世界最大級の資産運用会社のブラックロック(BlackRock)は、ビッグデータからスモールデータまでを使いこなし、日本のGDP(国内総生産)を上回る600兆円以上の資産を株式や債権、不動産やインフラなどを含むオルタナティブ資産などで運用を行う。
日本のGDPを上回る600兆円以上の資産を株式や債権、オルタナティブ投資、不動産などで運用を行うブラックロック。
REUTERS/Shannon Stapleton
楽天が都内で9月27日に主催したイベントで、ブラックロック・ジャパンの運用部門で株式戦略部・部長の入山千恵子氏は、株式のアクティブ運用を通じてリターンを追求する時に大切なことは、バランスシートや損益計算書の上で「良い企業」を探すことに尽きると話した。
ビッグデータやAI(人工知能)を利用したアクティブ運用では、例えば衛星データを使って、中国の工場や物流のある程度の状況を把握できれば、国の経済活動の予測につながる。
また、企業の売上高に反映される以前でも、クレジットカードの利用データを見ることで、人の動きは分かってくると、入山氏は「Rakuten FIINTECH CONFERENCE 2017」で「人工知能(AI)がもたらすFinTechの革新」の中で述べた。
金融機関のアナリストたちが、1日に発行する株式銘柄などについての分析レポートは約4000種類、ページ数は36000ページに及び、言語の数では50を超えるという。
入山氏は、「1日に10本のレポートを読むのが限界です」と述べ、テキスト分析を可能にする人工知能(AI)の重要性を強調した。
ブラックロックはこの10年、ビッグデータやAIの活用を拡大してきた。
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データ・サイエンティストの増加
ビッグデータ分析や人工知能の開発が進む中、ブラックロックの人材登用は過去10年で大きく変わった。
「我々の会社でいうと、10年以上前のチーム構成というのは、ほとんどがファイナンス専攻でした。それともちろんテクノロジーの力を使うのでそういうバックグラウンドの人材。今はどうかというと、いわゆるデータ・サイエンティストの採用が非常に増えました」(入山氏)
「10年以上前のチーム構成というのは、ほとんどがファイナンス専攻でした」と話す入山氏。
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データ・サイエンティストだけでは、資産運用はできない。
入山氏は、資産運用における3つの重要なものとしてデータと技術、そしてマーケットを知る人材をあげた。「運用の世界では市場はダイナミックに動いていく。三位一体となった人材登用が大切である」と話した。
陳腐化していくデータ
今後5年、資産運用の世界ではテキスト・データに加えて、画像の利用は可能性が高いだろうと、入山氏は言う。
「今使われているものが5年後も使えるかと言えば、それはまずないと思います。陳腐化されていきます。よく社内で話すのですが、1、2歩先が丁度良いですね。10歩先だと早すぎる」と入山氏。「アメリカ株と新興国の株の運用を行う時によくありますが、アメリカで効いたので新興国でも効くかなと思ったら、早すぎたということがある。1歩、2歩先を行くことを続けていこうと考えてます」
楽天のイベントで「AIがもたらすFinTechの革新」をテーマにパネルディスカッションを進めた、ブラックロック・ジャパンの運用部門で株式戦略部・部長を務める入山千恵子氏(右から2番目)。
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