テックビューロ(大阪市)が提供する、仮想通貨を使った資金調達ICO(Initial Coin Offering)のプラットフォームCOMSAが揺れている。
クラウドファンディグのプラットフォームCAMPFIRE(キャンプファイヤー・東京都渋谷区)は、COMSAを利用したICOの実施を検討していたが、両社の協議が決裂した模様だ。「今後もCOMSA上でICOを実施する予定はございません」としたCAMPFIREの発表に対し、テックビューロが反論する事態になっている。
東証2部上場のプレミアムウォーターホールディングス(東京本社・東京都渋谷区)もCOMSAによるトークンセール(ICO)を検討しているが、Business Insider Japanの取材に対して「未だに検討中となっております」とメールで回答した。
ICOのプラットフォームCOMSAのウェブサイト
テックビューロはブロックチェーン関連の技術開発を手がけており、仮想通貨取引所のZaifを運営している。8月3日、ホワイトペーパー(目論見書)の策定、ブロックチェーン技術の導入、トークン(引換券に相当)の売り出しなど、ICOに必要な支援を提供するプラットフォームCOMSAのサービス開始を発表。その際、プレミアムウォーターホールディングスが11月中旬、CAMPFIREが11月下旬にCOMSAによるICOを実施する予定だとしていた。
テックビューロとCAMPFIREの公表資料によると、両社の協業は2016年9月26日までさかのぼることができる。CAMPFIREが、テックビューロとの事業提携を発表。クラウドファンディングのビットコインによる決済や、独自の仮想通貨の導入などを進めていくとの方針を明らかにした。
2017年3月27日には、CAMPFIREはテックビューロと提携し、同日付で仮想通貨取引所FIREX(ファイヤーエックス)を開設したと発表している。
しかし、9月29日になってCAMPFIREは「(COMSAについて)合意に至った事実はない」と発表。ICO領域への参入を別の手段で検討しているとした。
10月2日には「COMSAに関する一連の経緯につきまして」との題で、同社側の見解を発表した。それによると、9月14日、CAMPFIREはテックビューロから「COMSA上でのICOの実施を前提とした業務提携を解消する」との通知を受け、翌15日には仮想通貨取引所システムのOEM(相手先商標製品製造)提供を終了させる内容の通知を受けたとしている。
CAMPFIREは9月12日付で、別の仮想通貨取引所コインチェック(東京都渋谷区)の決済サービスを導入したと発表しており、「TB(テックビューロ)社は関係解消の根拠として挙げている」と主張している。
一方、テックビューロは10月2日付の発表で、CAMPFIREがコインチェックの決済サービスを導入したことについて、「従前の信頼関係が破壊された」「提携の維持や構築が不可能と判断」と主張している。
テックビューロは10月2日からCOMSAのトークンセールも実施しており、8月3日以降に事前登録した人を対象に、トークンの事前売り出しもしている。
プレミアムウォーターホールディングスも10月3日付で、COMSAによるトークンセール(ICOに相当)を検討しているが、「トークンを発行するか否かを含めて、テックビューロと共に総合的に検討している段階であり、まだ確定した情報はありません」と改めて発表した。
仮想通貨を巡っては、金融庁は9月29日、4月に改正された資金決済法に基づき、テックビューロを含む11社を仮想通貨交換業者として登録したと発表した。さらに17社が継続審査中で、取引所など交換業者間の競争が激化しているとみられる。
【COMSAを巡る一連の経緯】
2016年
- 09月26日:CAMPFIRE、テックビューロとの事業提携、クラウドファンディングへのビットコイン決済の導入などを発表
2017年
- 03月27日:CAMPFIRE、テックビューロとの提携を発表、仮想通貨取引所FIREXを開設
- 08月03日:テックビューロ、COMSAを発表。COMSAのトークンセールの事前登録を開始
- 09月12日:CAMPFIRE、コインチェックの決済サービスを導入したと発表
- 09月14日:テックビューロ、CAMPFIREに対し、「ICOの実施を前提とした業務提携を解消」と通知
- 09月15日:テックビューロ、CAMPFIREに対し、仮想通貨取引所システムのOEM提供を終了すると通知
- 09月29日:CAMPFIRE、テックビューロと「合意に至った事実はない」との見解を発表
- 09月29日:テックビューロ、近畿財務局の仮想通貨交換業者に登録
- 10月02日:テックビューロ、COMSAのトークンセールを開始(11月6日まで)
- 10月02日:CAMPFIRE、テックビューロがそれぞれ見解を発表
- 10月03日:プレミアムウォーターホールディングス、COMSAによるトークンセールについて「総合的に検討していく段階」と発表
(※テックビューロ、CAMPFIREの公表資料を基に作成した)
(編集部より:初出時、CAMPFIREとテックビューロの事業提携を2017年9月26日としていましたが、正しくは2016年9月26日となります。お詫びして訂正いたします。 2017年10月4日 12:20)