17量子ビットの超伝導テストチップを手にする、インテル量子ハードウエア部門の責任者ジム・クラーク氏。
Intel
- インテルは10月10日(現地時間)、「17量子ビットの超伝導テストチップ」を協力関係にあるオランダの研究施設QuTechに納入した。
- これは世界で2つ目の17量子ビット超伝導チップ。1つ目は5月にIBMが開発した。
- 奇妙で、世界を変える可能性を秘めた、新たなコンピューティング分野でインテルは存在感を示した。
インテルは10月10日、最先端の17量子ビット超伝導テストチップを公開、すでに同様のチップを発表していたIBMと肩を並べた。
これまで、量子コンピューターの開発レースは、IBMとグーグルによる一騎打ちの様相を呈していた。今年4月、グーグルは9量子ビット超伝導チップを公開し、他の研究の進展によって、年内までには量子コンピューティング分野におけるいくつかの記録更新を見込んでいると発表した。5月、IBMは世界初の17量子ビット超伝導チップを発表した。
IBM、インテル、グーグル、マイクロソフトなどの研究者たちが目指しているのは、50量子ビット超伝導チップの開発。従来のスーパーコンピューターをはるかに上回る性能を持つ、スーパーコンピューターを作るには、50量子ビットというサイズが必要となる。新しいスーパーコンピューターの処理能力は、計り知れない。
摂氏マイナス273°
現在の課題は、シンプルに、より大きな量子コンピューターを作り出すこと。
QuTechの研究者リオ・ディカルロ氏。
QuTech
インテルの説明によると、量子ビットは非常に壊れやすい。わずかなノイズや想定外の干渉で、データが失われてしまう。チップに使われる超伝導素材は、想像を絶する極低温に保たなければならない。「20ミリケルビン、つなり摂氏マイナス273度という極めて低い温度」で運用しなければならないと同社は述べた。
こうした条件を作り出し、維持することは難しい。
問題は温度だけではない。量子ビットが増え、量子コンピューターが大型化するにつれて、誤作動も増加する。
だが、開発ペースは加速している。2016年5月、IBMは5量子ビットの量子コンピューターと量子コンピューターを使った世界初のクラウドサービスの提供を発表した。そしてわずか1年後には、量子チップのサイズは3倍以上になった。
グーグルで量子コンピューターの開発を率いるジョン・マルティニス(John Martinis)氏は、年末までに大型で強力な量子コンピューターのプロトタイプを完成させ、従来のスーパーコンピューターでは不可能な計算能力を実現するとMotherboardに語った。いわゆる「量子超越性(quantum supremacy)」の実現だ。
そしてインテルが突然、この開発レースに割り込んだ。詳しく見てみよう。
インテルが試作した17量子ビットの超伝導テストチップは、25セント硬貨程度の大きさ。金を使ったコネクターによって、外部と接続する。
Intel
チップの反対側。インテルの次なる目標の1つは、チップの大量生産。だが大量生産には1個のテストチップを製造するよりも、大きく、困難な問題がある。
Intel
生産体制を整えるには、解決すべき不確定要素が山積み。QuTechの研究者たちは、問題解決に取り組んでいる。
QuTech
競合であるIBMの量子コンピューターは、この白いタンクの中で作動している。特別な冷却装置で内部の温度を絶対零度近くに維持している。
IBM/Jerry Chow
QuTechの科学者リオ・ディカルロ(Leo DiCarlo)氏とインテルの科学者デイブ・ミカラック(Dave Michalak)氏が、新しいチップの完成を祝い、開封する瞬間を動画に収めた。動画では、チップ製造に関する、より技術的な詳細を語っている。
source:Intel、QuTech、IBM/Jerry Chow
(翻訳:忍足 亜輝)