アメリカの不動産王はトランプ大統領じゃない! 総資産2兆円の「もう1人のドナルド」とは

2人のドナルド

ドナルド・ブレン氏はカリフォルニア州オレンジ郡の5分の1、マンハッタンの5倍近くの土地を所有している。

Pool/Getty Images; AP/Reed Saxon; Tanza Loudenback/Business Insider

アメリカの不動産王と言えば、ドナルドだ。

と言っても、ドナルド・トランプ大統領ではない。カリフォルニア州出身のドナルド・ブレン(Donald Bren)氏だ。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、その総資産は約170億ドル(約1兆9000億円)で、トランプ大統領が所有する財産の6倍近い

ブルームバーグによると、遺産相続により富を築いたトランプ氏とは違い、ブレン氏は銀行から借りた1万ドルを元手に、数十億ドル規模の帝国を自らの手で築き上げた。

ブレン氏が所有する不動産投資会社アーバイン・カンパニー(Irvine Company)は、カリフォルニア州最大の地主だ。

同社の資産ポートフォリオには、1億1000万平方フィート(約1022万平方メートル)を超える土地の他、オフィスビルやマンション、マリーナ、ホテルが含まれ、そのほとんどが絵画のように美しいオレンジ郡にある。ブレン氏はまた、トランプ氏の地元ニューヨーク市にも進出しており、ニューヨークのメットライフ・ビルディングの大部分を所有している。

ブルームバーグによると、ブレン氏の所有資産の合計面積は、オレンジ郡の5分の1にあたるといい、マンハッタンの5倍の大きさに相当する。

85歳になる元アメリカ海兵隊員のブレン氏は、今もなおアーバイン・カンパニーの会長として腕を振るっている。

そんな彼のサクセスストーリーを紹介しよう:




ドナルド・ブレン氏は1932年、ロサンゼルス生まれ。映画プロデューサーの父と舞台芸術のパトロンの母が離婚したのは、彼が10歳の頃だった。後に父は女優と、母は裕福な実業家とそれぞれ再婚した。

女優クレア・トレヴァーと父ミルトン・ブレン氏。

ブレン氏の義理の母クレア・トレヴァー(Claire Trevor)氏と父ミルトン・ブレン(Milton Bren)氏。1949年のアカデミー賞授賞式にて。

AP

Sources: Wealth-X, Fortune

ビバリーヒルズ高校に通い、夏休みには父の不動産開発ビジネスを大工として手伝った。彼が父親から学んだ最も重要な教訓は、「資産を長期に渡って保有することで、より高い価値を生み出し、それを目に見える形にすることができる」ことだとブレン氏は2011年、ロサンゼルス・タイムズに語った。

ビバリーヒルズの看板

Flickr/Tony Hisgett

Sources: Fortune, Los Angeles Times

ブレン氏は、学費の一部が免除となるスキー特待生として、ワシントン大学に進学。彼はスタイリッシュなスキーヤーであり、勝負師だった。1956年のオリンピックへ出場する予定だったが、足首を骨折し、出場できなかった。

ワシントン大学のキャンパス

ワシントン大学のキャンパス。

Wikimedia Commons

Source: Fortune

1955年に同大学で経営管理学と経済学の学位を取得。卒業後は海兵隊員として3年間、キャンプ・ペンドルトンで偵察チームを率いた。

銃を持って海岸を走る米兵

海岸で訓練をする米兵(写真はドナルド・ブレン氏ではありません)。

Flickr/Expert Infantry

Source: Fortune

1958年、25歳になったブレン氏は、銀行から1万ドルを借りて、ブレン・カンパニーを設立、カリフォルニア州ニューポートビーチのリードー島(Lido Isle)に最初の住宅を建設した。オレンジ郡の1960年代後半の不動産ブームに乗って、住宅の建設、転売を繰り返した。

