新型VAIO S11。
VAIO株式会社は9月21日、ノートPC・VAIOの新シリーズを発表した。注目はメインストリーム向け「S」ラインの新型11インチ「VAIO S11」と、13インチ「VAIO S13」だ。
両モデルともに、SIMフリーのLTE内蔵モデルを用意。特にS11についてはキープコンセプトながらデザインをより洗練させ、さらに約840g〜860g(モデルによって異なる)という軽量さを実現している。
S11とS13共通のアイデンティティは、このクラスとしては相当に充実した接続端子の装備だ。モバイル性重視で軽量なS11を選んだとしても、拡張性や使い勝手の制限は何もない(搭載端子の数は完全に同じ)というのがVAIOの大きなこだわりだ。価格は直販モデルで10万4800円から。店頭モデルは14万7800円から。本日から受注を開始し、9月29日より順次発売する。
発表されたばかりのS11の実機を紹介していこう。
軽い:最薄部15mm、軽量840gを実現するUDカーボン天板
下が13.3インチモデルのS13。天板にUDカーボンを採用するのは11.6インチのS11のみ。天板の四角い溝の内側の面がUDカーボン天板になっている。
S11の最軽量モデルでは約840gを実現した重量。従来の11インチモデルとの比較では、約80gもの軽量化になる。これには細部の設計の見直しに加えて、天板に採用された東レの「UDカーボン」という軽量素材の採用も貢献している。VAIOによると、従来のマグネシウム天板と同等の強度を保ちながら「数グラムというレベルではない」軽量化を実現しているとのこと。天板の実物を触ってみると、薄い板なのに、手で持ってねじっても、厚みのある金属板かのようにまったく「しなり」が発生しない強固な素材だ。
拡張性:薄型ノートPCでも妥協なし、フルサイズUSBからD-Sub、LAN端子まで
右側面。左からSDカードスロット、USB3.0、HDMI、ギガビットLAN、D-Sub15。11インチ級のモバイルノートとしては極めて充実した端子類といえる。また、本体液晶も含めて、3モニターに同時出力も可能。
左側面。盗難を防ぐケンジントンロック、USB×2、ヘッドホン端子などがある。
最近は薄型化・実装面積の小型化などの目的で充電端子兼用のUSB Type-C端子を採用する機種も増えている。が、正直なところ「製品を薄く小さく」という設計上のメリット以外の理由で、歓迎している人はほとんど見かけない。
実用性に徹するビジネス指向のモバイルノートとしては、オーソドックスな端子の方が結局「役立つ道具」になる。VAIO S11では、イマドキの新設計モバイルノートにも関わらず映像出力にD-Sub15とHDMI、拡張端子にフルサイズのUSB3.0×3、さらにシンプルな変形機構で薄型化した有線LAN端子を標準搭載する。こういった装備はビジネスシーンで大いに活用できるはずだ。
キーボード:アルミ一体パームレストで打ち心地が快適、英語配列の選択も可能
一般的な配列のキーボード。強く押してもたわむことが減り、道具としての完成度が一段と上がった印象。見た目にもアルミのパームレストが映える。
ビジネス利用のユーザーには最も気になるのがキーボードだ。今回からパームレスト部分がアルマイト処理済みのアルミの1枚板になったことで、見た目のスタイリッシュさと同時に、キーボード面の耐久性も上がっている。英語キーボードも選択も可能。
左が新S11、右が旧S11。新型では天板が一枚板のアルミになり、デザイン的にもシンプルな美しさを備えた。ホコリのたまりにくさ、アルマイトの表面処理の耐久性とともに、長く使えそうな設計だ。
従来はキーボードの中心部(FやKなどのキー)周辺を強く押すと、キーボードが少したわむため、打鍵感の点ではネガ要素だった。新S11/S13では、ボディそのものの構造と、アルミ1枚板のパームレストにすることで、たわみが大幅に減っている。強めにタイプしたときの心地よさは従来から大幅に改善されている。
キーボードにはバックライト搭載、またキートップが黒色のモデルでは、長期の使用でもキートップのテカりが起こりにくいフッ素含有のUV硬化塗装を採用して耐久性を高めている。
ちょうどインテルロゴの上部にあるのが、上位モデルに搭載される指紋センサー。下位モデルにはなし。
耐久性:キーボードに水がこぼれても大丈夫、180秒間の浸水に耐える
