若者の「胸」への関心低下でもフーターズは日本では拡大戦略

チアリーダーをイメージした「HOOTERS GIRL(フーターズガール)」で知られる、アメリカン・カジュアルダイニング&スポーツバーのフーターズは年内に新店舗をオープンする。今後数年で、日本での店舗数を10以上に増やす方針だ。激しい競争が続く日本の25兆円外食市場で、フーターズの拡大の秘策とは?

HOOTERS GIRL

渋谷店で働くフーターズガールのMEGUさん。現在、大学生でフランス語を学んでいるという。

撮影:野中利紗

日本でフーターズを展開するエッチジェー(HJ Inc)は12月上旬、日本では7店舗目となる店を地方都市に開く。具体的な都市名や場所は明らかにしていないが、物件の取得は完了しており、現在は店舗デザインの詰めの作業を行っている。新店舗の広さは約70坪で、席数は100弱だという。同社代表取締役社長・鶴見英明氏が、Business Insider Japanの取材に答えた。

えっチジェー代表取締役社長・鶴見英明氏

「フーターズガールが店で披露するダンス・パフォーマンスやサービスを進化させながら、エンターテインメント型の店作りをしている」と語る鶴見英明社長。

撮影:野中利紗

エッチジェーは2010年10月に、フーターズの1号店を東京・赤坂見附にオープンさせると、2012年6月に銀座に2号店を開いた。翌年に関西初の店舗を大阪・本町に開設した後、現在までに国内4号店を渋谷に、5号店を新宿、そして昨年2016年に名古屋店をオープンした。

1983年にフロリダ州の西海岸にあるクリアウォーターで、レストラン経営の経験のない6人のビジネスマンが居心地の良い店ができないかと考えフーターズを作った。今では29カ国に420以上の店舗を展開している。

体験型で飽きさせない

「(日本の)市場の状況は厳しいです。客単価が上がりにくい環境です。だから、客数を増加させるためには、お客様を飽きさせない工夫を止めてはいけない。フーターズガールが店で披露するダンス・パフォーマンスやサービスを進化させながら、エンターテインメント型の店作りをしています」と鶴見氏。

フーターズ渋谷店

「HOOTERS」のプリントTシャツは店内で購入できる。

撮影:野中利紗

約230坪のスペースに約250席を持つ渋谷店は、国内では最大の店舗。サッカーやプロ野球のパブリックビューイングを開催する以外にも、約1時間に1度、フーターズガールたちが数分間のダンス・パフォーマンスを行う。日本には約350人のフーターズガールがいるが、ダンスを学んだ経験があるフーターズガールも多い。

「瞬間だけでも店の一体感を味わってもらいたい。居酒屋で上司の愚痴を言うより、フーターズガールたちと楽しい時を過ごしてもらいたい」(鶴見氏)

フーターズでは、フーターズガールたちが接客方法を学ぶため、フーターズ・アメリカ(Hooters of America)が作るプログラムをもとに、トレーナーが丁寧に教え込んでいくという。すべてのフーターズガールはアルバイトで働いているが、日本では10人がフーターズガールを経てマネージャー職に就いている。

潜在需要開拓のため店の外へ

現在、客の多くは30代半ばから40代半ばの会社員。男性客が全体の7割だ。鶴見社長は今後、女性が気軽に入って来られる店作りをしていきたいと話す。潜在需要を開拓するために、女性やファミリー層、アメリカン・カジュアルダイニングに馴染みのない人たちを捉えていきたいと、鶴見氏は言う。

そのために期間限定のフーターズ・ビアガーデンも東京・お台場や大手町、大阪などで開催。「HOOTERS ON シンフォニークルーズ」は、フーターズガールと共に東京湾をクルーズしながら、ディナーをするというイベントで、月末最後の金曜日の「プレミアム・フライデー」に開催した。

フーターズガールのトランプ

フーターズガールのトランプもある。

野中利紗

「店の中だけでなく、外に向かうことも考えています。ビアガーデンなどは、それの投資に対するリターンは低い。けれど、店の外で体験できるフーターズのコンテンツを知ることで、店舗に遊びに来てくれるお客さまがいます」(鶴見氏)

