金融庁も取引動向を注視するVALU —— “集団投資スキーム”との類似点

個人の価値を株取引に似た仕組みで売買するプラットフォーム「VALU(バリュー)」。YouTuberのヒカル氏が、VALU上の株式にあたるVA (VALU内の仮想株のようなもの)を発行した後、価格が上昇した自己保有のVAを売却したため批判が殺到した。こうした事態を受け、運営会社のVALU社は9月4日、1日に売却できるVAを制限することなどを柱に、利用規約を改定した。大量の売買を制限することで急激な価格の変動を抑制する意図があるとみられる。

これまで利用規約ではVALUのサービスを「株式に見立て」と説明していたが、こうした文言を削除した。株取引との違いを示す意図があるとみられる。

金融庁はBusiness Insider Japanの取材に対して、「どのような取引が行われているのか情報を収集し、実態として有価証券に該当する権利などが売買されているのであれば、監督対象として登録を求めることもありうる」として、VALU上での取引実態の把握を進めている。

金融庁

東京・霞が関の金融庁。VALU上での取引動向を注視している。

撮影:小島寛明

独特なVALUの仕組み

VALUは独特なシステムで運営されている。撮影の資金が必要な写真家を例に、VALUの仕組みの説明を試みる。

VALU_Chart

VALUの仕組みのイメージ(VALUの規約などを基に作成、BTCはビットコインを指す)。

制作:小島寛明

上の例では、写真家は、株式市場における株に相当するVAを1000VA(VA:VALUの数量を表す単位)発行し、VALUの利用者に「VALUを買ってくれたら、ポートレートを撮影します」と優待を提示する。この写真家のVAを購入した人はVALUERと呼ばれる。VAの売買には仮想通貨のビットコイン(BTC)が用いられる。VAを発行した時点の価格は、SNSのフォロワー数などを基に算出される。仮に、この写真家がVAを発行した時点の価格を1VAあたり0.0005BTCとすると、VA発行時の写真家の時価総額は0.5BTCになる。

写真家が、VALUを通じて得た活動資金で写真を撮影し、知名度が向上した場合、VAの価格が上昇する可能性がある。VAを保有するVALUERは、優待を受ける権利を行使して写真家にポートレートを撮影してもらうか、価格の上昇したVAを売却して利益を得ることもできる。VAを売買できる点や、優待を設定しなくてもVAを発行できる点にも特徴がある。

VALU上では現在、YouTuber、イラストレーター、漫画家、弁護士、コンサルタント、コスプレイヤーなど幅広い分野の人がVALUを発行している。利用者は、VAの購入を通じて、タレントのように発行者を応援することができる一方で、これから活躍しそうな人を選び、将来の価格上昇を見込んで投資することもできる。

ヒカルVALUページ

VALUの仕組みに疑問が噴出するきっかけになったヒカル氏のページ。

YouTuberのヒカル氏は8月9日にVAを発行。YouTuberとしての知名度の高さや、ヒカル氏がSNS上で「明日一気にバリューで動く!」と発言したこともあって、VAの価格は上昇した。8月15日午後、ヒカル氏らは、自己保有のVAを大量に売却。VAの価格は下落した。ヒカル氏らの行動をめぐり、インターネット上では「インサイダー取引ではないか」との批判が相次いだ。

一連の事態を受けVALU社は、ヒカル氏の所属事務所などに対して、損害賠償などを求める通知書を8月23日付で送付したと発表している。

いまは金融商品取引法の監督対象ではない

インサイダー取引は、金融商品取引法で禁止されている行為だ。ある会社について株価に影響する重要な情報を知り得る立場にある人が、その情報が公表される前に、会社の株式を売買する行為などがインサイダー取引にあたるとされる。

金融商品取引法を所管する金融庁は「所管する法律のもとで登録を受けているわけではないため、現状ではVALUは監督対象ではないが、まったく無関係とも言えない」という立場だ。

金融庁や金融商品取引法の専門家はいずれも、「VALUの仕組みは”集団投資スキーム”に似ている面がある」と指摘する。金融庁によれば、VALUの発行者がVALUERに提供する優待の内容が、次の3つの要件に該当する場合、集団投資スキームに該当し、金融商品取引法の適用対象となる、有価証券の取引に当たる可能性があるという。

  1. 金銭などを投資家が出資
  2. 出資を受けた人が出資金を使って事業を実施
  3. 事業から生まれた収益や財産を分配

金融庁は、VALUでの取引動向や、発行者が提供する優待の内容を継続的に確認したうえで、それぞれの取引が有価証券の取引に該当するかどうかを判断する方針とみられる。

規約改定で価格の乱高下を抑制

今回の規約改定でVALU社は「価格操縦行為と利用者保護のため」として、売買に関するルールを追加した。売り注文については「1日に売却できるVAは、対象VALUの総発行VA数の10%以下」とし、買い注文については「1回に購入できるVAは、最大10VAまで」とした。取引量に制限を加えることで、急激な価格の変動を抑制する意図とみられる。

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9月4日付で改定されたVALUの利用規約

VALUのウェブサイトより

VALU上の取引に有価証券に該当する性質があるかどうかについて金融庁や専門家らの注目が集まる中、規約は「VALUは、株式を含む有価証券、前払式支払手段、法定通貨又は仮想通貨のいずれでもありません」としている。

ゼロになってもいいお金で参加を

仮想通貨を用いた取引に詳しい中崎尚弁護士は「VALUに参加している人には、ファンクラブのような位置付けで参加する人と、乱高下するビットコインの取引のように投機的な意味合いで捉えている人の二つのパターンがあるのではないか」と指摘する。

株式市場に上場されている株式と違って、VALUの発行者が提示している優待を確実に履行するかどうかは、口約束にすぎない。VALUの発行者に規約に違反する行為などがあった場合、VALUの価値がゼロになる事態も起こり得る。

金融商品取引法に詳しい渋谷武宏弁護士は「ゼロになってもいいお金で参加することが必要だ」と話す。

利用規約も「価格変動のリスク等について十分ご理解の上、ファンとして発行者を応援する観点からお楽しみください」「発行者のVALUの価値は完全になくなってしまう場合もあります」と明記している。

今回のVALUの規約改定で、急激な価格変動が抑制される仕組みが導入された。しかし、新規性の高いサービスだけに、ルールの整備が追いついていない面があり、今後も混乱が生じる可能性はあるだろう。VALUの譲渡について贈与にあたる可能性があるなど、税制面の課題を指摘する声もある。

一方で、個人の活動に資金調達の道を開いた点などから革新性を高く評価する声もあり、ライブドアの社長だった堀江貴文氏もVALU社の取締役に名を連ねている。

渋谷弁護士は「VALUの仕組みは株取引に近いものがある。株取引に近い仕組みを導入し、自主的にルールをつくっていけば、健全な発展につながるだろう」と述べた。

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