Junko Kimura/Getty Images
10クラブでの発足から57チームにまで拡大したJリーグ。節目となる25年目の2017シーズンが2月25日、ついに開幕を迎える。
ワールドカップとは無縁だった“サッカー小国”から、いまやアジアのサッカー大国に成長した日本。だが、世界のサッカー界も常に進化を続けている。AFCチャンピオンズリーグでは選手を“爆買い”する中国や韓国のクラブの後塵を拝した。欧州との差は縮まるどころか、逆に引き離されているのが現状かもしれない。
そんな中、今年はJリーグにとって歓迎できるいくつかの要素がある。
1)パフォーム・グループが放映権を獲得
1つは英国のパフォーム・グループが過去最高額(10年間、約2100億円)で放映権を獲得し、DAZNというインターネット配信サービスを開始すること。この「軍資金」が、各クラブの強化につながることはもちろんだが、今までテレビで観るものだったサッカー中継が、スマートフォンでどこからでもアクセスできるようになる。これがファンの拡大にどのような効果をもたらすか、注目したい。
2)財務基準の緩和等、クラブ運営に関する方針の転換
来季から1シーズン制が復活、選手の疲弊を緩和するような試合日程が組まれる。また、議論が続く秋春制への布石ともいえる、2月の仙台(豪雪地)の試合開催も予定される。
クラブのライセンス制度に関する財務基準も緩和された。これまではどのクラブにも(まるで行政が運営しているような)厳しい財務基準があったわけだが、今後は「ハイリスクで勝負に出るベンチャー企業」のような投資マインドのクラブ経営にも道が開けることになる。
さらに、保有選手については、条件のない外国籍枠の登録を5つ(選手)に拡大、日本人選手を「保護」するのではなく、「競争」させることで育てる方針に変わった。
3)スペインからの人材登用
2017年シーズンの優勝クラブは賞金と合わせて3年間に渡って総額18億5000万円を受け取ることができるようになる(年度ごとの成績に応じ、最長3年間に渡って「理念強化配分金」が支給されることになった)。優勝を目指して、各クラブはすでに手を打っている。選手補強合戦は激化し、指導者の獲得についてもこれまでにない“新たな風”が日本のサッカー界に吹き込んでいる。たとえば、J2の徳島ヴォルテスと東京ヴェルディがスペイン人指揮官を招聘した。
スペインの“黄金時代”は2008年の欧州選手権優勝に始まった。その後、2010年のW杯優勝、2012年の欧州選手権優勝と栄光の時代は続き、今に至る。スペインの“黄金時代”が始まった頃から、日本は自らが手本とするサッカーのスタイルを従来のフランス式からスペイン式に切り替えてきた。
日本が目指すべき手本と謳われるスペインサッカーからJリーグへの人材登用が本格的に始まったわけである。もちろん、代表チーム等、一部で交流はあったものの、選手や指導者、スタッフの獲得については、日本のクラブにはなかなか手が届かなかった。世界第一級の人材供給元であるブラジルサッカー市場の相場の高騰や、Jリーグ加盟クラブの資金増も勘案すると、今後はスペイン人監督の登場も予想できる。
真に国際的な競争力のあるリーグへの脱皮を目指し、大きく舵を切った今年のJリーグに注目したい。
不定期連載:OFF the FOOTBALL(オフ・ザ・フットボール)
フットボールという範疇に収まる競技(「サッカー」「ラグビー」「アメフット」等)を様々な視点でざっくばらんに論じるコラム。フットボールにおいては、1選手が1試合にボールを保持できる時間は非常に限られている。つまり、大半の選手はプレイ時間のほとんどをボールがない状態で「プレイ」する。このことを「オフ・ザ・ボール」という。ボールを持って活躍する華やかな瞬間と比べると、甚だ地味な時間(=「オフ・ザ・ボール」)だが、実はこの時間をどれだけ充実させるかが、フットボールにおいては勝敗の行方を左右する。