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米D2Cブランド「テイラー・スティッチ」が組んだ日本のIT企業とは—— アマゾンとは違う新世代ECの形

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抜けるような青空に、白い砂浜。サンフランシスコ発のファションブランド「テイラー・スティッチ」が日本初出店の場に選んだのは、神奈川県の七里ヶ浜だった。夏はサーファーで賑わい、同じ建物には「世界一の朝食」で話題になった「bills」の日本1号店もある。目の前は、見渡す限りの海。解放感と少しのセレブ感が漂う。

テイラー・スティッチ

テイラー・スティッチの七里ヶ浜の店舗では洋服を売るだけでなく、ライフスタイルそのものを提案している。

テイラー・スティッチは2008年にサンフランシスコで生まれたファッションブランドだ。主力商品は、カスタムオーダーシャツでスタートしたことがうなずける、確かなカッティングや縫製技術に支えられたシャツだ。30代、40代をメインターゲットに、ビーチアラウンドやアウトドア、自転車で走り回る際のファッショナブルなスタイルも展開。独自の世界観と幅広いライフスタイル提案で、根強いファンをもつ。

そんなブランドが日本進出のパートナーに選んだのは、多くの企業のコンタクトセンターやデジタルマーケティングなどのサービスを提供するトランスコスモスだ。取締役の神谷健志さんは両者の出会いをこう振り返る。

「偶然の出会いだった」

両者は吸い寄せられるように出会った。


買い物の楽しさを追求するEC

トランスコスモスの神谷さん。

「アマゾンとは違うECの解を求めていた」という神谷さん。


トランスコスモスで「EC」事業や「D2C」ビジネスを研究していた神谷さんは昨年、アメリカ支社から「面白いブランドがある」と聞いた。D2Cとは「Direct to Consumer」。企業などが自社で企画・製造した商品を、卸や小売店を通さずに直接販売するモデルだ。


EC業界は、アメリカでも日本でもアマゾンの一人勝ち状態。だが神谷さんは「利便性を追求するアマゾンとは違うECのあり方があるはず」と考えていた。解を求めて、アメリカに飛んだ。

だが、お目当てのブランドにはアポが取れなかった。せっかくなので、と訪れたのが、目的の店の隣にあったテイラー・スティッチだ。

そこで、神谷さんの問題意識が大きく動いた。

テイラー・スティッチは店舗で独自の世界観を表現しながらも、実際の販売はEC中心。ムダのないビジネスモデルを確立していた。EC化率はなんと90%。

「ショッピングは、選んだりする過程が“楽しい”ものだったはずなのに、アマゾンでは購買に数秒しかかからないこともある。嗜好性の高いアパレルでは別のモデルを作ることができるのでは、と思いました」


最も心地良い体験を導く「デジアナ化」

当時、テイラー・スティッチはアジア進出を考えていた。その足がかりとして日本という市場に興味を持っている、とも。だが、トランスコスモスにはアパレル分野での知見がほとんどなかった。

ここで力を発揮したのが、2年前にファッション業界から転職した水谷大佑さんだ。百貨店のバイヤー経験を経て、セレクトショップやラグジュアリーブランドで働いた経験をもつ。水谷さんは業界にこんな課題を感じていた。

「学生の頃、はじめてバーニーズニューヨークに行ったとき、きっと場違いな自分をドアマンは温かく迎え入れてくれ、とてもおしゃれでカッコいいスタッフが親切丁寧に接客をしてくれた。その時に購入したTシャツはいまだに大切に持っているし、服に当時の記憶が残っている。でもネットショッピングでは、その体験や記憶を残すことは容易ではない」

トランスコスモスの水谷さん

水谷さんがテイラー・スティッチに惹かれたのはまず、その「ものづくり」への姿勢だった。


水谷さんはファッション業界に「デジアナ化」が必要だと感じていた。

デジタル化やスマホの普及により、消費者が情報を得て、購買に至るまでの心理や行動が大きく変化している。TV広告や雑誌だけではリーチできない人が増えている中で、デジタル上でブランドが存在感を発揮し、そこで顧客との接点を増やすことはとても重要で、これが「デジタル化」。

しかし、より重要なのは、その接点を起点にリアル店舗に誘導し、人の温もりのある接客とブランドの世界観の中で、買い物を楽しんでもらう手伝いをし、店舗の素晴らしさを改めて体感してもらうこと。リアル店舗に足を運ぶ理由を今まで以上に強く作り続けることで、再びまた店に来てもらえるようになる。これはいつまでも追及し続けなくてはならない「アナログ化」だと感じている。

たった一人に喜んでもらうために、デジタルとアナログが補完しあい、顧客に最も心地良く楽しんでもらえるカスタマジャーニーを作ることが、「デジアナ化」だという。

多くのファッション企業が良い商品を作り、素晴らしい店舗とスタッフを揃えていても、“お客さま”はオンラインで購入する。もう一度「買う側」の視点や気持ちを知りたいがゆえに第一歩として、トランスコスモスに転職したという。


