ベーシックインカム、ヒラリーやオバマなど大物政治家のスタンスは?

ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダース

AP Photo/Andrew Harnik

ここ2、3年、急進的な富の分配方法に注目が集まっている。

ベーシックインカムだ。

すべての人が、生きている限り、一定の金額を受け取ることができる。

ベーシックインカムの支持者は、このシステムが導入されれば貧困は減り、AIやロボットの出現によって仕事が奪われるという脅威を回避できると主張する。一方、懐疑派は人々は働くことをやめ、コミュニティやエネルギーに欠けた怠惰な社会になると主張する。

ベーシックインカムはまだ、ごくマイナーな考え方だが、真剣に検討する政治家も出てきている。政治家たちの考え方を紹介しよう。



ヒラリー・クリントン氏

ヒラリー・クリントン

AP

ヒラリー・クリントン氏はここ1年で、ベーシックインカムに対する姿勢を急変させた。

クリントン氏は2016年夏、LinkedInの編集長ダニエル・ロス(Daniel Roth)氏とのインタビューで、ベーシックインカムについてこう批判していた。

「これは、もう諦めて『わかった、収入を生み出している人間は、皆に配分しなくてはいけない。そうでない人はもう働かなくてもいい』と言うようなものだ」

しかし、大統領選を振り返った著書『What Happened』を出版した後、ニュースサイトVoxに対して、大統領選挙に向けて自分なりにベーシックインカムを検討していたと述べた。その際、住民に年1000ドルを支給するアラスカ永久基金(Permanent Fund Dividend)を参考にしたという。

アラスカ永久基金は、同州の財政を支える鉱物資源が枯渇した際に備えて設立された制度で、石油から得た収益の一部が住民に給付されている。

最終的にクリントン氏はベーシックインカムを公約に取り入れなかった。さまざまな疑問点があり、大統領選挙における他の見解と折り合いをつけることが難しくなりそうだったからだ。

バラク・オバマ氏

バラク・オバマ

REUTERS/Joshua Roberts

2016年6月、オバマ大統領(当時)はブルームバーグに対して、さまざまな分野でロボットが人間から仕事を奪うことになった場合に、検討する必要がある解決策について語った。

「自動化やグローバル化によって、どんな社会的影響が出るかを検証する必要がある」と述べ、もし仕事をしても生活していけない人が増えた場合は、ベーシックインカムは1つの選択肢となると示唆した。

自動化の進展を、人々の健康と経済的な安定を維持する義務から分けて考えることは大きな間違いだと同氏は述べた。

「これは二者択一の問題ではない。両者ともに考えなくてはならない問題だ」

ジョー・バイデン氏

ジョー・バイデン

Associated Press/Cliff Owen

前副大統領のバイデン氏は、ベーシックインカムを否定し、父親から、仕事とは「尊厳であり、プライドであり、社会における居場所である」と教えを受けたと繰り返した。

「自動化によって多くの仕事が奪われる状況が生まれ、そのもっともらしい解決策は、政府が無条件の金銭的援助を行うこと。それがベーシックインカムの考え方だ」と同氏は自身のブログに記している

「もっと良い方法があると私は信じている。私たちは、仕事を第一に置くような未来を作り上げることができるし、そうしなくてはならない」

バーニー・サンダース氏

バーニー・サンダース

Scott Eisen/Getty Images

上院議員のバーニー・サンダース氏は、ベーシックインカムに対する自身の考え方をしばしば表明している。Redditで同氏は、政府は国民が最低限の生活水準を維持できるよう支援すべきだと述べた

サンダース氏は、Voxの編集長エズラ・クライン(Ezra Klein)氏とのインタビューでも同様の考え方を示した。同氏はベーシックインカムについて、支持か不支持かは明確にせず、「共感している」と述べた。

「だからこそ私は、最低賃金15ドルを目指して戦い、この国の全員が必要な栄養を摂取できるようにすべきだと訴え、社会保障を削減するのではなく拡大させて、この国に住む子どもたちが収入にかかわらず、大学に進学できるよう戦っている」と語った。

「それが文明国というものだ」

クリス・リー氏(ハワイ州民主党議員)

クリス・リー

Cathy Bussewitz/AP Images

2017年6月、ハワイ州はベーシックインカムの導入につながる可能性のある初の法案を可決して、注目を集めた。

法案「HCR 89」は、「基本的な経済的保障に関するワーキンググループの招集」を要請するもので、アメリカにおけるベーシックインカムの導入に向けた本格的な第一歩と見られている。

民主党のリー議員は、仕事の自動化が進んだ世界においてベーシックインカムは有益なものになりうると述べた。

「良い暮らしを送るために一生懸命働くという考え方は、自動化やイノベーションが多くの人から仕事を奪う経済においては、もはやあてはまらない」と同氏は2017年7月、Business Insiderに語った

[原文:A radical way to spread wealth to more people is gaining traction among major US politicians

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)

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