独身で何が悪い? メリットもある。
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- アメリカでは既婚者より未婚者が多く、問題視する声もある。
- しかし、私たちは孤独なナルシスト社会に生きているわけではない。
- 事実、複数の研究で、独身でいることは人生に様々なメリットをもたらすことが明らかになりつつある。
筆者の母いわく、母がわたしと同じ年齢の頃、公的な書類を作成する際に未婚女性は自身を指して「スピンスター(spinster)」と記入しなければならなかった。
この単語はつい最近まで、イギリスでは未婚女性を指すれっきとした法律用語だった。だが、日本で言うところの「行き遅れ」、つまり独身であることを蔑視するニュアンスが含まれた言葉だ。
そう呼ばれた独身女性の未来に、ポジティブなイメージを連想させないことは確実だ。
しかし、時代は変わった。
アメリカの婚姻率は過去最低レベルを記録、結婚に無関心な若者もこれまでにないほど増えているようだ。
1962年には、21歳で半数が、30歳で90%が少なくとも一度は結婚を経験していた。それが2014年になると、一度でも結婚したことがある人は、21歳でわずか8%、30歳で55%となった。
今や独身は多数派だ。
しかし、だからといって後ろ指をさされないわけではない。
一般的には、独身者の増加は紛れもない社会問題、そして公的生活の衰退の兆しとして扱われることが多い。ニューヨーク大学の社会学者エリック・クライネンバーグ(Eric Klinenberg)氏は、著書『シングルトン=SINGLETON:ひとりで生きる! (原題:Going Solo)』の中でそう記している。
もちろん、誰もがこのように考えているわけではない。
「私たちの社会的なつながりが弱まりつつあるのではないか? 孤独なナルシスト集団になりつつあるのではないか? 社会科学者たちは、そんなことを何十年も心配し続けている」同氏はニューヨーク・タイムズ紙に語った。「納得の行かない話だ」
こうしたクライネンバーグ氏と同じ立場をとる研究者も少なくない。彼らの研究は、独身でいることが人生にもたらすメリットを解明し始めている:
より社交的?
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ある研究によると、アメリカでは既婚者よりも未婚者の方が、家族を支え、彼らとの連絡を絶やさない。そして友人や隣人を助け、励まし、交流し合う。
アメリカ労働統計局(BLS)の「時間使用調査(Time Use Survey)」によると、独身のアメリカ人は、他人との連絡を絶やさないために、電話やメール、手紙に1日平均12分を使っている。一方の既婚者は7.8分だ。
周囲からの過度なプレッシャーで、自己不信に陥ることもあるかもしれないが、独身だからといって、孤独や孤立を感じる人生が確定したわけではないとクライネンバーグ氏は説明する。
「それどころか、研究結果が示す内容はその逆だ。1人で生活する人はそれを補うために、他人と共に生活する人よりも社交的になる。そして、独身者が多い都市の公共文化は、大いに盛り上がっている」 と言う。
「自分の時間」が多い?
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デジタルメディアが発展し、他者とのつながりが強まる今、独身でいることは明確なアドバンテージをもたらすとクライネンバーグ氏は考えている。
充電するための1人の時間をより多く確保できることだ。
1人で過ごす時間が多いほど、自分自身を理解したり、自身の人生の意味や目的を見出すのに役立つと同氏は説明する。
「個人の自由、パーソナル・コントロール、自己実現。現代において神聖視されるこれらの価値観は、生涯を通じて重要だ。そして、1人で生きることは、こうした価値観の追求を促す」と同氏は書いている。
娯楽に使う時間が長い?
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1人でも誰かと一緒でも、独身者の方が既婚者よりも余暇を楽しむ時間が長い傾向にある。
BLSによると、独身者が1日の中で娯楽に使う時間は平均で5.56時間。一方、既婚者は4.87時間だ。
さらに細かく見てみると、独身者が1日の中でスポーツや運動、レクリエーションを楽しむ時間は、既婚者よりも約3分長く、テレビを見る時間は約16分、パソコンを趣味で使ったり、ゲームで遊ぶ時間は約15分長いことがわかった。
人間としての成長を実感している人が多い?
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Business Insiderが過去に報じた通り、独身者1000人と既婚者3000人を対象とした研究の結果、独身者の方が次の2点を感じると答えた人が多かった。
- 学びや変化、成長の連続に満ちた人生を送ってきた。
- 自分自身や世界の捉え方を変えるような新しい経験をすることが重要だ。
法的な責任が少ない?
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資産管理サービスを提供するスタートアップ「ラーンベスト(LearnVest)」が書いている通り、誰かと結婚することは、相手の金銭的な問題に対して自分自身にも法的な責任が生じることを意味する。これは、配偶者の債務に対して同等の責任を負うことだったり(「あなた今、学生ローンがいくら残ってるって言った?! 」)、配偶者が起訴された場合に巻き込まれたりすることでもある。
クレジットカード債務を抱えている人が少ない?
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Business Insiderが以前報じたように、債務の返済に役立つ情報を提供する「Debt.com」の研究によると、子どもの有無にかかわらず、既婚カップルよりも独身者の方がクレジットカード債務を抱えている可能性が低い。
女性の場合、独身であることは給与面でプラスに働く?
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バージニア大学「ナショナル・マリッジ・プロジェクト(National Marriage Project)」のディレクター、W・ブラッドフォード・ウィルコックス(W. Bradford Wilcox)氏と経済学を専門とするアメリカン大学の教授ロバート・ラーマン(Robert Lerman)氏が最近行った研究は、独身女性の方が既婚女性よりも高い給与を得ていることを示唆している。
彼らはこの結果に統計的な有意性を見出していないが、28~30歳の独身女性の年間個人所得は、同年代の既婚女性よりも1349ドル(約15万円 )多かった。また、44~46歳の女性を比較した場合も、独身女性の方が1465ドル多かった。
独身男性は、既婚男性よりも労働時間が短い?
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先ほどの研究でわかったことがもう1つある。28~30歳の独身男性が1年のうちに家の外で働く時間は、同年代の既婚男性より441時間短い。また、44~46歳では、独身男性の方が403時間短かった。
運動する時間が多い?
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18〜64歳の男女を対象としたメリーランド大学の研究によると、一度も結婚をしたことがない人の方が既婚者もしくは離婚した人に比べて、1週間に運動する時間が長いことがわかった。
また別の研究では、太り気味もしくは肥満の男性の割合は、独身者グループよりも既婚者グループで25%高かった。
独身男性は、既婚男性よりお金に寛大?
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Business Insiderの過去記事で紹介した別の研究によると、結婚歴のない男性が困っている友人に渡した金額の平均は、既婚者と比べて1875ドル(約21万円)多かった。
よく眠ることができる?
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十分な睡眠を取ることは極めて重要だ。そして、1人で寝ている方が眠りやすい。
健康情報ポータル「スライブ・グローバル(Thrive Global)」の創業者アリアナ・ハフィントン(Arianna Huffington)氏は、睡眠の重要さを説く。Business Insiderが昨年行ったインタビューでは、「常に一緒に寝ることを神聖視する理由なんて1つもない。アメリカ人のロマンチックな幻想だ」と語った。
しかし、古い習慣は容易には滅びない。
Business Insiderが過去に報じたように、マットレスメーカーのアメリスリープ(Amerisleep)が行った調査の結果、独身者の1日あたりの平均睡眠時間は7.13時間で、現在交際相手がいる、婚約相手がいる、結婚している、配偶者に先立たれた、離婚している、別居中のどのグループよりも長かった。
[原文:How staying single could improve your life]
(翻訳:Yuta Machida)