EC化率90%の効率と独自の世界観

水谷さんもアメリカに飛んだ。まず共鳴したのは、テイラー・スティッチの「ものづくり」へのこだわりだった。

「デザイナーのニックは、こだわりのある商品を1時間もかけて情熱を込めて説明する。商品は工場で量産せず、実はポルトガル人家族が経営するシークレットなファクトリーでひっそりと、そしてとても丁寧に作られている。そんな本質的なモノづくりをできるチームが、月に1度はお客さまに新しいコレクションとして、ライフスタイル提案をする。本格的なものづくりができる人が、本気でライフスタイル提案をするブランドだと思った」

独自の世界観を大切にするファッション業界と、効率や生産性を追求するIT業界。相反する業種に思えるが、テイラー・スティッチは両方の価値観を兼ね備えていた。

テイラー・スティッチ

テイラー・スティッチの主力商品はシャツ。定番商品ゆえに値引きもしない。


アメリカでは実店舗を2軒に留め、EC化率90%を誇る「デジタルネイティブブランド」。一方で、ブランドの世界観を正確に顧客へお届けするために、サイトの作りはクリエイティブで緻密、そして作り込んだメルマガを顧客に配信し、その写真撮影のためにだけに有名フォトグラファーをネパールにまで送り込む。


ビジネスモデルも緻密だ。ファッション業界では何が流行するのか分からない状態で、過去のデータと経験をもとに次のシーズンの商品を決め、展示会を開かなければならない。結果、在庫を抱えてセールになる。価格はそれを見越して高めに設定しなければならないという構造的な矛盾を抱えている。

一方、テイラー・スティッチの商品は、値引きしない定番シャツが主力。ファッション性の高い商品は、クラウドファンディングであらかじめ注文を受けて製造する。結果としてロスが減るから価格も抑えられる。固定ファンが多いからこそなし得るビジネスモデルだ。リピーターを増やすため、不特定多数に向けた広告宣伝よりFacebookやInstagramなどのSNSを活用。メールマガジンも、クリエイティブや見出し、内容に細かく気を配る。

「EC中心のブランドといえばメンズブランド『Bonobos(ボノボス)』が知られていますが、テイラー・スティッチはより“ものづくりの確かさ”と、その本格的なモノつくりができるブランドが、あらゆる“ライフスタイル”を本気で提案しています。たった一人のお客さまのために」(水谷さん)


ファッション業界の支援につなげたい

ではなぜ、B2B企業であるトランスコスモスが、自らアパレルブランドの展開に乗り出したのか。水谷さんは、ファッション業界が不振に苦しむ理由を引き合いに出す。

「不振の理由は決して一つではありませんが、原因の一つに店舗に足を運ぶお客さまが減り、ブランドにとって大切な“お客さまの声”が把握しにくくなった」

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一方、IT業界は見えないものを数値などで可視化するのに長けている。結果「D2C」のように、顧客が望むものを直接届ける仕組みもつくることができる。トランスコスモステイラー・スティッチと手を組んだのは、アパレル企業が抱える課題に対してデジタルの力で解決策を提示できる存在になりたいという思いからだという。

「我々が企業からブランドを請け負って運営するのと、自分たちで保有して主体側に回ることの違いは非常に大きい。後者を経験することで、企業の問題意識に近づくことができる」(神谷氏)

水谷氏も、自ら運営する意味をこう語る。

トランスコスモスが得意とするデジタルを基軸にした顧客接点の持ち方や販売手法などのソリューションを、まずはテイラー・スティッチで実現させる。その上で国内ブランドの支援につなげたい」

テイラー・スティッチがもつ世界観は、サンフランシスコから遠く離れた日本でも変えない。店舗を増やせば売り上げは伸びるが、当面はブランドの世界観を表現できる七里ヶ浜のコンセプトストアに絞る。クラウドファンディングを用いた販売手法は日本でも踏襲する予定だ。初めてのファッション業界でのB2Cビジネス参入を、神谷氏はこう考える。

「EC化率90%といわれるテイラー・スティッチだが、別に魔法のようなテクノロジーをもっているわけではない。顧客の反応を見ながら、商品のデザインやECサイトのクリエイティブを細かくチューニングし、洋服1枚あたりではわずかしかない利益を少しずつ上げていく。これこそがB2Cの本質だと思います」

帆はまだ揚げたばかり。2022年までに売上げ20億円を目指す。


神谷 健志(かみや・たけし):トランスコスモス取締役上席常務執行役員。2015年にコンサルティングからトランスコスモスに転職。昨年、中期経営計画を策定し、主にEC市場の計画を担当。この4月からデジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括、グローバルEC・ダイレクトセールス本部長としてEC市場にまつわるサービスを統括する。

水谷 大佑(みずたに・だいすけ):トランスコスモス デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括DEC戦略本部ライフスタイル事業部。百貨店、セレクトショップ、ラグジュアリーブランドを経て、2015年にトランスコスモスに入社。国内外のファッションアパレル企業への支援に繋がる、トランスコスモスのあらゆるサービスソリューションを提案している。


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