マツダの新技術は、EVではない。
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- マツダは、既存のエンジンよりもはるかに燃料効率の良いガソリンエンジンを開発した。
- SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)は、ガソリンと空気の混合気にプラグで点火するのではなく、ディーゼルエンジンのような圧縮着火を用いる。
- 追加コストなしで、同社の新車に迅速かつ簡単に搭載可能。
EV(電気自動車)は今後20年ほどでガソリンエンジン車を代替するという見方は、今や定説と言えるだろう。少なくとも先進国においては。
だが、先行きは分からない。EVの新しいコンセプトカーが日々登場し、先日発表された日産の新型リーフや昨年発売されたシボレーボルトなど、長距離走行が可能な新しいEVも登場している。そして、50万台の予約を抱えているテスラ Model 3もある。
だがEVの普及は、2010年頃に最初のEV量産車が市場に登場した時に、多くの専門家が描いた予想よりもかなり遅れている。
専門家は現時点なら、市場の10〜20%はEVが占めていると予測していた。だが、実際はEVの普及率は、1%だ。
EVには乗り越えるべき大きな課題がまだ2つ存在する。コストと充電時間だ(航続距離の問題は、かなり改善されている。だが、テスラ Model Sのような長い航続距離を誇るEVですら、従来のガソリンエンジン車に大きく劣る)。リチウムイオンバッテリーはコストが高く、充電時間は最も時間が短い急速充電でも1時間以上かかる。
一方、ガソリンエンジンのイノベーションは止まっていない。マツダの最近の発表のように。
点火なし、という新発想
マツダは2019年までに、次世代エンジン「SKYACTIV-X」を市場に投入する。このエンジンは、同社によると「ガソリンと空気の混合気をピストンの圧縮によって自己着火させる燃焼技術、圧縮着火を世界で初めて実用化したエンジン」だ。
次世代エンジン「SKYACTIV-X」。
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分かりやすく説明しよう。ガソリンエンジンだが、ディーゼルエンジンと同様に点火プラグが不要、自己着火する。トルクも燃費効率も向上している(必要な場合は、点火プラグが作動する)。
つまり、ガソリンの使用量が少ない、薄い混合気による「リーン(希薄燃焼)」を実現した。
「圧縮着火で可能となるスーパーリーン燃焼によって、エンジン単体の燃費率は現行のSKYACTIV-Gと比べて最大で20~30%程度改善。2008年時点の同一排気量の当社ガソリンエンジンから、35~45%の改善」と同社。
「SKYACTIV-Xは、最新のディーゼルエンジンSKYACTIV-Dと同等以上の燃費率を実現した」
マツダは世界中で高まる省エネ意識と排出ガス基準に対応するために、このエンジンを開発した。だがSKYACTIV-Xは、多くのハイブリッド車やEVを開発せずに、高い燃料効率を実現した車を提供しようと考えている同社にとって重要な技術となる。SKYACTIV-Xのコストは、同社の既存のエンジンとさほど変わらない。仮に同等のコストなら、シームレスに生産に組み入れることができる。
より重要なことは、多くのEVコンセプトカーが市販されるかどうか分からないことに比べ、マツダがこの革新的な技術を2年で販売することだ。またこの技術は、自動運転技術の開発に制約されることもない。自動運転車の動力は、ガソリンエンジンでも、モーターでもどちらでも良いのだから。
[原文:While everyone was fixated on electric cars, Mazda quietly revolutionized an older technology]
(翻訳:まいるす・ゑびす)