希望の党との事実上の合流で分裂する民進党。
撮影:今村拓馬
希望の党との合流、立憲民主党の設立で、事実上解党になる民進党でさまよう政党交付金4525万円がある。
もとはと言えば、民進党富山県連で2016年に発覚した政党交付金の不正疑惑だ。党本部は、元幹部の2人が不正に関与した可能性があると発表したが、元幹部の2人は関与を否定。民進党本部は4525万円を元幹部に代わって、一旦立て替え国庫に返納した。民進党本部は、元幹部の提訴を検討していたが、東京都議選や代表選が続き、調整ができず。いよいよ民進党が分裂をすれば、4525万円の行方はどうなるのか。
不正の疑惑が明らかになったのは、2016年9月。14人が辞職した富山市議会の政務活動費の不正問題を発端に、今度は総務省から政党に交付される政党交付金の不正問題に飛び火した。
民進党富山県連に政党本部から入った政党交付金が不正に使われていた疑惑が浮上した。政党交付金の使い道を書いた報告書には、広報誌の印刷代や会場代の経費として、数十万円の支出が次々と並んでいた。印刷会社や会場に取材すると、「この受注はない」「この日付で会場は使われていない」と不透明な使い道が続々と発覚した。
提訴の主体消え富山県連幹事長「先まったく見えない」
報道からまもなく、党本部が調査に乗り出した。2016年12月に記者会見し、2010〜2015年の過去6年間で、総額4525万円が不正、または不正に使われた疑いがあると結論づけた。関与したのは、政務活動費の不正で辞職した元県連幹部の元県議と元市議と名指しした。
不正の手口は、政務活動費と同じ。元幹部らが印刷会社などから白紙の領収書を受け取り、架空の広報誌の印刷代などを記入していた。県連の現役市議も、自身が経営する会社の白紙領収書を県連幹部に渡していた。
党本部の秋元雅人事務局長は会見で、元県連幹部に対し、損害賠償請求や刑事告訴を検討することを発表。党本部が約4525万円を立て替え、国庫に返納した。富山県連は不正の項目ごとに、2人の元議員の主張をまとめ、提訴の時期を党本部と調整し続けた。蓮舫前代表も4月に富山県を来県した際、地元紙に提訴を検討していることを答えた。
蓮舫前代表(左)からバトンを継いだ前原誠司代表(右)にとっては、不正問題は過去のもの?
Reuters/Toru Hanai
しかし、地元では富山市議選、東京では都議選、党代表選と行事が目白押しに。提訴の調整が難航した。そして、いよいよ衆院選に突入する。
民進党が希望の党に事実上合流することが報道され、提訴の中心を担う民進党が分裂してしまった。さらには、不正問題の決着が付いていない民進党の政党交付金を、希望の党がお目当てにしているという報道まで出た。
政党交付金とは、総務省が政党に政治活動を目的に交付する資金。交付額は、国会議員の数と国政選挙の得票数によって決まり、資金源は税金だ。民進党本部には2016年度、約93億4000万円が交付され、2016年度末の繰越の総額は約54億4000万円と潤沢にある。
これに比べれば、4525万円なんて、ちっぽけな金額ということか。とはいえ、政党が組織内の税金の不正問題の後始末をつけなくていいのか。ましてや、そんな疑問を抱えた政党交付金を、別の党との新たな船出の頼みにしていいのか。
提訴の流れをどこが継ぐかについて、 秋元事務局長は「この状況なので結論が出ていない。お答えできる状況じゃない」と困惑した様子。富山県連の寺崎孝洋幹事長は、いずれかの党が提訴する可能性も残しながら「先がまったく見えない。うやむやになるかもしれない。今ごろ、(元幹部2人は)ほくそ笑んでいるかもしれない」とうなだれていた。