銃撃から逃れようと会場を走るフェスの参加者。
David Becker / Getty
近代アメリカ史上最悪となったラスベガスの乱射事件をきっかけに、アメリカでは再び銃規制をめぐる議論が過熱している。
容疑者が使用した武器の非道さと、短時間で多くの死傷者を出したそのスピードは、一般市民にどういった種類の銃をどのくらいの数まで購入することを許可すべきかという疑問を生じさせた。
警察が容疑者のホテルの部屋に踏み込むと、複数のセミオートマチック・ライフルを含む23丁の銃が見つかった。その後、ネバダ州メスキートにある容疑者の自宅からは、19の火器と数千の銃弾が発見されている。
容疑者が実際に使用した具体的な武器のタイプはわかっていないが、記録された動画や音声から容疑者のライフルには速射能力があったと見られている。合法的に購入できる、「バンプストック」と呼ばれる銃を全自動(フルオート)で連射できる装置が使用された可能性がある。
多くの政治家や銃規制推進派が何らかの規制を求める一方、反対派はこうした惨事を政治利用すべきではないと批判、銃の登録が治安の改善にはつながらないと主張している。
アメリカの一般市民は銃規制について、どのように考えているのだろうか?
2017年春に行われた調査によると、89%のアメリカ人(銃の所有者、非所有者含む)が、精神疾患者には銃の購入を許可すべきではないとの認識で一致していた。
トランプ大統領は2月、一定の精神疾患者による銃の購入を禁止したオバマ政権時代の規制を撤廃した。
Reuters/George Frey
Sources: Pew Research Center, NPR
個人販売や展示即売会では素性調査抜きで銃が購入できる、いわゆる「ガン・ショーの抜け穴」についても、意見はさほど割れていない。銃所有者で77%、非所有者で87%、全体で84%がこの抜け穴を規制すべきだと考えている。
展示即売会で購入すれば、規制の対象にはならない。
Associated Press
Source: Pew Research Center
FBIの渡航禁止リストに名前が掲載されている人間についても、83%のアメリカ人が銃の購入を禁止すべきだと考えている。しかし、人権擁護団体はFBIのリストは恣意的で、しばしば不正確で、イスラム系アメリカ人に対する差別につながるとして、国会の法規制には批判的だった。
Associated Press/Ted S. Warren
Sources: Pew Research Center, Business Insider
銃の所有者と非所有者の意見が割れ始めるのが、アサルト・スタイルの武器と大容量の弾倉について。アサルト・スタイルの武器の禁止について賛成しているのは、銃所有者で半数以下、非所有者では77%だ。弾倉の規制についても、賛成しているのは銃所有者で44%、非所有者で74%と開きがある。
カスタムメイドのセミオートマチックのライフルと、取り外し可能な大容量の弾倉。
Associated Press/Rich Pedroncelli
Source: Pew Research Center
全米ライフル協会(NRA)のロビー活動も問題を複雑化させている。アメリカの銃の所有者のうち、NRAに所属しているのはたった19%、全体の5分の1以下だ。
Reuters/Brian Snyder
Source: Pew Research Center
NRAが銃規制に与える影響については、44%のアメリカ人が「大きすぎる」と考えている。一方、「適切」と考えているのが40%、「少なすぎる」と考えているのが15%だ。
銃規制の推進派と一部の民主党議員は、銃の登録に関する規制が成立しなかったのはNRAのせいだと主張している。
Associated Press/David Goldman
Source: Pew Research Center
しかし、その考え方は党派によっても異なる。民主党を支持する銃所有者の60%がNRAの影響力が大きすぎると考える一方、共和党を支持する銃所有者の67%は適切だと考えている。
共和党もしくは保守派の銃所有者は、民主党もしくはリベラル派に比べ、2倍もNRAに所属している率が高い。
Associated Press/Evan Vucci
アメリカ人の銃所有率は近年、低下し続けている。しかし、その売り上げは史上最高レベルだ。
議会調査局(CRS)によると、アメリカには約3億丁の銃が出回っている。
AP
Sources: FBI, The Washington Post
これは銃の所有者が減る一方で、1人あたりの所有数が増えていることを示唆している。事実、平均的なアメリカの銃所有者は8丁の銃を持っている。
例えば、2012年に発生したコネチカット州のサンディフック小学校銃乱射事件の容疑者の母親は、複数の銃を金庫に保管しており、しばしば息子を射撃場に連れて行っていた。
Connecticut State Police via Getty Images
Sources: The Washington Post, The New York Times
銃所有者のうち、67%がその主な目的を「護身用」と回答している。
71%の女性の銃所有者が、銃を購入した理由を「護身用」と答えている。
Associated Press/Lisa Marie Pane
Source: Pew Research Center
銃所有者の4分の3近くが、銃の所有は個人の自由の本質に関わるものだと考えている。
しかし、非所有者ではその割合は35%にとどまる。
Whitney Curtis/Getty Images
Source: Pew Research Center
一般的に、アメリカ人の55%は銃規制をより強化すべきと考えており、緩和すべきと考えているのは10%、現状を維持すべきと考えているのは34%だ。今回の事件を受けて、こうした数字にも変化が現れるのかもしれない。
ラスベガスの銃乱射事件では、容疑者はホテルの部屋と自宅に合計42庁の銃を所持、その多くは合法的に入手されたアサルト・ライフルだった。
Getty/David Becker/Business Insider
Source: Gallup
[原文:How Americans really feel about gun control]
(翻訳:編集部)