ネパールにコミコンやアニメスタジオ。日本オタク文化で若者の仕事をつくる

9000人もの死者を出したネパール大震災から2年余り。まだ至るところに震災の生々しい傷跡が残り、復興はなかなか進まない。

その一方で、ネパールでは2000年代半ばごろから経済成長が続いている。震災で一時的に減速したものの、2017年のGDPでは約7%の成長を達成しようとしている。

「ネパールの国内は依然として政治が不安定で多くの問題を抱えている。しかし、それでも高い経済成長を実現できているのは、多くの国民が海外に出稼ぎに行き、送金しているからです。GDPの3割弱は海外送金によるものと言われています」(ネパール在住の日本人)

海外の大学を出て海外で働ければ、ネパールでは考えられないような収入を得ることができるので、今若者の間では空前の留学ブームが沸き起こっているという。留学ブームを背景に、欧米だけでなく、日本の文化への関心も高まっているのだ。

ComicConNepal1

アメリカンヒーローの共演? 大学生など若者はコスプレもする。

主催者提供

9月9日、カトマンズのサネパ地区には、思い思いのコスプレに身を包んだ学生ら若者たちが集まった。その数5000人。コスプレコンテスト「Comi-Con Nepal(コミコンネパール)」が開催されたのだ。

「それまでにも各大学にはオタククラブがあり、部員たちがそれぞれのコスチュームなどを批評し合っていたそうです。しかし、コミコンのような発表の場がなかったので、非常に喜んでくれたようです」

ネパールコミコン

メイン会場前の赤ジュータンの上でポーズを決める2人。

撮影:松崎隆司

こう語るのは主催者のコト・インクCEOのジェフリー・樫田氏だ。彼はサブカルチャー業界ではちょっと知られた男だ。

京都生まれで日本名は樫田進次。1970年に関西大学を卒業後、渡米。カリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学するが、英語ができずジュニアカレッジからやり直し、最終的にはコロンビア大学の大学院に合格する。

1976年に修士課程を修了し、一時は国連で働こうと考えていたこともあった。結果的に日系企業の米国進出支援を担うマーケティングリサーチ会社の代表に就任し、歯磨きの「アクアフレッシュ」や「VO5ヘアースプレー」などの市場調査を担当。当時、全米の主な都市にあるドラッグストアチェーンと提携し、パーソナルケア商品売り場の定点観測専門のニューズレターを発行し注目された。京都の老舗豆腐店の米国生産工場建設をコンサルタントして手がけたこともある。

そんなときに舞い込んだのがフィギュアやプラモデルを手掛ける日本の玩具メーカー、寿屋のアメリカ子会社の再建の依頼だった。この会社を立て直した樫田氏はその後、MBOによって買収、本格的にサブカルチャー事業に参入した。

「今後はサブカルチャーの時代が来る」

寿屋の企業再生を通してこう感じるようになった樫田氏は、アジアでのコミコン開催に関心を抱くようになった。

ネパールコミコン

ネパールでも日本のアニメは大人気。

撮影:松崎隆司

コミコンのルーツはシェル・ドルフ氏らによって1970年に創設された「ゴールデン・ステート・コミック・ブック・コンベンション」。当初はSFや特撮ファンタジー映画のファンの集いのようなもので、集まってくるのも100人程度だったが、日本のアニメやオタク文化が合流したことで急速に人気が拡大、今では1日に約12万5000人が来場するコンベンションに成長している。

発祥地のサンディエゴ以外にもニューヨークや、フランスなど世界中で毎年開催されるようになり、2016年12月には日本でも初の東京コミコンが開かれ、3万4000人のファンが殺到した。

「サンディエゴコミコンには寿屋の時代、つまり10年以上前から参加していますし、3年ぐらい前からはニューヨークなどで開いて人たちとも一緒にやっていこうと話していました」

その樫田氏が最初にコミコンを開いたのが、なぜネパールだったのか。

「アメリカでディズニーアニメーション関連のプロダクション会社のネパール出身の社長から『ネパールでは若い人に仕事がない。自分はディズニーで「美女と野獣」や「ファインディング・ニモ」などを作ってきたが、自分のスキルや知識を母国の若者たちに生かしたい』という話をよく聞いていました。それでネパールに関心を持つようになったのです」

2009年にネパールにアニメーションスタジオを設立。ピクサーやディズニーのアニメーションの一部の制作も請け負うようになった。2016年には自身の会社の子会社も設立した。

「現地の人と話していると、ネパールの大学生はインターネットで日本のアニメの情報を収集して、お互い交換していた。各大学には同好会ができていることが分かったのです」

実際にどのくらいの人が集まるのか予想もつかなかったが、プレイベントを開いたところ3000人が集まった。

9月9日のコミコンにはバンダイナムコホールディングスやジェンコなど日本の企業なども協賛。在ネパール日本大使館の小川正史大使に審査委員も務めてもらった。

ネパールコミコン

イベントには多くの日本企業が協賛している。

撮影:松崎隆司

ネパールのコミコンの優勝者と準優勝者は12月にインドのデリーで開かれるコミコンに招待され、コスプレコンテストに参加、入賞者のうちの2人(ビザ取得が可能であることが条件だが)は東京コミコンのコスプレショーに参加することになっている。

樫田の次の目標はカトマンズにマンガカフェをオープンさせ、それをインドにも広げていくこと。

すでに中国などでは定着しつつある日本のオタク文化だが、今後どこまで根付いていくのだろうか。

(文・松崎隆司)

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