フーターズは2017年、中米のコスタリカやリトアニアに新たに進出、メキシコシティでは店舗数を増やすなど。アメリカ国外での拡大を図っている。海外戦略を強化する背景には、アメリカ国内における厳しい市場環境があるようだ。

若者の「胸」への関心低下

フーターズに限らず、アメリカにおけるカジュアル・レストラン業界は全体的に下降気味だと、米Business Insiderが伝えている。アダルトサイトの「Pornhub」が利用者の検索傾向を分析したところ、18歳から24歳の世代は同サイト内で「胸」について検索する頻度が、他の年齢層に比べて低いことが分かったという。一方、55歳から64歳の利用者が「胸」に関連する検索を行う比率は、他の世代より17%高かった。

ブレストラン(胸を意味するBreastとレストランのRestaurantを掛け合わせた造語)と言われるフーターズのようなチェーン店にとって、胸への関心の低下は望ましくないだろうと、米Business Insiderが報じている。また、業界レポートによると、アメリカで展開するフーターズの店舗数は2012年から2016にかけて、7%減少し、売り上げも停滞しているという。

HOOTERS GIRL

「20代、30代、40代、50代の多くのお客さんとお話をすることが楽しい」と話すフーターズガールのMEGUさん。

Business Insider Japan

過去20年の間、日本市場にはアメリカン・カジュアルレストラン&バーが参入してきた。

TGIフライデーズ」はその一つ。ニューヨークの香水セールスマンが1965年にマンハッタンの古い居酒屋を買い取り、街のスチュワーデス達との出会いの場にしようと、シングル(独身)のためのバーをオープンさせたのがTGIフライデーズ。T.G.I.F("Thanks Godness It's Friday"「やったー!今日は金曜日だ!」が店のスローガンとなった。

1999年8月、TGIフライデーズは渋谷に1号店をオープン。ブレストランではないが、フーターズのライバルの一つだ。世界60カ国で約900以上の店を出すTGIフライデーズは、現在までに国内で12店舗を展開している。日本では、アメリカのカールソン・レストランツ・ワールドワイド・インクと、ワタミフードサービスが提携して、ティージーアイ・フライデーズ・ジャパンが運営を行っている。

アウトバックステーキハウス(OUTBACK STEAKHOUSE)」は、1988年にアメリカのフロリダ州・タンパで誕生したカジュアル・ダイニングで、2004年4月に日本1号店をオープンさせた後、首都圏を中心に品川、渋谷、六本木、池袋、名古屋、大阪に進出した。現在までに、世界23カ国で900店以上の店舗を展開している。

回復に転じた外食市場

鶴見英明・HJ社長

すかいらーくグループで長年、店舗デザインやプロデュースに携わってきた鶴見社長は、「フーターズガールたちのパフォーマンスレベルをさらに上げて、サービスをあらゆる角度から進化させていきたい」と語る。

撮影:野中利紗

日本政策金融公庫が行った「新規開業パネル調査」によると、国内における全ての業種の廃業率は平均で約10%。これに対して飲食店・宿泊業の廃業率は19%と高く、外食市場における競争の激しさを示す。

外食産業の市場規模は、1997年の29兆円をピークに2011年まで縮小トレンドを続けた(日本フードサービス協会のデータ)。しかし、その後の5年間は増加を続け、昨年2016年には25兆4000億円まで回復している。

2017年月間ベースで見ると、市場全体の売上高は7月に前年比3%増加。昨年9月から11カ月連続して前年を上回っている。中でもファーストフードの伸び率はこの7カ月間、前年比4%〜7%と底堅い。一方、ファミリーレストランとパブレストラン・居酒屋の売り上げは、それぞれ前年割れをする月が見られ、安定的とは言えない。

鶴見氏は言う。

「若い女性のお客さんが気軽に来られる店、男性が女性を連れて来られる店にしていきたいと考えています。そのためには、フーターズガールたちのパフォーマンスレベルをさらに上げることが大事だと思っています。サービスをあらゆる角度から進化させていきたい」

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