スポーツジムはよくない“自己投資”なのか——運用を始める前に考えるべきは“もったいない自己投資”

なかなか支出を削れないといった理由として、「自己投資」を挙げる人は少なくありません。自己投資のために出ていくお金は必要経費、つまり積極的に削る必要のない支出だと即断してしまうようです。

「投資」というと、どこか正当性を醸し出し、その支出に対して「やむ無し」という印象を持つのでしょう。おそらくそれは、見返りである「リターン」を期待しているからなのだと思います。

お金のイメージ写真

写真:今村拓馬

私自身、自己投資にはあまりお金を惜しまないタイプなので、自己投資には大賛成です。ただし、自己投資といえば何でも正当な支出と簡単に結論づけてしまうとしたら、それはやはり違うと思うのです。

“よい自己投資”と“よくない自己投資”とに分けるとしたら、その違いは何でしょうか。私はたった1点だと思っています。

自己投資の対象にはさまざまな種類があります。語学習得や資格取得などの習い事や、体を鍛えたりするスポーツジム、異業種交流会といったネットワークづくりなどもあるでしょう。

こうしたところへ通うのに、「自分でお金を出せば本気になれる」なんて言われたりもします。

が、私は逆ではないかと思うのです。つまり、「本気のことにはお金を出せる」です。自分でお金を出しても、残念ながら本気になれない「自己投資」の例をいくつも見てまいりました。

たった1点の違い、それは本気かどうか、です。ここが大事です。

通っていないジム会費ほどムダ

なんだ当たり前ではないか、と思われるかもしれませんが、意外と実態はそうでもなく、「リターン」だと考えている方が多い気がします。期待するリターンが大事ではない、と言いたいわけではありません。その前段階としてもっと大切なのが、「本気」かどうかだと思うのです。

私が多いなと感じる“よくない自己投資”の例に、スポーツジムがあります。

多くの場合、まず入会金を支払い、その後毎月の会費が発生します。実際に通っていようが、通っていまいが、この会費は毎月の出費となります。通っていないのに会費を払い続ける人にその理由を聞くと、ジムを辞めてしまうと、また入会金を支払わないといけないので、とりあえず払い続けているとのこと。なるほど、気持ちは分かります。ですが……。

スポーツグッズのイメージカット

PH888 / Shutterstock

冷静に計算すれば、入会金以上に通っていない会費を支払っていれば、その方がよっぽどもったいない話です。

会費を払っていれば、ジムを使える権利を有していますが、入会金をもう一度払うということには見返りを感じられないということなのでしょう。ですが、単純に出ていく金額ベースで考えれば、どちらがいいかの答えは簡単に出せるものです。

このようなときは潔くいったん退会してしまいましょう。

もう一度「本気」で通いたいと思った時に、再度入会すれば済む話なのです。



見直しの対象外になりがちな「固定費」

ただ実は、この例はまだ気づいているだけマシともいえます。

こうした「会費」は、家計管理上は「固定費」に分類されます(家計簿をつけていれば、ですが)。この固定費がくせ者で、「固定」という言葉のイメージが頭にインプットされすぎると、「固定費は毎月必ずかかるもの」として、そもそも見直しの対象から外してしまう人がたまにいます。

そこまでではなくても、口座から自動引き落としや携帯電話の通信料と一緒に請求されることで、支払っていること自体を忘れてしまう固定費もあります。例えば仕事で必要だからといった有料サイトの購読料など。まさに自己投資といえるコストです。

本人は「月数百円なので、大した金額ではない」と考えていることが多いのですが、この数百円も侮れません。購読料が月540円でも年間にすると6480円。飲み代を1回我慢すればいいと思われるでしょうか。

現在、大手行の普通預金金利は年0.001%の水準。元本8億1000万円を預けないと、年間で6480円の利息を手にすることはできません(復興特別所得税は考慮せず)。

これほどお金を増やすことが難しい時代に、こうしたもったいない支出を抱えながら、「運用しないと」と考えているとしたら、真っ先に手を付けるのは、“もったいない自己投資”からでしょう。何といっても安心・確実です。 小さな金額だからといって、それを得るために働いているわけですから、金額の多寡で本気度が下がっては、やはりお金に申し訳ないと思うのです。

理想の自分になるための現金を準備する

では、どうやって本気度を見極めるか、です。

私がお勧めする本気度チェックは、「現金vs.理想の自分」です。

何か始めたいと思う自己投資にかかるお金を現金で目の前に準備します。

次に自己投資で、将来こうなっていたい理想の自分を紙に描きます。イラストでも、文章でも、箇条書きでも、何でもいいです。自分で具体的にイメージできれば、細かい手法は問いません。

さて、両者を見比べます。

理想の自分のために投げ打つ現金 —— 。「う、惜しい」と思ったら、本気度弱し。

「やっぱり理想の自分を手に入れたい!」と思えば、自己投資GO!

チェック方法の一つとして、ご参考になれば幸いです。

最後に、自己投資に期待する「リターン」について触れておきたいと思います。「投資」ですから、その成果であるリターンが得られてこそ成功と考えるのが一般的でしょう。例えば資格取得を目指していれば、合格が成果といえるリターンで、それを得られるかどうかは大事です。

ただ、結果(リターン)は大事ですが、それだけで自己投資の良し悪しを測るものでもないのかなと思うのです。

仮に、資格取得のためにお金をかけて勉強しても、残念ながら試験には落ちてしまった。その後チャレンジし続けても、結局諦めた。といった場合、この自己投資は“よくなかった”“ムダ”な自己投資だったのでしょうか。

勉強する男性の図

Uber Images / Shutterstock

「本気」で取り組んでいたのであれば、結果はどうであれ、私は“いい自己投資”といえると思います。目に見えた結果は伴わなかったとしても、努力して勉強した事実、得られた知識がなくなることはありません。

資格が取れなかったことで、前向きに捉えれば、適性が分かってよかったともいえます。そのうちに、別のやるべき道が見えてくるかもしれません。何より、何かに本気になって打ち込める時間を持てたこと自体、決してムダではないと思うのです。

長い人生の中で本当に何がいいか、何がリターンになりえるかは、目先の結果だけで単純評価できるものでもないし、評価するものでもないでしょう。「投資」という言葉の仮面に隠れて、ムダにお金を使ってはもったいないものです。


八ツ井慶子:生活マネー相談室、ファイナンシャルプランナー。どなたでも参加できる「生活マネー塾」を主宰。

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