米ユニコーン企業DomoのCEOが語る、起業に最適な東京の魅力と大きな課題

ジャシュ・ジェイムズ(Josh James)はアメリカ・ユタ州で、23歳の頃にオンラインマーケティング・ソフトウェアのOmnitureを創業すると、10年後の2006年にはナスダック(NASDAQ)に上場を果たした。当時、上場企業の最年少経営者として注目を集めた。

2010年、ジャシュはビジネス上のあらゆるデータを分析するプラットフォームを開発する企業、Domoを起業。ユタ州のシリアル・アントレプレナーとして金融界やテクノロジー業界、シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、メディアから注目を浴びた。

ジャシュ・ジェイムズ

「机に座り、考え続け、仮説ばかりを考え、ホワイトボードに描き続けるだけだったら、学びはないですね。そこにあるのはただのアイデアに過ぎない」と語るDomo創業者のジャシュ・ジェイムズ。

撮影:野中利紗

企業価値23億ドル(約2580億円)と言われるまでに成長したDomoは、日本での販売を急ピッチで拡大し、日本航空や全日本空輸、ヤフー、リクルートなどが同社が開発したクラウド型ビジネスデータ・プラットフォームを導入している。一つのプラットフォームで企業のCEO(最高経営責任者)から現場の担当者までの全ての社員がデータにアクセスでき、多様な分析結果を可視化できる。

日本語の「どうも」に由来するDomoと命名する以前は「Shacho Inc」と名付けるほど、ジャシュは「日本好き」でも知られる。そして、ウォール街では、Domoの上場は遠くないだろうとする声が聞かれる。

2017年10月、来日したジャシュに起業の極意と、日本で起業を考えるミレニアル世代に伝えるべきアドバイスを聞いた。


ことを始めるからスタートアップ

Business Insider Japan(以下、BI Japan):起業する時にいちばん大切なことは何でしょうか?

ジャシュ・ジェイムズ(以下、ジャシュ):数えきれないほどのアントレプレナー(起業家)たちと会い、話をしてきました。成功を収めるスタートアップを作る上でいちばん大切なことは、スタートです。まずは始めることが何よりも大事です。

人は始めることにおびえるものです。だから、まずは完璧な事業プランを考えようとしますね。そして、それを他の人に話してみると、当然そのプランの問題点が見つかるわけです。結局、人はスタートすることに躊躇して、始めないことを選ぶ。

まず、始めたらいい。そしてたくさんの間違いをするのです。そこから学びが始まる。できるだけ早く、多くの間違いをするといい。机に座り、考え続け、仮説ばかりを考え、ホワイトボードに描き続けるだけだったら、学びはないですね。そこにあるのはただのアイデアに過ぎない。

Omniture創業時の大失敗

BI Japan:起業家・経営者として、今まで経験した失敗を教えてください。

ジャシュ:数えきれないほどのミステイクをしてきました。Omnitureを始めた頃はお金がなくて、500ドルあれば会社に入れ、1000ドルのキャッシュができたら、またそれを会社に注ぎました。そんな時に、5000ドルのミスをするんですね。最初の大きなミスは今でも覚えています。

私たちはウェブサイトを作るサービスをしていました。あるクライアントのウェブサイトを4000ドルで作ったのですが、そのクライアントはお金を一切支払ってくれなかったのです。結局、訴えを起こすまでに事は悪化しました。そんな間違いから、私たちは前払いをしてもらう契約書の作り方を学びました(笑)。

ウェブサイト作りからオンライン分析、メッセージボード……10種類くらいの事業を経て500万ドル規模のオンライン広告ビジネスに発展しました。Omnitureができたのはその後です。Omnitureの根本的なビジネスアイデアは、5年の紆余曲折を経て作られたわけです

世界にこれほど魅力的な都市はない

ジャシュ・ジェイムズ

「東京は世界で最大のビジネス機会を持つ都市だと考えている」とジャシュは言う。

撮影:野中利紗

BI Japan:人口減少、高齢化、低成長の日本ですが、起業家にとって日本はどんな国ですか?

ジャシュ:日本は起業家にとって大きなチャンスがあります。始めるなら、今が良いタイミングだと思いますね。人口減少を心配する必要は全くないだろうし、それは見当違いだと思っています。東京は世界で最大のビジネス機会を持つ都市だと考えています。

東京から電車で1時間圏内には4000万人の消費者がいます。こんな巨大な市場が東京です。日本の総人口が1億人に減少したとしても、この東京を囲むエリアには、4000万人が居住し続けるでしょう。仮にこの4000万人が3500万人に減ったとしても、世界を見渡せば、依然として巨大な経済体であることに変わりはないと思います。

ソルトレーク・シティ

「OmnitureやDomoなどが拠点を置くユタ州では、テクノロジーベンチャーが相次いで生まれ、新たなスタートアップ聖地として注目を集めた。(写真:ソルトレークシティ)

REUTERS/George Frey

大きな会社を突然に作ることはできないですよね。アイデアをビジネスに変えて、始めることが何よりも大切だと思います。私が人口300万のユタ州で始められたのだから、多くのビジネスはこれからこの東京で生まれるでしょう。

アマゾン、楽天、IBM、トヨタ……すべての大企業の始まりは小さな会社です。私が日本に生まれ育ち、企業を経営していたとします。たぶん売り上げが500万ドルくらいなったら当然、アメリカや中国、タイ、フィリピンなどへの進出を考えると思います。

しかし、東京から電車で1時間圏内の市場は、ビジスネをある程度スケーリングするのに十分大きな市場なのです。

失敗を賞賛するスタートアップ文化が足らない国

BI Japan:バブル経済が弾けて1990年代初めから始まった「失われた20年」の中で、日本の大企業は世界の時価総額ランキングのトップ集団から消えました。一方、アメリカの多くのベンチャー企業は急拡大して、今ではトップ10の上位に君臨しています。日本のこれからの課題とは?

ジャシュ:まず、それは日本が認めるべき現実ですね。時価総額を競うのであれば、グローバル企業を作り上げないといけないですね。ソフトバンクがその良い例です。孫さんは、海外で大きな企業から小さな企業までを買収して、ソフトバンクをグローバル企業に変えている。

東京

「大学を中退してでも素晴らしい企業を始める夢を抱ける文化は大切だ」(ジャシュ・ジェイムズ)

REUTERS/Toru Hanai

日本は日本の良さを守りながら、リスクを取る強い意思を持たなければいけないと思います。それは、今の日本が非常に苦手としていることです。そのためには、失敗を賞賛する環境・文化が必要ですね

例えば、新たに生まれた企業をもっと祝福するべきだし、もし事業が失敗したら、「もう一度チャレンジしてみたらいい」と言ってあげられる文化を作ることが大切ですね。この文化がなければ、良いスタートアップは育たない。

日本の大企業に就職するために良い大学に入学する夢も良いけれど、大学を中退してでも素晴らしい企業を始める夢を抱ける文化は大切だと思います。日本は大きな市場を持っているのだから、アイデアをビジネスに変えて、会社をスタートさせる文化が必要なのです。

BI Japan:いつになったらDomoの株が買えるようになるのですか?

ジャシュ:それはDomoが上場した時ですよ(笑)。

早いタイミングでの上場を計画しています。(Domoは)十分な事業規模があり、速いペースで成長してきています。あとはタイミングだけです。

(敬称略)

(文:佐藤茂、インタビュー:佐藤茂、野中利紗)

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