寄付で調達、リターンはインパクト —— 日本初のベンチャー・フィランソロピーが資金拡大へ

個人や企業から寄付を募り、ベンチャー・キャピタル(VC)やプライベート・エクイティ(PE)の投資手法などを使って社会的課題を解決するために資金を投下するベンチャー・フィランソロピー(Venture Philanthropy=VP) —— 日本で初めて創設された「日本ベンチャー・フィランソロピー基金(JVPF)」がその規模を拡大する。

4年前に設立されたJVPFは今後3年で、ファンドの規模を現在の3億円から5億円まで増やす。将来的には20億〜30億円規模に拡大する方針だ。運営を担うソーシャル・インベストメント・パートナーズ(Social Investment Partners=SIP)の代表理事、白石智哉氏がBusiness Insider Japanの取材で明らかにした。

白石智哉氏

日本初となるベンチャー・フィランソロピーを立ち上げた白石智哉氏。

Business Insider Japan

欧米を中心に広がりを見せるベンチャー・フィランソロピー(VP)は、ヨーロッパでは100を超える組織があり、その規模は65億ユーロ(約8700億円)とも言われる

VPは1990年代にアメリカで生まれ、2000年以降にヨーロッパで発展した社会的投資の1つだ。

教育や環境、貧困などの社会課題に対して、その解決に取り組むNPO(Nonprofit Organization=非営利での社会貢献活動などを行う市民団体)を育成・支援するため、企業や個人から寄付を募る。

資金を提供するだけでなく、VCやPEの投資手法やマネジメントのノウハウを活用して、事業の規模拡大や社会的インパクトの最大化など経営面のサポートもする。

資金面と事業継続性に不安

「日本国内にも志があって、実際に社会的意義のある事業を行っているNPOはたくさんあるが、資金面を含め、事業の継続もしくは拡大するための十分な力を持っているところは多くありません」と白石氏は言う。「ここにVPのニーズがあると考えています。今後、ファンド規模を拡大し、支援したいと考える人たちがより寄付しやすくなるよう、少額の寄付も受け入れていきたいと思います」

白石氏は一橋大学法学部を卒業後、ベンチャー・キャピタルのジャフコで経験を積んだ。その後、英PE会社のペルミラの日本法人を立ち上げた。PEの出身で、ヨーロッパのベンチャー・フィランソロピー協会会長を勤めたダグ・ミラー氏の助言を受けながら、2013年に日本財団と共にJVPFを組成した。

平岩国泰氏

新渡戸文化小学校は、放課後NPOアフタースクールを最初に受け入れた小学校。写真は放課後アフタースクールの平岩代表理事。

Business Insider Japan

現在のファンドの規模は約3億円。法人10社と個人29人が寄付をしている。また、クリフォードチャンス法律事務所やコンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー、ボックス・グローバルジャパン、PwCあらた監査法人がプロボノ(自らの専門知識や技能を生かして行う社会貢献)としてこのJVPFを支えている。

2013年の組成以来、JVPFは4つの案件を支援してきた。いずれも教育や子育て支援を行う事業者だ。JVPFの最初の案件として2013年12月から2017年3月まで、2000万円を支援したのが放課後NPOアフタースクールだ。小学生を対象に、2009年から首都圏を中心に、地域や企業の人材を「市民先生」として放課後の小学校に招き、さまざまな教育プログラムを実施してきている。

小学校をアフタースクールとして活用

放課後NPOアフタースクールは、小学生が放課後に小学校の施設をアフタースクールとして使える仕組みを作るビジョンのもとに始まった。当初は公立小学校で始めようとしたが、教育委員会からの許可が得られず、私立の新渡戸文化小学校(東京・中野区)が受け入れ第1号となった。

新渡戸文化小学校・アフタースクールの黒板

新渡戸文化小学校・アフタースクールの黒板に描かれる一週間のスケジュール。

Business Insider Japan

「他の場所に移動しないで済むので安心で、家賃もかからず、子どもたちが誰でも参加できる小学校だからこそ、アフタースクールとして活用すべきだと思いました」と代表理事の平岩国泰氏は話す。現在までに私立と公立を併せて17校を開校し、今後5年で30校に増やしていくという。

アフタースクールの拡大を図るための支援を探していた2013年、平岩氏は白石氏に出会う。JVPFは、放課後NPOアフタースクールの入念なデューディリジェンス(Due Diligence=買収や投資を行う際に、資産や買収対象企業の価値や収益力などを調査、評価すること)を行った上で、共に中期事業計画(3〜4年)を作った。

「長期的なビジョンは描いていましたが、中期の具体的な目標設定はなかったですね。JPVFからの資金は人材確保に使うことができ、共に事業を進めることで経営体制の強化につながりました」(平岩氏)

白石氏は言う。

「社会貢献のパラダイムシフトは起きている。ベンチャー・フィランソロピーで、投資や事業経営のノウハウを社会課題の解決に生かす時だと思っています」

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み