リードー島の航空写真

リードー島は、カリフォルニア州ニューポートビーチの港にある人工の島だ。

Google Maps screenshot

Sources: Wealth-X, Fortune

1963年から1967年にかけて、1万1000エーカー(約4500万平方メートル)を開発、コミュニティーの基本計画を手掛けたオレンジ郡の不動産開発会社ミッション・ビエホ・カンパニーの社長として、多忙な日々を送った。

ミッション・ビエホとその周辺の開発地域の航空写真

ミッション・ビエホとその周辺の開発地域。

Wikimedia Commons

Sources: Fortune, Irvine Company

1970年、インターナショナル・ペーパー社(International Paper Co.)により、ブレン・カンパニーは3400万ドルで買収された。しかし、そのわずか2年後、景気後退と不動産市場の不況の後、ブレン氏は会社2200万ドルで買い戻した。

ドナルド・ブレン氏の写真

AP Photo/Reed Saxon

Source:Fortune, Wealth-X

20年近くオレンジ郡に暮らし、働いた後、ブレン氏は郡内最大の土地開発プロジェクト「アーバイン牧場」に目を付けた。太平洋の海岸線9マイル(約14キロメートル)を含む9万3000エーカー(約380平方キロメートル)のその広大な牧場は、オレンジ郡の総面積の20%にあたる。1864年にジェームス・アーバイン氏、他2人によって開かれたこの人里離れた干ばつ地域は、かつてサンタアナ山脈から太平洋沿岸に広がるメキシコとスペインの領土の一部だった。

オレンジ郡の白黒写真

Courtesy of Orange County Archives

Source: Fortune, Irvine Company

1977年、ブレン氏はジェームス・アーバイン氏のひ孫を含む5人の株主とともに、アーバイン牧場を所有するアーバイン・カンパニーを3億3740万ドルで購入。ブレン氏は当初、会社の3分の1を所有していたが、1983年に数人の株主から株を買い、86%を所有するに至った。1996年には、その残りを少なくとも8000万ドルで買い取り、単独の所有者となった。

契約書を前に手をつなぐ株主たち

AP Photo/Nick Ut

Sources: Fortune, Wealth-X, Los Angeles Times

過去20年間に渡り、ブレン氏はアナハイムやラグナ・ビーチ、ニューポート・ビーチの一部やアーバイン市全体を含む、アメリカで最も豊かで理想的とされる複数のコミュニティーの基本計画を手掛け、この牧場の開発を進めてきた。

カリフォルニア大学アーバイン校

カリフォルニア大学アーバイン校。

Wikimedia Commons

Source: Good Planning

人口25万人のアーバインは、オレンジ郡の中心地とも言われ、牧場の特徴である「暮らし、働き、そして遊ぶ(live, work, and play)」という開発ビジョンの象徴だ。アーバインには住宅街、ショッピングセンター、公園、そして数々の名門校があり、フォーチュン500企業の3分の1以上がその本社を置いている。

ブロードコムの本社

世界的な半導体メーカーのブロードコム(Broadcom)も、カリフォルニア州アーバインに本社を置く。

Wikimedia Commons

Source: The City of Irvine, Good Planning

「長年に渡って、ブレン氏はカリフォルニアにおける近代的な郊外都市を構築してきた。その過程で、アメリカ国内最大かつ最もその手法が模倣された都市開発者の1人となった」と、ロサンゼルス・タイムズは2011年に書いている。

カリフォルニアの風景

Getty/David McNew

Source: Los Angeles Times

アーバイン・カンパニーはまた、当初の所有面積の半分以上、5万7000エーカー(約230平方キロメートル)の牧場の土地を恒久的な保護の目的で寄付しており、その大部分は2006年以降、国定自然ランドマークに指定されている。

アーバイン・カンパニーの牧場

Flickr/Rachel Titiriga

Source: Irvine Company

ブレン氏の資産総170億ドルの大部分は、アーバイン・カンパニーが所有しているものだ。同社の広報担当者によると、「(床面積)4650万平方フィート(約432万平方メートル)のオフィスビル、160のマンション、40以上のショッピングセンター、5つのマリーナ、3つのゴルフコース、3つのホテルリゾートを所有している」という。

