難民からテック界のスーパースターへ —— ウーバー新CEOに就任したコスロシャヒ氏の驚くべき半生

ウーバー(Uber)は8月27日(現地時間)、エクスペディア(Expedia)のCEOダラ・コスロシャヒ(Dara Khosrowshahi)氏を次期CEOに指名、30日、同社はコスロシャヒ氏が指名に応じたと発表した。

同氏は苦難と脚光の両方を体験する類まれな人生を送ってきた。

イランで生まれ、難民からテック界の大物へとのぼり詰めた、その半生を見てみよう。


コスロシャヒ氏は48歳。イラン生まれ。

コスロシャヒ氏

AP


裕福な家に生まれた。コスロシャヒ家は医薬品から化学製品、食品、流通までを手掛けるイランを代表する企業グループの創業家だった。しかしイラン革命で事業を接収・国営化され、一家は国外脱出した。

子ども時代

イランで子ども時代を過ごした。

Dara Khosrowshahi via Bloomberg

出典:Canadian Business

イラン難民としてアメリカに着いたのは9歳のとき。ニューヨーク州タリータウンに居を構えていた叔父のもとへ身を寄せた。マンハッタンの北方約40キロ、ハドソン川東岸に位置するこの街は、1906年にロックフェラー家が邸宅を建てるなど歴史的に富裕層の住む地域。

ロックフェラー家の豪邸

タリータウンにある「カイカット」と呼ばれるロックフェラー家の豪邸。

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コスロシャヒ氏と、いとこたちは名門の私立小学校ハックレースクールに入学。俳優のジョージ・ハミルトンや石油王フレッド・コークを輩出した学校だ。移住後の生活について、同氏は懐かしそうにこう語っている。「大人にとっては大変なことだった。だが子どもにとっては、みんなが集まることができて楽しいことばかりだった」

ハックレースクール

ハックレースクール

Wikipedia

出典:ブルームバーグ

叔父には、大富豪のハッサン・コスロシャヒ(Hassan Khosrowshahi)氏がいる。イランから脱出する時にカナダに行くことを選び、エレクトロニクス企業フューチャーショップを創業、後にベストバイに売却した。その後、医薬品から音楽まで、さまざまなライセンスを扱う企業を設立した。

カナダの大富豪、ハッサン・コスロシャヒ氏。

カナダの大富豪、ハッサン・コスロシャヒ氏。

Wikipedia

出典:Canadian Business

つまり、コスロシャヒ氏はエクスペディア以上に、実業界やIT業界に一族の強力なネットワークを持っている。

エクスペディアのロゴ

Expedia


例えば、兄弟のカーヴェ・コスロシャヒは、サンバレー・カンファレンスの主催で知られる投資銀行アレン・アンド・ カンパニーのマネージング・ディレクター。いとこのアミール・コスロシャヒ氏はネバダ州で共同創業したAI企業を昨年、4億ドルでインテルに売却し、自身もインテル入りしている。また双子のいとこ、アリ&ハディ・パルトヴィ兄弟は、2009年に2000万ドルでスタートアップ企業をマイスペースに売却。その後、エアビーアンドビー、ドロップボックス、ウーバー、フェイスブックなどに出資し、学生向けのコンピューターサイエンス学習支援NPO、Code.org.を立ち上げた。さらにグーグルの幹部にもいとこが何人かいる。

アリ&ハディ・パルトヴィ兄弟

アリ&ハディ・パルトヴィ兄弟

Crunchbase

出典:ワシントン・ポスト

しかし、イランを離れた後の人生すべてがバラ色というわけではない。コスロシャヒ氏が13歳のとき、祖父を世話するためにイランに戻った父親は以後6年間、出国を許されなかった。

イラン革命

AP Photo/Michel Lipchitz

出典:ブルームバーグ

アイビーリーグのブラウン大学で電気工学の学位を取得した後、金融業界でキャリアをスタートさせた。1990年代はアレン・アンド・カンパニーで仕事をした。現在も同社主催のサンバレー・カンファレンスによく出席している。

コスロシャヒ氏とマイスペースの元CEOオーウェン・バン・ナッタ氏

コスロシャヒ氏とマイスペースの元CEOオーウェン・バン・ナッタ氏。2014年サンバレーにて。

Scott Olson / Staff


その後、テレビ局USAネットワークの幹部となり、立ち上がったばかりのストリーミング事業に取りくんだ。「完全な失敗だった」と同氏は当時を振り返っている。「広告でいくら稼いでも、コンテンツのコストがそれを上回っていた。やればやるほど損失が生じた」

