Facebook、CEO最側近がハードウエア事業統括へ —— 開発中デバイス、新体制でリリース近づく

アンドリュー・ボズワース氏とマーク・ザッカーバーグ氏

Facebook古参の幹部アンドリュー・ボズワース氏(写真左)。同社の消費者向けハードウエア開発全般の責任者だ。

Facebook

  • Facebook幹部のアンドリュー ・ボズワース(Andrew Bosworth)氏が、同社の消費者向けハードウエア開発全般の責任者に就いた。
  • 統括範囲には同社の子会社オキュラスVR(Oculus VR) やFacebook新部門「Building 8」が含まれ、後者は未発表のビデオ通話デバイス(コードネーム「Aloha」)を開発中だ。
  • Alohaは、Building 8が開発している数々の消費者向けデバイスの中でも、最初にリリースされる見込み。Building 8は他に、スマートスピーカー、360度カメラ、未来志向のウエアラブル端末を開発中。

Facebookは、最古参の幹部の一人アンドリュー・ボズワース(Andrew Bosworth)氏を、消費者向けハードウエア開発全般の責任者に任命した。

同氏は今後、近日発表予定のビデオ通話デバイスに取り組んでいる同社の新部門「Building 8」や、子会社でVR(仮想現実)技術の開発を行うオキュラスVR(Oculus VR)を監督する。この人事は、Facebook CTOのマイク・シュレーファー(Mike Schroepfer)氏による最近の社内告知から明らかになった。またBusiness Insiderは8月23日水曜日(現地時間)、同社広報担当者から裏付けを得た。

「我々はVR、AR(拡張現実)、消費者向けハードウエアに対する長年の取り組みに、大きな期待を抱いている」とFacebook広報担当者は語った。「こうした新技術は、世界を全く新しい仕方でより密に結びつける可能性を持っている。我々はこれらの各分野で、強いリーダーが率いる素晴らしいチームを築いてきた。これらのチームを密接に協働させることで、我々は歩みを加速させるとともに、引き続き10カ年計画で取り組んでいく」

ボズワース氏は長年にわたって、Facebookの広告およびビジネスプラットフォーム担当副社長を勤めてきた。また、同社のニュースフィードおよびMessenger開発の初期に貢献した。入社から10年以上を数える同氏は、同社CEOマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏の側近中の側近だ。

同氏のこれまでの担当業務は、長年の同僚である広告エンジニアリング責任者、マーク・ラブキン(Mark Rabkin)氏に引き継がれる。

今回の人事は、Facebookが消費者向けハードウエア事業で直面した課題に対する解決策だ。同社はアップル、グーグル、マイクロソフトなどのライバル企業に遅れを取らないように、人材と技術の獲得に多額の資金を投じてきたが、その多岐にわたる取り組みには全てを集約する機能が欠けていた。その解決のために同社は現在、さまざまなハードウエアチームをボズワース氏の下にまとめ上げようとしているのだ。

同氏はさらに熟練のビジネスリーダーとして、ここ数カ月間で主要スタッフの相次ぐ離職に見舞われたBuilding 8チームをまとめる。離職者の中には、同チームCOOリチャード・ウールドリッジ(Richard Wooldridge)氏、消費者体験責任者ドナルド・ヒックス(Donald Hicks)氏、プロダクトマネジメント責任者オリビエ・バーソロト(Olivier Bartholot)氏がいたことが、関係者への取材でわかった。

ボズワース氏直属の部下の中には、前シャオミ(小米)幹部で最近FacebookのVR担当副社長に就任したヒューゴ・バーラ(Hugo Barra)氏や、元アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)ディレクターのレジーナ・デューガン(Regina Dugan)氏が入ることになる。デューガン氏は2016年4月、Building 8設立のためにザッカーバーグ氏によってグーグルの先端プロジェクト部門から引き抜かれた

プロジェクト「Aloha」

スマートスピーカー「Amazon Echo Show」

スマートスピーカー「Amazon Echo Show」。FacebookのBuilding 8から近日リリースされるビデオ通話デバイスは、この製品と同様の機能を搭載すると見られる。