アーバイン・スペクトラム・センター

オレンジ郡にあるアーバイン・スペクトラム・センター。高級小売店や飲食店、娯楽施設が集まる。

Wikimedia Commons

Source: Bloomberg

基本的には郡内の事業に注力しているが、同社はロサンゼルス西部やサンディエゴ、シリコンバレーにも不動産を所有している。カリフォルニア州以外では、ニューヨーク市にある58階建てのメットライフ・ビルディングの97.3%、約30億ドル相当を所有。また、2014年にはシカゴにある60階建ての超高層ビルを8億5000万ドルで購入している。

ニューヨークのメットライフ・ビルディング

Daniel Goodman / Business Insider

Source: Bloomberg

ブレン氏の私生活は、不動産業界における自身のキャリアよりも波乱万丈だ。3度の結婚で5人の子供をもうけている。2010年には、以前の交際相手とその18歳と22歳になる2人の子供から養育費の未払いがあるとして、1億3000万ドルを要求する訴訟を起こされた。裁判は、これまでに900万ドル以上を支払ってきたブレン氏が勝訴した。

ジェニファー・ゴールド氏と彼女の息子デビッド・リロイ・ブレン氏

ジェニファー・ゴールド氏(右)とその息子デビッド・リロイ・ブレン氏(左)。

AP/Reed Saxon

Sources: ABC News, Los Angeles Times

興味深いことに、誰よりも多くの不動産開発を手掛け来たブレン氏の自宅については、ほとんど知られていない。ブレン氏と彼の3番目の妻ブリジットは、彼らの息子と共にニューポート・ビーチのハーバー・アイランドに住んでいると言われる。数百万ドル以上の豪邸ばかりが立ち並ぶ、ウォーターフロント・コミュニティーだ。

ウォーターフロント・コミュニティー

Wikimedia Commons

Source: The Orange County Register

ブレン氏の人格については、彼が行ってきた慈善活動を中心に語られることが多い。同氏はこれまでに13億ドルを超える寄付を行っている。2010年には、オレンジ郡の全国慈善デーを支援するグループによって設立された「ドナルド・ブレン・レガシー・オブ・ギビング・アワード」の最初の受賞者となった。 「私にとって、慈善事業は常に新しいコミュニティー・パートナーシップを生み出すことです。このパートナーシップが、この先もずっと価値を生み出し続けてくれるでしょう」とブレン氏は語った。

マイクを前にスピーチをするブレン氏

Facebook/Robert Rooks

Sources: Wealth-X, The Orange County Register

ブレン氏はK-12(幼稚園から高校までの13年間)の教育機関やカリフォルニア大学、研究、芸術、その保護に対して、定期的に寄付を行っている。「私たちができる最大の投資は、子供の教育にあると私は信じています」と、ブレン氏は語る。同氏のウェブサイトによると、ドナルド・ブレン基金は、教育目的で2億ドルの寄付を行っている。

カリフォルニア大学アーバイン校にあるドナルド・ブレン・ホール

カリフォルニア大学アーバイン校にあるドナルド・ブレン・スクール・オブ・インフォーメーション・アンド・コンピューター・サイエンス(Donald Bren School of Information and Computer Sciences)は、ブレン氏からの2000万ドル(約22億円)の寄付により2004年に設立された。

Wikimedia Commons

Source: UCI

しかし、ブレン氏の不朽の遺産は、同氏の不動産帝国であり、アメリカで誰もが憧れるいくつものコミュニティーを形作ってきたことに他ならない。「カリフォルニア南部に多大なる影響を与えた彼の偉大なビジョンは、ウォルト・ディズニーに匹敵する」と、アーバイン・カンパニー取締役会の元メンバー、リック・カルーソ(Rick Caruso)氏は2010年に述べている。

カリフォルニアの風景

Wikimedia Commons

Source: Los Angeles Times

[原文:Donald Trump is not America's richest real estate tycoon — it's another Donald who's worth almost $17 billion]

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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