そもそも、アマゾンがこのようなイベントに登壇すること自体が大きな変化だ。
David Ryder/Stringer
アマゾンは、スタートしたばかりの広告ビジネスについて固く口を閉ざしている。
同社は10月6日(現地時間)、ロンドンで開催されたIABデジタル・アップフロント(IAB Digital Upfronts)に初めて登壇。イギリスの広告主や広告代理店に対し、どのようなビジネスを展開するのかを少しだけ明らかにした。なお報道陣の立ち入りは禁止された。
そもそも、アマゾンがこのようなイベントに登壇すること自体が大きな変化だ。ツイッター、フェイスブック、ヤフー(現オース)は皆、自社のプラットフォームを広告主にアピールするためにここ数年、アップフロントでの登壇内容を公開している。例えばツイッターは例年、自社をリアルタイム配信に最適なプラットフォームとしてアピールしており、今年はライブ動画配信サービスをプッシュした。
イベントの公式ツイートおよびイベント参加者がBusiness Insiderに語ったところによると、アマゾンは明確な広告ビジネスのアピールは行わなかった。代わりに、音声とブランド構築に重点を置いたようだ。
参加者によると、アマゾンは飲料大手ディアジオなどのブランドと連携し、ユーザーが同社の音声AIアシスタント「Alexa」を利用して商品を簡単に注文するようなショッピングの未来像を描いている。
「広告の要素は全くない」と参加者の1人が匿名を条件に語った。
「アマゾンはアレクサを広告プラットフォームと考えていない、その点に関してアマゾンは明確だった。むしろアマゾンは、アレクサこそが最高のユーザー・エクスペリエンスになると考えている」
アマゾンはアレクサを「顧客との関係構築」のためのプラットフォームにしようとしていると先ほどの人物は付け加えた。
「アレクサは広告チャンネルではないとアピールしていた。費用は必要ない、だが、アレクサは消費者のニーズから始まる新しい関係構築のやり方であり、顧客に価値を提供する方法も一新される」
ディアジオのデジタルメディア・パートナーシップの責任者ジェリー・デイキン(Jerry Daykin)氏は、ツイッターに以下のように投稿した。
「アップフロントでアマゾンが大声で主張。ダイレクト・Eコマースの先を見据え、ブランドをより広く確立する際に、アマゾンに何ができるかを考えてみてほしい、と」
音声については、アレクサ用に便利なアプリを開発することを意味するだろう。ディアジオは今年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで、参加者がアレクサを通してカクテルを注文できるバーを開設した。
世の中の全てのことが、最終的に製品の購入者を増やすことにつながるというのがアマゾンの論理だ。
アマゾンが良質な顧客体験の提供に重点を置いていることは良く知られている。同社CEOジェフ・ベゾス氏は、顧客から届いたクレームに「?」を書き加えて、関係するスタッフに一斉送信すると言われている。
「アマゾンは最高の顧客体験を実現するために、ありとあらゆる手法を模索しているのだと思う。トイレットペーパーだろうとAmazonプライムのコンテンツだろうと、ユーザーが欲しいものを何でも手に入れることができるように」と匿名の参加者は述べた。
JPモルガン・チェースのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)も10月5日、アマゾンは「常に顧客のことを真剣に」考えており、広告分野でFacebookやグーグルと競合するだろうと述べた。
アップフロントの参加者は、アマゾンは広告ビジネスについて徐々に明らかにするだろうと予想している。
「アマゾンはブランドに、アレクサなどのプラットフォームに参入してもらう必要がある。個人が作るような雑学アプリではなく、プレミアム・コンテンツを作ってもらうために」
アマゾンの広告ビジネスはここ数年、大幅に成長しており、同社にとって急速に成長しているビジネスとなっている。大手広告代理店WPPは、アマゾンは2016年、デジタル広告で25億ドルを売り上げたと見ている。またアマゾンは、広告代理店に向けてプログラマティック広告ビジネスも展開している。
[原文:Inside Amazon's secretive pitch to brands and advertisers in the UK]
(翻訳:Yuta Machida)