グーグルの新しいスマートフォン、ピクセル2。
Matt Weinberger/Business Insider
ハードウエア事業は、文字通りハードだ。スマートフォンのような複雑なものは、作るだけでも大変なのに、さらに利益率の低さと生産コストの高さを乗り越えなければならない。
グーグルのような大企業は、この類の現実に対する認識が甘い。だから昨年、グーグルが初のスマートフォン、ピクセルを発表した時、多くの人が懐疑的な見解を示した。グーグルがどうやって、あるいは本当にアップルやサムスンと戦えるのか分からなかったから。アップルやサムスンは、ハイエンド端末のマーケットをほぼ独占している。
実際、ピクセルのセールス状況は不明だ。10月4日(現地時間)に行われたピクセル2の発表イベントで、グーグルはセールスに関する数字は何も発表せず、初代ピクセルは十分にヒットしたとだけ述べた。最近、我々は初代ピクセルの販売台数は100万台程度という未確認情報を入手した。しかしこれは最初の四半期だけで数千万台を販売したと見られているiPhone 7sの足元にも及ばない数字だ。
だが、4日にグーグルが発表した数多くのハードウエア製品を見ると、こう言える —— グーグルはAI(人工知能)におけるアドバンテージをハードウエアにおけるアドバンテージに転換することで、アップルに対抗しようとしている、と。
そのことは様々な点で確認できる。例えば、グーグルのフォトストレージサービス、グーグルフォトはアップルのiCloudより優れている。グーグルフォトはピクセルに搭載されている。そして、ピクセルのコアであり、スマートスピーカーGoogle Homeのコアである音声AIアシスタント「グーグルアシスタント」は、Siriよりはるかに先行している。
だが現時点で、最も分かりやすい事例はピクセルバズ(Pixel Buds)だ。ピクセル2と連携するワイヤレスイヤホン。アップルのAirPodsと直接競合する。
注目のピクセルバズ
オリジナリティではグーグルに軍配は上がらないが、ピクセルバズはイノベーションでは勝っている。
専用の箱から取り出してピクセル2につなぐだけで、グーグル翻訳アプリと連携し、ピクセルバズを全世界対応の自動翻訳機のように使うことができる。自分が話した言葉をフランス語に翻訳したり、相手のフランス語を英語に翻訳することが可能だ。素晴らしい。少し試してみたところ、うまく作動するように思えた。
ピクセルバズは、アップルのAirPodsに対するグーグルの答えだ。
Matt Weinberger/Business Insider
ピクセルバズは、もうすでに存在し、10月には発売される。一方でアップルのAirpodsも大きな可能性を秘めている。ヒアラブルコンピューター(イヤホン型コンピューター)に進化させる、あるいは少なくとも高性能の補聴器に進化させるなどだ。だが、発売から1年近くが経過したが、アップルはAirpodsの可能性にあまり関心を示していない。
言い換えると、グーグルは、アップルが不得意な部分を明らかにすることにより、AIにおけるグーグルの優位性をアピールしようとしている。ピクセルバズの他にも、ピクセル2には写真で関連情報を検索できる、新しいグーグルレンズなどの機能が搭載されている。
新しいピクセル2は、オリジナリティーに優れているとは言い難い。スペックやデザインは、サムスンのGalaxy S8やiPhone Xだけでなく、アンドロイドの父と呼ばれるアンディー・ルービン氏が開発したエッセンシャルフォンと比較しても、特に際立ったところはない。高性能なカメラが搭載されてはいるが。ピクセル2は、売れるだろうか?
だが、10月4日の新製品発表会は、グーグルが、AIにおいてアップルがいかに遅れているかを示すためのものだったと考えると、全て納得がいく。グーグルの新製品はiPhoneの魅力を下げたわけではないが、アップル自体を確かに時代遅れの存在のように見せた。
[原文:Google is using its biggest advantage as a weapon to embarrass Apple]]
(翻訳:まいるす・ゑびす)