Amazon

Building 8は心を読む技術や、皮膚を通じて言語を理解できるセンサーに取り組んでいるが、そうした未来志向の野心的プロジェクトについて、公にはほとんど何も明らかにしてこなかった。そのような中で、同チームから最初にリリースされる消費者向けハードウエアは、アマゾンから最近発売されたスマートスピーカー「Echo Show」に似たビデオ通話デバイスとなりそうだ。

現在コードネームで「Aloha」と呼ばれているそのデバイスには、大きなタッチスクリーン、カメラ、スピーカーが搭載され、顔認識機能が導入される予定だ。関係者3人の話から明らかになった。

Alohaのプロトタイプは、過去数カ月にわたってFacebook従業員の家庭でテストされた。リリースは今のところ、2018年5月に予定されている。アメリカでは499ドル(約5万5000円)での販売が検討されているが、最終的な価格は決まっていないという。関係者の1人が明かした。リリース時期は今後変更される可能性もある。

Building 8がこのデバイスの開発にあたって直面したハードルの1つは、Facebookのプライバシーポリシーに対する消費者の不信感だという。複数の関係者がそう語った。また関係者の1人によると、同社がプロジェクト「Aloha」のためのマーケティング調査を実施したところ、同社がそのデバイスを使ってユーザーの個人情報を不正に収集するのではないかと懸念する声が多数寄せられたという。

プライバシーに関する懸念を和らげるために、FacebookはAlohaのプロモーション方法を検討してきた。例えば、高齢者が家族と簡単にコミュニケーションできるデバイスとして売り出すなどだ。Building 8の従業員もまた、Facebookではない新しいブランドを作ってガジェットを売り出すことを検討してきた。

Alohaの開発が始まったのは、Facebook幹部らがアマゾンの初代Echoのヒットを目の当たりにした後だったという。現在社内では、 Echo ShowがAlohaの主なライバルと見なされていると関係者は話した。

Facebookハードウエアの未来

シュレーファー氏、デューガン氏、ザッカーバーグ氏がソファーに座り、話に花を咲かせている。

左からFacebook CTOマイク・シュレーファー氏、レジーナ・デューガン氏、CEOマーク・ザッカーバーグ氏。

Facebook

Building 8が開発しているのは、家庭用ビデオ通話デバイスだけではない。

関係者によると、Alohaの他にも、オリジナルの「Amazon Echo」により近いディスプレイなしのスマートスピーカー、360度カメラ、スマートグラスやセンサー付きネックレスなどのウエアラブルデバイスに取り組んでいるという。

Alohaを始めとするBuilding 8のプロジェクトに関してFacebookはコメントを控えた。

今のところ消費者向けハードウエアの販売経験に乏しいFacebookが、アップルやグーグルなどの経験豊かな企業を相手として、利益幅の薄さと調達・生産・販売過程の複雑さで知られる厳しいビジネス分野で、戦いを挑んでいる。主力製品であるオキュラスVRのヘッドセットの売り上げは、競合相手から大きく水をあけられてきた。オキュラスVRは現在、現実世界の像に仮想のオブジェクトを重ねて描き出す未来志向のスマートグラスの開発に取り組んでいるが、実現にはまだ数年かかりそうだ。

FacebookのBuilding 8はオキュラスVRとは全く別の部門であって、グーグルの先端技術グループ「ATAP」や、同じくグーグルの自動運転車を生んだ野心的プロジェクトラボ「X」に似た位置付けだといえる。ATAPは、リーダーだったデューガン氏がBuilding 8に移った後、最近グーグルのより大きなハードウエア部門に組み込まれた

デューガン氏は2017年4月開催のFacebook年次開発者カンファレンスで、 Building 8のゴールはマススケールで「ソーシャル・ファーストの決定的製品を開発・販売すること」だと述べた。Building 8は、ザッカーバーグ氏が何億ドルもの資金を投じるつもりだと述べたことがあるほどの部門で、開発したガジェットを実店舗とオンラインストアで売り出すことを計画している。

「レジーナにFacebook入社を持ち掛けたとき、『これはチームがやりたいことを何でもやる出任せのアイデア工場ではない』ということを話しておいた」

FacebookのCTOマイク・シュレーファー氏は、以前Business Insiderに対してそう語った。

「チームがミッションに直接関わることに集中することを期待している」


sources:Facebook、Amazon

[原文:Facebook is unifying its hardware efforts under a veteran exec and readying an ‘Aloha’ video chat device

(翻訳:原口 昇平)

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