環境も重要! 「カーンアカデミー」の設立者が作った究極の学校をのぞいてみた

学校で自由に過ごす3人の子どもたち

Kurani

美術から歴史、コンピュータープログラミングまで、全てをカバーする無料オンライン学習のプラットフォーム「カーンアカデミー」を設立したことで知られるサルマン・カーン(Sal Khan)氏。

同氏は学習分野でもう1つの革命をリードしている。フレキシブルな学習空間だ。

カーン氏は、カリフォルニア州マウンテンビューに2014年に設立された全学齢対象の学校を2017年、新たな高校生向けのカーン・ラボ・スクール(Khan Lab School)として生まれ変わらせた。建築事務所Kuraniによって設計、建設されたこの学校では、伝統的な教室での座学と生徒主導のプロジェクトが融合している。

通常の学校教育とは一線を画すこのアプローチは、未来の学校のあり方を切り開くかもしれない。

中をのぞいてみよう。



Kuraniの創業者Danish Kurani氏によると、カーン・ラボ・スクールは学校と研究室を組み合わせた、実験と教育の場だ。

ロッカールームでおしゃべりする3人

Kurani/James Florio

「教員がさまざまなコースや実験を試すことができるよう、多くの専門スペースを追加しました」とKurani氏。これらのスペースには大きな窓があり、誰でも中で行われている実験の様子が見られる。小さな会議室や共有スペース、カフェもミーティングスペースとして使用できる。

「科学者が実験結果を共有するラボのように、生徒と教員の作業用ディスプレイも設置しています」

例えば図書館では、生徒は人目につきにくい場所でプライバシーを守りながら、本を読むことができる。

図書室で読書する少女

Kurani/James Florio

柔軟な学習アプローチの一環として、子どもたちには1人で過ごせる機会が与えられる。 コラボレーションは大切だが、仲間に囲まれていると多くの生徒は結果的に圧倒されてしまう。

「限られたスペースでも、生徒にさまざまなツールと環境を提供する、たくさんの独立した空間を作ることができる」とKurani氏は言う。

生徒同士の交流を深めたり、ブレインストーミングのためのスペースに集まることも可能。多くの研究で、こうしたダイナミズムが子どもの成績を向上させることが分かっている。

集まった子ども

Kurani/James Florio

最近では3万6000人の生徒を対象とした調査で、「パーソナライズ学習」は従来の教育に比べ、数学と読書の統一テストのスコアを向上させたことが分かった。 パーソナライズ学習は、教師がより多くの指導例をもとに教え、生徒はテクノロジーの助けを借りながら、その指導に沿って学ぶものだ。

カーン・ラボ・スクールは、そのデザインと哲学の両面でパーソナライズ学習を取り入れている。 生徒は年齢ではなく、それぞれの分野のスキルレベルに応じてグループ分けされる。

カーン・ラボ・スクールには、生徒の活動に合わせて、さまざまな「ラボ」がある。

さまざまなラボの様子

Kurani/James Florio

ここには生徒がデザインし組み立て、プロトタイプを作成できるMake Labの他、ブレインストーミングができるIdeate Labや、アイデアや問題を声に出して議論するのに便利なChat Labがある。

「学校がカリキュラムや人事をどのくらい頻繁に変えているかを考えれば、教育の未来においてこの教室モデルは理にかなっている」とKurani氏は語る。 「今のところ、対話やブレインストーミング、制作、発表を通じて生徒が学習していくことは間違いない」

テクノロジーはカーン・ラボ・スクールのデザインに不可欠だ。学校は技術の進化に応じて適応できるよう、設計されている。

撮影中の生徒

Kurani/James Florio

「伝統的な学校には丈夫な壁、作り付けのキャビネット、重い機材など、たくさんの固定要素がある」とKurani氏。

こうした教室は、新しいテクノロジーに適応するにはふさわしくない。

「私たちは、これまでとは異なる種類の学校を建てることにしたんです」「今の子どもたちはiPadやChromebook、デジタルディスプレイ、ローリングテレビを使っています。テクノロジーが変化すれば、学習環境もシームレスに進化するのです」

カーン・ラボ・スクールのモットーは「誰もが教師、誰もが生徒」だ。そのアイデアを具現化したスペースを構築することが不可欠だったとKurani氏は語る。

2人の教師が話し合っている

Kurani/James Florio

同校では、毎年何百人もの教師がカーン・ラボ・スクールを訪れ、学びの変化や生徒に必要なものについて情報を共有するよう奨励している。Kurani氏のチームは、こうした教師間のブレインストーミングや反映、情報共有の需要に応えるスペースを提供することに重点を置いた。

本質的にオープンソースの教育だ。

こんなおしゃれな教師専用の休憩室があってもいいだろう。

教師の休憩室

Kurani/James Florio


カーン・ラボ・スクールの生徒数はわずか100人だが、Kurani氏によると、このモデルはより大きな規模でも実行できる。

組み立て作業をする生徒

Kurani/James Florio

「もし教育機関が私たちに1000人以上の生徒のための学校の設計を依頼してきたら、まずはどうすればその学校がユニークな場になるかを模索し、理解するよう努力します」「その後、学校のビジョン、文化、ニーズを考慮し、どのようにカスタマイズすべきか検討します」とKurani氏。

アメリカ国内の学校が教育と技術を融合させたカーン・ラボ・スクールと同じ道を歩み始めるのは、時間の問題だ。

実験をする子ども

Kurani/James Florio

Kurani氏は、時とともに変化することが教育の基本であると信じている。 学校の設計も同じはずだ。

「私の意見では、学習環境を1つのカリキュラムや方法でまとめるべきではありません」と同氏は指摘する。「教育は自由に進化し、常に向上していかなければなりません」

世界有数のテック企業の拠点から数キロ離れた場所で、カーン・ラボ・スクールは教育分野で改革を起こしているのかもしれない。

カーン・ラボ・スクール

Kurani/James Florio


[原文:The founder of Khan Academy built the ultimate school for kids to work and play together — take a look inside]

(翻訳:Kamada Satoko)

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