとにレポートとしてまとめられる。何が起きたか、前進するためにはどのようなルールの導入が必要かなどがレポートの内容には含まれる。
キム・ブルックス記者によると、これは「スーパーナニーによるライフコーチングをAmazon Echoよりも強力なデバイスを使って行う」ようなものだ。そしてその費用は決して安くない。〈ナニー(Nanny)とは、親に代わって子守や子育てを行う人〉
ある家族は、1時間125ドル(約1万3600円)で4カ月間、総額8万ドル(約875万円)を支払ったという。また、ブルックス記者が話を聞いた4人の子供を持つ母エリザベスは5週間で7万ドル(約765万円)を支払ったという。「1千万円以上を費やした」という家族の報告もある。
「費用は1時間ごとに発生し、そのレートも変動します。それだけの金額を支払うのであれば、ベビーシッターを5人雇えたというのに。コンサルタントに私は言いました、これはビリオネア向けのゲームね、ミリオネアにはとても無理です、と。これは極めて特殊な階層向けのサービスです。」
富裕層に関する調査によると、裕福な家庭で育つ子供が非行に走る可能性は低所得者層と「ほぼ同等である」とされている。しかし、親や仲間を騙したり、盗みを働いたりする例は多いという。調査によると、保有する資産額のみで、素直で礼儀正しい子供が育つかどうかを判断することはできないが、プロの手をお金で借りることはできるだろう。どうやら、そこがコグニション・ビルダーズが狙っている市場だ。
この会社が行っているプログラムはセラピーの一種のようにも思えるが、「家庭建築士」は免許を取得した心理学者ではない。彼らはむしろ、大学を卒業したばかりで、「子供との接し方を観察し、変更を提案し、指示通りに行動しているかどうかを確認する」若者たちだ、とブルックス記者は説明する。顧客の多くは、精神科医や社会福祉士などの専門家にも相談をしている。
子供の気持ちではなく、子供の行動をコントロールしようとすることは、子育ての方法としてあながち間違っているわけではないが、やりすぎると、「ヘリコプター・ペアレンツ」または、子供の行く手の邪魔になりそうなあらゆるものを先回りして排除してしまう「芝刈りペアレンツ」と化してしまう。子供から選択の自由を奪ってしまうことや、危険がやってくる前にその要素全てを排除してしまうことは、子供の精神的な成長を妨げる危険性を伴う。
コグニション・ビルダーズは職員を派遣し、数多くの問題に取り組んでいく、例えば、テクノロジー中毒、粗悪な振る舞い、兄弟けんかなどだ。また「食を専門とした家庭建築士」も在籍しており、24時間体制で食生活に関するアドバイスを受けることも可能だ。
あえて宣伝をせず、口コミに依存する同社は、2006年の設立から毎年125%の成長を維持していると、コグニション・ビルダーズ・創設者のIlana Kukoff氏はブルックス記者に語った。このユニークなアプローチは全ての人を対象とするものでは決してない。実際のところ、このプログラムは富裕層家庭のニーズのみに焦点を当てている。
「子育ては学習可能で、適正化可能なプロセスであると信じて疑わない親ほど、外部に支援を求めることに抵抗がない。コグニション・ビルダーズは外部支援の中でも最高級のハイエンドモデルだ」とブルックス記者は報じている。「いわば子育てガイドのプライベートジェットまたはボトルサービスだ。これはブログや本には決して書かれていない類のものである」
[原文:People are paying $80,000 for 'family architects' to fix their kids through 24/7 surveillance]
(翻訳:まいるす・ゑびす)