25歳の「複業論」:有名IT企業勤務“自撮ラー女子りょかち” —— 巻き込み力と「おかげさまフィードバック」とは?

SNS上で次々にアップされる「自撮り」の写真が「可愛すぎる」と一躍話題の「りょかち」こと松田涼花さん(25)。さらに自身のブログやTwitterで独自の自撮り論、インターネット文化に関する執筆を展開し、今年5月には著書『インカメ越しのネット世界』を出版。

「自撮ラー」としてトークショーやワークショップなどに引っ張りだこだが、実は人気IT企業に勤める会社員。現在、入社2年目で、企画職としてIT業界の最前線で働く。

複業研究家の西村創一朗さん(29)が、そのリアルな複業家ライフを聞いた。

りょかちさんから自撮りを習う西村さん

自撮りをうまく撮るポイントは「光と角度」だとか。「頭の上の方が切れるように画面に収まると、小顔に見えますよ〜」と指導するりょかちさん。

撮影:今村拓馬

りょかちさんに学ぶボーダレスワーカー術

社内の人も巻き込んで、仲間をつくる

・「何をやるか」ではなく「なぜやりたいか」にこだわる

・目の前のことを100%楽しんでインプット

奇跡の1枚から始まった

まずは、りょかちさん自薦のイチオシ自撮り作品がこちら。

自撮りのりょかちさん3枚分

これが厳選、究極の自撮り写真だ

提供:りょかち

最初にSNSにアップしてから2年近く経っているというのに、いまだにリツィートされることも多いという自撮りの名作の数々。最初は「偶然の産物」だったのだとか。

りょかち:就職が決まって、IT企業に入るんだから流行りのアプリも分かっていないとな、といろいろ触っていたら、たまたま「奇跡の1枚」が撮れたんです(笑)。これ、「ネットにあげたらめっちゃウケるだろうな」と思ってあげたら、予想以上に拡散して。もともと文章は好きで、自分なりに「なぜ自撮りを撮るのか」という文章をブログで書いたら、それがまたバズって、出版社の人の目にも留まったという経緯なんです。

西村:IT企業はもともと目指していたんですか?

りょかち:いえ、本当は出版社に入りたくて就活留年までしたんですが、挫折しちゃって。文章はもともと人に褒めてもらえる領域だったので、学生時代からキュレーションメディアで書く仕事を請け負って、なんでもやっていました。

でも、「なんでも書きます」で数だけをこなしていると、納得できる内容も書けないし、精神的に消耗してしまって。「メディアに自分の記事を載せてメディアを作るのではなく、メディアを無理なく存続させる仕組みを作る側にならないとダメだ」と思って、それができるところはどこかと考え直して、メディアという形にこだわらなくとも、WEB上で情報を発信していくことについて企画できるインターネット企業を選びました。

西村:書くという表現手法に限定せず、視野を広げて“サイドチェンジ”したんですね。

レアカード化の名人

りょかち:私は壁にぶつかるといつもその方法を取ってきたかもしれません。大学進学のときも、人の集団やコミュニティーを学ぶために大阪大学社会学部を第1志望にしていたんですが、直前で無理そうだと分かったとき、「人の集団が最も集積しているのは企業組織じゃないか」と考えて神戸大学経営学部に志望を変えました。

笑顔のりょかちさん

「文化祭がいまのSNSでの活動の原点」

撮影:今村拓馬

西村:すごい高校生だったんですね。「人の集団やコミュニティー」に興味を持った原点は?

りょかち:文化祭が大好きだったんです。特に印象的だったのは、中3のときに監督をさせてもらった演劇。結構、アウトサイダーな子も多い公立校だったんですが、作品は金賞を取って、出演した子たちもその親や先生まで喜んでくれました。あの時の、クラスというチームを動かして一つのものを作った経験や、ステージ上から見えた皆の顔からもらった感動は、今、私がSNSを通じて感じられる「人の集団やコミュニティ」の原点ですね。

西村:なるほど。今につながっているんですね。

りょかち:今やっている目の前のことについとらわれてしまうけれど、実際に心を動かされているものは何か、立ち返って考えてみることがきっと大事。すると、違う選択肢が見えてくるんですよね。