USAネットワークの番組表

USA Network


だが、コスロシャヒ氏の評価が下がることはなかった。メディア界の大物バリー・ディラー(Barry Diller)氏が同氏の後ろ盾となっていた。USAネットワークは、インターアクティブコープ(IAC)に改称。2001年7月、2人はマイクロソフトから13億ドルでエクスペディアを買収する計画を立てた。

メディア界の大物バリー・ディラー氏

Michael Seto/Business Insider

出典:ニューヨーク・タイムズ

2カ月後、契約成立を目前にした9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が起きた。旅行業界も大きなダメージを受けた。コスロシャヒ氏にとっても人生の分岐点だった。「我々は撤退することもできた」とバリー氏。「だが人はこれからも生き、旅行をする。そう思って踏みとどまった」

アメリカ同時多発テロ事件

Bill Farrington/AP

出典:ブルームバーグ

CFO(最高財務責任者)兼CSO(最高戦略責任者)として数年が過ぎた2005年、エクスペディアはIACから独立。ディラー氏が会長に、コスロシャヒ氏がCEOに就任した。

ダラ・コスロシャヒ氏

ダラ・コスロシャヒ氏

Thomson Reuters


以来12年間、同氏はCEOを務め、エクスペディアはアメリカ最大のオンライン旅行代理店に成長した。売上は2005年の21億ドルから、2016年は87億ドルへ。良き先輩であるディラー氏や自らの親族と同様、コスロシャヒ氏は複数の企業を率いる才覚に恵まれている。エクスペディアは傘下にHotels.com、Orbitz、Trivago、HomeAway、Travelocityといった旅行サイト、貸し別荘やレンタカーのサイトを収めている。

エクスペディア

Glassdoor/Exedia


エクスペディアの株価も好調だ。1年前の109ドルから、現在は140ドルを超えている。

エクスペディアの株価グラフ

Markets Insider



2015年の業績に満足したエクスペディアの取締役会は、同氏に対して400万ドル近い給与とボーナスに加えて、9100万ドルという巨額の株式を付与した。これによってコスロシャヒ氏は同年、S&P銘柄企業で最高の報酬を受け取ることになった。

コスロシャヒ氏

Expedia

出典:SEC

ただし、これらは5年間の長期契約の一部に過ぎなかった。同氏が2020年までエクスペディアにとどまり、株価が170ドルまで上昇していた場合、さらに巨額の株式が付与される契約になっていた。

コスロシャヒ氏

Kevork Djansezian / Staff


情報筋によると、現時点でその金額は1億8000万ドルに相当する。コスロシャヒ氏はこれを振ってエクスペディアを去ることになる。

ウーバーのロゴ

Thomson Reuters

出典:ワシントン・ポスト

裕福な暮らしを送ってきたコスロシャヒ氏は、報酬が良くなければウーバーの指名を受けなかっただろう。だが、ウーバーは株価の上昇によって、初期投資家を大富豪にしている。コスロシャヒ氏が良い業績を収めれば、彼も大富豪になるだろう。

ウーバー創業者で前CEOトラビス・カラニック氏

ウーバー創業者で前CEOトラビス・カラニック氏。

Thomson Reuters


コスロシャヒ氏は世間の注目を浴びることをいとわない。トランプ大統領に対して率直に批判を展開し、移民政策やシャーロッツビル事件についてのコメントに異議を唱えている。最近では「私は大統領がその務めを果たすべく立ち上がる瞬間を待ち続けているが、大統領は繰り返し裏切っている」とツイートした。

トランプ大統領

Getty Images/Alex Wong


リーダーとしては、ウーバーの前CEOトラビス・カラニック氏とは対照的。フレンドリーで物静か、トラブルがないことで知られている。Glassdoorによると、エクスペディアの従業員の90%以上が同氏を評価している。

エクスペディアの社員たち

Expedia


また、正真正銘のコンピューターマニアでもある。オンラインゲームの「ワールド オブ ウォークラフト」やアマゾンのAIアシスタントAlexaなどに夢中で、音声検索のようなテクノロジーが未来を変えると信じている。

ロボットのイメージ

Reuters/Sam Mircovich


2012年にシドニー・シャピロ(Sydney Shapiro)氏と結婚。夫妻は自分たちのことを「SFオタク」と呼んでいる。ラスベガスで行われた結婚式でシャピロ氏が着たのは、ヘビーメタルバンド、スレイヤー(Slayer)のTシャツだった。4人の子どもがいる。

夫人のシドニー・シャピロ氏と

Getty


source:Dara Khosrowshahi via Bloomberg、Wikipedia、Expedia、Crunchbase、Scott Olson / Staff、USA Network、Glassdoor/Exedia、Kevork Djansezian / Staff、Expedia、

[原文:The amazing life of Uber's new CEO Dara Khosrowshahi — from refugee to tech superstar

(翻訳:Tomoko A.)

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