浸水テストでキーボードに水をざばっ。何事もなく180秒は動くのでその間に安全にシャットダウンしてほしいとのこと。メーカーとしては念のため、水をかぶった際は修理点検に出すことを推奨。
VAIOは満員電車やビジネスシーンの扱いに耐える「頑丈さ」も売りの1つだが、今回から、キーボードへの水こぼしへの耐久性も備えるようになった。これはキーボード面からの浸水に180秒耐えるというもので、「もしも」の時にも、水をサッと払って、安全にシャットダウンできる。内部の熱を排出する通気口などからの耐浸水性はもっていない点は注意だが、最もよくある「飲み物をこぼす」という状況に対応するもの。
LTE搭載:国内初の「Windows10データプラン」対応SIM同梱
Windows10のデータプラン購入画面のイメージ。Windowsストアから購入できる。
ビジネスモバイルといえば、いつなんどきでもインターネットに接続されているコネクテッド環境が望ましい。新しいVAIO S11/S13のLTE搭載モデルでは、幅広い周波数に対応するSIMフリー(通信会社縛りなし)のLTEモデム内蔵モデルを差額1万5000円で用意する(LTE搭載モデルのみ出荷時期が遅く、10月27日の発売)。
対応バンドとして、国内向けにはNTTドコモ、au、ソフトバンクのそれぞれが使える(国内認証取得済み)。キャリアアグリゲーション(CA)などに対応した高速通信が可能で、通信速度は下り450Mbps、昇り50Mbps(いずれも理論値)に対応。また海外向けの認証は未取得ながら、海外向けの多くのLTEバンドにも、ハードウェアの性能としては通信できる能力があるという。海外向けの認証取得をするかは未定。
VAIO S11/S13が対応するLTEバンド一覧
LTE搭載モデルの注目は、Windows10のWindowsストアから課金できるデータプラン対応SIMの同梱だ。名称は「Celluar Data for VAIO」になるようだ。国内初になるこのSIM同梱は、フランスの通信会社トランサテル(Transatel)社のもの。Windows純正機能のようにWindowsストアからプリペイド課金できる世界ローミング対応SIMになっている。
国内向けのデータ通信料金はそこそこお手頃で、1day/500MB/700円、1カ月/3GB/3000円など。同梱版では体験機能として、1GB/1カ月無料のトライアルプランが利用できる。アメリカなどでの利用はスマートフォンの国際ローミングに比べてもかなり割高なので、実質的に使うシーンはかなり限定される。
Windows10のデータプランの料金体系。
性能:CPUは「あえて」の第7世代コアiシリーズを搭載
筐体の新設計やデザインのブラッシュアップなどを相当に手を加えたS11だが、唯一の引っかかる部分があるとするとCPUだ。8月に発表されたばかりの最新第8世代……ではなく、第7世代コアiシリーズ、つまり1世代前だ。開発関係者によると、S11/S13の法人向けモデルにあたる「VAIO Proシリーズ」も含めたビジネス用途を強く意識しているため、安定供給が期待できる従来世代を採用したとのこと(詳細は文末のスペックシートを参照)。
カタログスペック上のバッテリー駆動時間は、S11が最長16時間、S13が最長12.5時間。開発担当者は、「常時LTE接続で使っても、東京〜大阪往復+2〜3時間の打ち合わせでも、バッテリーだけで1日中使える。実地テストで試した」とスタミナ性能に自身を見せる。
価格:S11は直販10万4800円から、LTEモデルは+1.5万円
VAIO S11のカラバリ。一番下のブラウンが新色。女性向けにも男性向けにも映える良い色だった。
価格は直販の個人向けカスタマイズモデルの最小構成で10万4800円から。LTE版は1万5000円アップの11万9800円からと、手頃な価格設定になっている。直販モデル、量販店向けの標準仕様モデルともに、発売は9月29日から。LTE搭載モデルのみ、10月27日の発売になる。※スペック表には量販モデルのみの数字をまとめた。
なお、VAIOは今回のVAIO S11/S13と同時発表で、15.5インチの大型ノート「VAIO S15」や法人向けモデル「VAIO Pro」も発表している。
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(撮影:伊藤有)