ハーバードが招いた渋谷HRテックCEO —— 新幹線「7分間の奇跡」の次はAI人事アプリ

日本の新幹線の車内を驚異的なスピードで清掃する術は「7分間の奇跡(7-Minute Miracle)」として、米ハーバード大経営大学院(HBS=ハーバード・ビジネス・スクール)が授業で取り上げて話題となり、国内外のメディアで報じられた。そのHBSは9月12日(現地時間)、東京・渋谷でHRテック企業を経営する一人の日本人を授業に招いた。人工知能を使った、人事採用をサポートするためのユニークなスマートフォンアプリを学生たちに紹介するためだ。

福原正大氏とイーサン・バーンスタイン助教授

ハーバード・ビジネス・スクールのイーサン・バーンスタイン助教授(右)が着目する、AIを使った人事採用アプリ「GROW」。福原氏(左)は9月12日、HBSの授業に招かれた。

提供:IGS

福原正大氏が招かれたのは、HBSの「Human Capital Management(人的資本マネジメント)」の授業。レクチャーを進めたのは、イーサン・バーンスタイン(Ethan Bernstein)助教授で、リーダーシップと組織行動が専門だ。「7分間の奇跡」をケーススタディとして取り上げた人物である。

福原氏が率いるInstitution for a Global Society(IGS)が開発したサービスは2つある。

1つは人工知能(AI)を活用し、中学・高校生を対象とする英語のライティング(文章作成)を修正・添削するプラットフォーム「e-Spire」で、もう1つはAIを搭載した、人の潜在的なコンピテンシー(能力)や気質を科学的に測定し、企業の採用人事をサポートする「GROW」だ。

バーンスタイン氏が着目したのは、三菱商事や全日本空輸(ANA)などの企業が導入した「GROW」。日本の人事系のテクノロジー企業をリサーチするうちにIGSを知り、技術の革新性に注目したという。

この日の授業にはビジネススクールの約180人の学生が参加。バーンスタイン助教授は、 企業の採用プロセスでは、採用担当者の直観と人工知能のどちらを信用すべきかという問題をあげた。そして、学生たちは「GROW」のケースをもとにディスカッションを進めた。データをもとにした企業の人事や採用について議論し、学生の間では、AIに与えるデータの質が重要であるという意見があがった。

英語エッセイの採点時間を4分の1に

IGS

約30人のスタッフが働く渋谷区神南にあるIGSのオフィス。

Business Insider Japan

IGSは2010年設立。渋谷区神南にあるオフィスでは約30人が働いている。メタップスの創業時にCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を務めた中島正成氏、ゴールドマンサックスに勤務していた田嶋周平氏の他に、台湾出身で、京都大学で自然言語処理や機械学習を研究したデータサイエンティストらが黙々と仕事をしている。

代表取締役社長の福原氏は、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(Barclays Global Investors=米ブラックロックが2009年に買収した大手資産運用会社)でマネジング・ディレクター(MD)を務めた後、世界の金融界や産業界でリーダーとして活躍できるような日本人を育成したいと考え、IGSを創業した。

初めに開発したサービスは「e-Spire」だ。高校や大学、塾における英語エッセイのテストの基本的な採点を人工知能を用いて処理するというもの。従来、教員が1週間あたり費やすエッセイの採点作業は約400分と言われるが、「e-Spire」はその作業時間を100分に短縮することが可能だという。国内ではすでに15の高等学校が「e-Spire」を導入している。IGSは2019年3月までに中高・大学で50校の導入を目指す。

「日本の学生は諸外国の学生に比べて、アウトプット型である英語のスピーキング力やライティング能力が著しく低いですよね。各国のエグゼグティブが集まる会合で、一人黙ってしまう日本人を多く見てきました。一方で、教育の現場では、高等学校の英語教師が、エッセイの採点で膨大な時間を費やし、疲弊していると聞きます。英語教師たちを救うペインキラーはないかと考え、e-Spireを作りました」(福原氏)

個人の潜在意識を探り最良のマッチングをする

福原正大氏

「各国のエグゼグティブが集まる会合で、一人黙ってしまう日本人を多く見てきた」と話す福原氏。

Business Insider Japan

一方GROWは、企業や政府機関などの採用プロセスを支援するアプリで、アメリカで開発された潜在意識を診断する技術(潜在連合テスト=Implicit Association Test)をもとに作られている。

人工知能により、スマートフォン上で行う診断テストの指の動きで、人の気質や潜在意識を評価・診断する。企業の新卒採用のマッチングやスクリーニング、組織分析などを目的として、すでに50社以上で導入されている。

福原氏は、

「個人の潜在意識、いわばリアリティを探し出して、個人にとっても企業にとっても最良のマッチングを可能にできないかと考えました。潜在能力を引き出すための採用や人材の配属ができれば、企業にとっても個人にとっても良いわけです」

と話す。

「人材における企業と個人との不一致は、両者にとってロスが大きいですよね」

IGSはこれまでに、東京大学エッジキャピタルや東京理科大インベストメント、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)などから約5億円の資金を調達している。

今後、自然言語処理や機会学習を中心とする人工知能の研究・開発に投資し、教育と人材育成事業のサービスをさらに強化しながら、「eSpire」と「GROW」の海外販売を強めていくという。福原氏によると、同社は2020年の株式上場を目指している。

IGS「GROW」

IGS HPより


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