私が本当にやりたいのは「書く」ことではなくて、皆に発信してリアクションを得ることなんじゃない? と。さらに、今までやってきたことと、新たに見つかったことを掛け合わせたら希少価値になる

西村:それがまさに複業の真価だと思います。りょかちさんの場合、「自撮ラー」というコンテンツと、「書ける」というスキルが同時に備わっているから、出版というチャンスを引き寄せた。自分をレアカード化させるのが非常にうまいなという印象です。

りょかち:たしかに希少価値にはこだわっています。学生ライター時代に「誰でもできる仕事」で消耗した経験があるから、今は「私しかできない」にこだわりたいんです。

オープンに自分をキャラ化

入社時には趣味としての自撮り女子活動だったが、入社3カ月目には出版社から声がかかり、執筆に収入が生じる“業”に発展した。

インターネット上で確固たるキャラクターを築き、本を出版するまでになると、「会社を辞めて独立」という選択肢もちらつきそうだが、りょかちさんは「本業もあってこその私。会社を辞めたいと思ったことは一度もない」と言い切る。

西村:りょかちさんが複業にこだわるのはなぜですか?

りょかち:寂しがりやだから(笑)というのもありますが、一番は二つの仕事をやっているからこそのシナジー効果が大きいからです。

個人の動き方と組織の動き方は違うし、一人で作り出せる表現と、チームで作れる表現は全然違う。スキルが同時並行的に身についていく感覚があるし、「若者のネット文化に精通している人」というバックグランドがあることで、社内で意見が通りやすい実感もあります

時々時間が足らなくて眠いことはあるけれど、両輪あることでメンタルも安定するんですよね。“お互いの自分”に助けられている感じかな。会社の理解あってこそ、なんですけどね。

スマホと会社のキャラクターと

日々のタスク管理や目標整理は紙の手帳。1週間単位で予定を立てて、「今日できなくても明日できればいい」ペースを保つ。TO DOやネタのメモはエバーノートを活用。「仕事」「ライターワーク」などテーマごとに分納。

撮影:今村拓馬

西村:その会社の理解を得るために、意識づけしていることはありますか?

りょかち:まずは後ろめたいと思わずに「私、自撮りが趣味なんです」といろんな場面で公言すること。オープンに自分をキャラ化する。それと、上司や同僚をポジティブに巻き込むことがすごく大事だと思っています。上司からのアドバイスも記事に書いたりして、「こんなふうに書かせてもらいました」ってまめに報告しています。

西村:おぉ!「おかげさまフィードバック」ですね。

りょかち:はい(笑)。あと、複業をしているからこその強みは、どんどん本業に返すようにしています。例えば、カメラ機能に関する意見を求められる場があれば率先して手を挙げる。“組織でも役立つ人”になることはすごく意識しています。

西村:なるほど。組織にも価値を返して、さらに自分をレアカード化する。理想的な複業の形ですね。

りょかち:自撮ラーとして声がかかる世界も広がっているので、自分でもすごく楽しみです。

西村創一朗の「きょうの複業家ポイント」

西村さん

撮影・今村拓馬

「自撮り」というミレニアル世代らしい自己表現を学生時代から続けていたりょかちさん。僕らの世代ならば、そうした自己表現活動は社会人になるとともに「卒業」をするか、「匿名活動」に切り替えるかどちらか、という人が圧倒的に多かった中、会社にも了解を得ながら堂々と活動をしているりょかちさんを見ると、今の20代のキャリア観の輪郭がなんとなく見えてきます。

これからは、「隠れキリシタン」のように会社に黙ってコソコソと副業をするのではなく、誰もがりょかちさんのように、会社員としての仕事と、社外のプロジェクトの両方をパラレルにこなしつつ、相乗効果を発揮してイキイキと働く、という働き方がスタンダードになるのかもしれません。「大複業時代」の胎動を感じます。

「個人の動き方と組織の動き方は違うし、一人で作り出せる表現と、チームで作れる表現は全然違う」と語るりょかちさんが「自撮りの次」としてどんな未来を見据えていて、どんな価値創出をしていくのか、これからも目が離せません。


りょかち:1992年、京都府生まれ。神戸大学経営学部卒業後、2016年に緑のアイコンで有名なIT企業に新卒入社。企画職として働く傍ら、「自撮ラー」として活動。若者文化やセルフィーアプリ専門家として、メディアやイベントにも登場。

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