停戦はロシアによるアレッポ破壊へのカウントダウンか

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セルゲイ・ショイグ国防相

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(編集部注:この記事の内容は執筆時点のものです)

2016年10月18日火曜日、ロシアは週末に実施される8時間の停戦の準備として、シリアの最大都市であるアレッポへの空爆を停止することを発表した。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、テレビ放送された軍当局との会議の中で、アレッポ市内に残っているシリアの反政府勢力の戦闘員を退避させるために、特別な2つの避難路を設けると発表した。

また、反政府勢力の戦闘員の武装を許可し、シリア軍は彼らに危害を加えないことを約束した。

シリア人権監視団によると、ロシアは火曜日の早朝にはすでに空爆を停止した。しかし、多くの人々は、国連の動きとは無縁で、かつ予想外なモスクワの発表の背後にある意図について疑惑を抱いている。

数名の専門家は、この発表はロシアは反政府勢力と友好関係を築くためではなく、反政府勢力に、都市を引き渡すか、停戦後に空爆で殺されるかの最終通告を突きつけているのではないか、とコメントしている。

ハーバード大学で冷戦の研究を行っているマーク・クラマー(Mark Kramer)氏は、火曜日(10月18日)にBusiness Insiderに次のように語った。

「今回のステップが人道目的であることを願うが、とても信じがたい。今回の停戦発表は『皮肉なやり方』であり、EUの外務大臣らが、アレッポへ『無慈悲な砲撃』を行ったロシアに対する制裁に合意することを防ぐために計画されたことだ」

また、クラマー氏は「このステップは、ロシア軍がアレッポを“なぎ倒す”準備をしているという恐ろしい可能性もある」と語る。

1999年12月から2000年1月、ロシア軍は同じような手口で、チェチェン共和国の首都グロズヌイの全市民に退避を命じ、直後にグロズヌイを攻撃した。

シリアのアサド大統領への反対勢力を排除するための、ここ数カ月に及ぶアレッポ焦土化作戦は、16年前のロシアによるグロズヌイでの大量殺戮の記憶を呼び起させる。あの作戦はチェチェン独立主義者を排除するためのものでもあり、避難勧告はすべて罠だった。

2000年2月、ロシア軍はチェチェンの反政府勢力にグロズヌイからの避難路を提供した。しかし、3マイル離れたアルカンカラ村へ繋がる避難路は、実はロシア軍の地雷原で数百人もの反政府勢力戦闘員が命を失った。地雷を免れた人々も、砲弾やロケット弾の標的となった。

2000年2月4日のザ・ガーディアンによると「ロシアは、10万ドルでグロズヌイから外への安全な通路を提供すると言って反政府勢力をおびき出し、砲弾でほとんどを始末した」。このアルカンカラの攻撃で、少なくとも600人のチェチェン人が命を落とした。

「その事実を思うと、たとえロシアが人道的な理由による停戦だと主張し続けていても、アレッポの人々は持続的な平和への合図だと解釈するべきではない」とクラマー氏は言及する。

「その直後に、街の全面破壊が実行されるだろう」


アレッポ

北シリアの反政府勢力が占拠していたアレッポのアル・チェンライ市内、崩壊した街を走る車(2016年9月26日)。

Khalil Ashawi/Reuters

グロズヌイは「我々が探し求める解決策」

ロシア国防相の停戦発表の前日の月曜日(10月17日)、アメリカのロシア大使館は、自らグロズヌイとアレッポを比較した悪意があるとも取れる発言をツイートした。

「現在のグロズヌイは平和で近代的な、繁栄都市である」

「それが我々が探し求める解決策ではないのか?」

ロシアの新しいアレッポに関する計画は、市民に避難路を提供することでもある。しかし、国連が指摘したように、この計画は市内に薬や医療品を運ぶ援助関係者や、病気や怪我で苦しむ市民を助けだす援助への安全の保障はしていない。

9月末、国連の援助物資を運ぶトラックが、トルコ南部からシリア北部へ搬入する際に爆撃を受けた。ロシアとシリアは関与を否定したが、彼らはこの国で空軍を持つ唯一の軍隊だ。


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Guzhe村に向かって発射するトルコ軍の戦車と反政府軍の戦闘員。アレッポ北部の田園地帯、シリア(2016年10月17日)

Reuters

国営のロシアトゥデイは、市内に残る一部の反政府勢力戦闘員が民間人を盾にとり退避を拒否していると報告したが、これらはまだ確認されていない。

「ロシアとシリア政権がどれほど多くの戦闘員と民間人をアレッポから退避させることができるかに関心を深めている」と元国防情報局官であり、現在は近東政策ワシントン研究所の軍事専門家であるジェフ・ホワイト氏は語る。

「今後の包囲攻撃や襲撃に関連した軍事問題を減少させ、街を占領したあとに出てくる助けを必要とする人々や、反対派として街に残留する人の数を減少させるだろう」

しかし、アレッポ市内東部の反政府勢力が自主的に撤退する気配はない。アレッポを基盤とする反政府グループFastaqimの政治担当官Zakaria Malahifji氏は「我々は退去しない。それは降伏にすぎない」とロイターに語った。

そしてイスラム反政府勢力アハラール・アル・シャームのアレッポ司令官Al-Farouk Abu Bakr氏は「人々を守るための革命が始まり武器を手にとった時、この犯罪的な政権が没落するまで戦い続けると、私たちは神に約束した」と語った。


反政府勢力の戦闘員

アレッポ北部を進む反政府勢力の戦闘員。

Thomson Reuters

ロシアはおそらく、反政府勢力がこの取引を拒否することを願っていた。実際に、モスクワはまずこの提案をすることによって、街を破壊する前に空っぽにしようとしたが反政府勢力が協力しなかった、と言える立場を確立した。

民主主義防衛財団(the Foundation for Defense of Democracies)のロシア専門家ボリス・ジルバーマン(Boris Zilberman)氏は、「この計画は一部の国際的な圧力を軽減し、過去24時間以内に殺された50人ほどの民間人についての話題を切り替えることができた」とBusiness Insiderに語った。

「さらに、この計画はロシア軍の体制を立て直させ、停戦が終了する8時間後、もしくはいつでも彼らが停戦をやめたいタイミングで、新たに攻撃するターゲットを正確に捉えられるようにするものだ」と付け加えた。

ロシアは確かにグロズヌイで独立勢力を倒した。しかし、ニューヨーク・タイムズの編集委員会が16年前に書いたように、それは「空っぽの勝利」だった。

「ロシア軍は第2次世界大戦時の古くさい砲弾や爆弾で、チェンチェンの首都を荒廃した地獄へと変えた。チェチェンの人々が長い間、故郷と呼んだ街は見捨てられてしまい、現在ではロシア人がむごいことに『解放された都市』と呼んでいる」

[原文:Russia may be getting ready 'to level Aleppo to the ground'

(翻訳: 野村見帆 )

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