「北朝鮮には対話より圧力を」とトランプ全面支持した安倍演説への米国内の反応

「ゴッド・ブレス・アメリカ!」

トランプ米大統領が初めての国連総会の演説をこの言葉で締めくくった途端、テレビの画面が国連からスタジオの中継に変わった。

男性アンカーが、間髪をおかず、こう言った。

「何とも妙な『形容詞』が次々と出ました。『ならず者』や『腐敗した』などです」

国連担当記者も続けた。

「最初は、従来型の大統領らしい演説とも思えたのですが、すぐに『トランプ調』になってしまいました。今まで聞いたこともない国連演説です。トランプはトランプだった訳です」

トランプ

国連でも「トランプはトランプ」だった。

RETUERS /Lucas Jackson

トランプ大統領は演説中、熱狂的支持者が集まる選挙集会での習慣か、演説の途中で拍手を待って間をおいた。しかし、妙な沈黙が会議場に立ち込めた。時には、「それはおかしい」というようなざわめきさえ起きた。席を立つ代表もいた。ロイター通信によると、各国代表の一人が顔を手で覆う場面さえあった。

「取り返しがつかない誤解につながる」

これが逆に「トランプ調」をエスカレートさせた。

「今日の我々の地球に対する罰は、小さなならず者の独裁国家グループによって引き起こされている」と始まり、トランプ氏は北朝鮮、イラン、ベネズエラを次々に槍玉に上げた。北朝鮮の最高指導者・金正恩氏をアニメ映画の主人公でもあるかのように「ロケットマン」と呼び、「ロケットマンは自殺行為に突き進んでいる」と糾弾した。

北朝鮮代表の席は会議場の前列、演説するトランプ氏の真ん前にあった。

次にイランを敵に回した。

「見せかけの民主主義のふりをした、腐敗した独裁国家」で、「主要輸出品は暴力と流血と混沌だ」と非難、2015年のイランとの核開発合意は「アメリカにとって最悪で最も一方的なやりとりのひとつだ」とした。

これに対し、出席していたイランのモハンマドジャバド・ザリフ外相は、「トランプの無知なヘイトスピーチは(国連という場ではなく)中世にこそふさわしい」と応酬した(英BBCより)。

実はグテレス国連事務総長は総会の冒頭演説で、こう釘を刺していた。

「怒りがこもった対話は、取り返しがつかない誤解につながる」

これが誰に向けて言い放たれたのかは明白だったが、完全に無視された。

「支離滅裂で威圧的な空気が、会場に漂った」と英紙ガーディアンが速報した。

「対話には意味がない」安倍演説が速報に

ところが翌20日、各国代表が驚く演説を、日本の安倍首相も展開した。北朝鮮問題について、「必要なのは、対話ではなく圧力だ」としたからだ。軍事オプションだけでなく、相手を挑発する極めて外交的ではないトランプ氏の姿勢をバックアップするような演説内容だった。

スクリーンショット2017-09-2210.32.35-1

安倍首相の演説の際、会場はガランとしていた。

提供:UNIFEED

安倍首相は演説に先立ち、ニューヨーク・タイムズに寄稿し、そこでもトランプ政権の北朝鮮に対する姿勢を支持することを強く打ち出した。

「これ以上対話をしても行き詰まるだろう。一刻も早く北朝鮮に最大限の圧力をかけるべき時だ。国際社会全体からの集中的なプレッシャーが重要だということは、歴史が物語っている。(中略)アメリカがあらゆるオプションが机上にあるとする姿勢を強く支持する」

アメリカでは北朝鮮に対する軍事的オプションとなると、「核戦争」を連想する市民は多い。外交的対話や制裁決議で、解決策を見出していこうとする機関である国連で、日米の首脳が「対話には意味がない」とするタカ派的な姿勢を見せるというのは、市民にとっては驚きだ。

日本の首相の演説がアメリカでニュースになることはこれまで極めて稀だが、安倍首相の「対話には意味がない」という言葉は、通信社やテレビ局記者がすぐにツイッターで速報した。

21日に開かれた日米韓首脳会談で、韓国の文在寅大統領が一貫して武力衝突の回避と北朝鮮との対話を訴えているのを踏まえ、ニューヨーク・タイムズはこう指摘した。

「韓国人の中には、安倍首相が北朝鮮問題を利用して、国内で国粋主義者としてのアジェンダをプッシュしようとしているのではないかと疑っている」

同じ国連本部で署名された核兵器禁止条約

安倍首相が衆院解散を決めたことが影響したのかは不明だが、首相の演説の際、国連本部の会議場は代表が半分も出席しておらず、スカスカの状態。国際社会でのプレゼンスのなさを示した。国連を出れば、日本の平和主義と独特の文化、サブカルチャーが愛され、「日本」に対する印象は非常に良いのとは対照的で、スカスカの会議場は奇妙に映る。

首相演説の20日、同じ国連本部では核兵器禁止条約の署名式典が開かれ、北朝鮮の核脅威が意識される中、51カ国の代表がにこやかに署名した。米、英、仏、ロシア、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの核保有国は署名せず、また唯一の被爆国である日本も、過去の交渉をボイコットし署名に至っていない。

今年亡くなった被爆者の遺影を抱え、署名式典を見守るため、ニューヨークを訪れていた田上富久長崎市長は、こう語った。

「長年、長崎が努力して、亡くなった人が望んできた核兵器禁止条約がいよいよスタートする。たくさんの人々が力を合わせてできたということ、その結果を確認するのは大切なことなので、ニューヨークにやってきた。条約が力を持つために、早い発効を願ってきた」

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい